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エッセイ

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2022年10月の記事一覧

旅から眺めるエコ①:リサイクルデニム

前回の記事で、好きな店で期待していたほどのクオリティーではなかったが、急いでいたのでやむなくジーンズを買った、と書いたが、やはり以前購入したモデルが好きすぎて落胆していた。履いては脱いで、首をかしげ、しげしげと観察する。そこのジーンズはディテールの装飾が凝っていてかわいいので気に入っていたが、今回のものは経費削減か、省略されている。そして、何より生地が厚ぼったくなって、いまいちすきっとしない。カットは悪くないが、旅先で判断を誤ったかな、と思いつつ、裏返してタグを見つめる。する

ナタリーとの再会

マルセイユに着いたので、エクスにいるナタリーに連絡をいれた。 南仏のエクス・アン・プロヴァンス(通称エクス)に留学していた頃の、かつてのクラスメートはもう散り散りになってしまって、エクスで会えるのは、語学学校の担任だったナタリーだけになってしまった。 大柄でマットな肌、黒髪のショートカットのナタリーが、ゴルチェのGパンを履いて大股で教室に入ってくる姿が今でも目に浮かんでくる。彼女の講義での言葉はいつも、フランス語の教職や文学への愛が溢れてキラキラしていた。そんなナタリーと卒

旅のはじまり

いくつもの昼と夜との境を横断していく。 刻々と変わりゆく世界の中を、船は進んでいく。 今回の旅はそんな風に感じながらはじまった。 機内食のフォーク類からプラスチックが一掃されていた。メインの皿など、機能的に必要なものには残されていたが、フォーク類は木製、それらをセットしている袋は紙製になっていた。朝食はマチのある紙袋の中に、紙のランチボックスに入ったホットサンドやフルーツ(こちらはプラ容器)などがセットされており、何だかピクニックのようでかわいらしい。経費節減か、食事の味は

ミラノの市

 土曜の朝、ミラノ市中にたった市で、野菜を買うために並んでいた。  2020年の暮れに京都からパリへ戻り、今年の初めに家族でミラノへ越したばかりの友人のティナは、週に二回立つ市の中に既にお気に入りのスタンドを見つけていた。新鮮ないい野菜が揃うその売り場は、当然ティナ意外もひいきにしている人たちがいるわけで、常時二十人ほどの人が列をなして順番を待っている。  混んでいてもなんのその、店員たちは自分たちのペースで働く。手慣れているし、手際が悪いわけではない。馴染みの顔が現れれば