「合気道は最弱だ!」に対する名誉挽回の条件
巷(国内外)では、合気道は実戦的でないとか、役に立たないとか、実用性が低いとか、護身術として使えないなどとよく言われます。なぜでしょう。具体的には合気道六段の男性が、柔道初段の高校生にボコボコにされたとか、その他実際に上記の噂を証明するようなことを見たり、聞いたりしました。特に、海外では合気道は武道武術としての評価は低いです。中には合気道は武道ではないという意見もあります。「合気道は最弱だ!」というのが最悪です。
参考サイト:
ただ、私の体験では、そうではないと考えます。私は、太極拳家や銃剣道家などと手合わせして倒しました。合気道の巷の評判は芳しくなくとも条件次第では、そのような否定的な評判は覆せると考えます。
では、名誉を挽回する条件とはなんでしょうか。
考えられることは以下のような事です。
1. 良い師に恵まれる。
2. 良い雰囲気の道場に恵まれる。
3. 手合わせができる仲間に恵まれる。
4. 豊富な練習量。
5. 良い練習体系(剣術と体術の整合性=剣の理による体術に則った指導、呼吸力養成、当身 、体捌き〈運足、入身、転換〉、体術、対武器術、剣術、杖術、武器対武器術)
6. 強固な土台(足腰)を作る。
7. 毎日、つまり週七日練習する。
8. 一人稽古を徹底してやる。
9. 坐禅を毎日行う。
10. 拮抗性のある稽古を行う。例えば、乱取りなど。
11. 合気道以外の自由組手、乱取り、スパーリングなどがある武道武術を行う。
12. 肩の力を抜く、つまり上虚下実の身体を作る。
13. 必要な技だけ覚える。
14. 合気道を習得するのに必要な事は何かを明確にする。
15. 見取り稽古をする。
解説:
1. 良い師に恵まれる:私の初めての合気道体験は、高校生の時に合気道の通信講座(現代合気の会主催)を1年受講し、その間毎月1回東京の神田神保町のYMCA体育館にてスクーリングを受けました。その時の師は、三宅綱子先生でした。三宅先生は富木合気道の五段、講道館柔道五段で、その当時女性としては稀有な存在で、教え方もとても上手でした。その後、22歳の時に本格的に合気道を練習したわけですが、その時の師は、合気会七段の鈴木良助師範でした。鈴木師範は、植芝盛平翁の内弟子として昭和6年(1931年)に入門しました。同期には、道場破りを一撃で倒して有名になった白田林二郎師範がいますし、一年後輩には養神館合気道の塩田剛三師範がいます。鈴木師範は戦前は師範代として主に軍人に実戦的な合気道(当時は合気柔術と呼称)を指導していました。戦中は特務機関員として満州で軍務についていました。また、鈴木師範は戦後は諸般の事情により合気道に関して目立つことはしていなかったようです。その後、植芝吉祥丸・合気道二代目道主より鈴木師範に支部道場開設の要請があり、1972年(昭和五十二年)十二月に館山支部道場を開設しました。そして、開設早々の道場に一番弟子として入門したのが私でした。このように私は戦前の実戦的な合気道(合気柔術)を植芝盛平翁の内弟子より直に習うことができました。良い師に恵まれたわけです。
2. 良い雰囲気の道場に恵まれる:とにかく私が入門した合気会館山支部道場は雰囲気が良かったです。鈴木先生は練習後は必ずお盆にお茶とおつまみをのせて現れ、弟子たちとお茶を飲みながら先生の戦前戦中の頃の実戦的な合気道にまつわる話をしてくれました。これがとても参考になり、自分の稽古に取り入れました。例えば、「合気道は9分が当身」とか「一撃で相手を倒す」とか。
3. 手合わせができる仲間に恵まれる:私の周りには、武道武術家が多くおりました。その連中と話をしている中で、「じゃ、手合わせをしてみるか」ということになり、太極拳家や銃剣道家などと手合わせをしました。これはとても良い経験になりました。真剣さと緊張感を味わうことができ、それがまた稽古に反映することもできました。その辺りのことについては【私と合気道、そして戦わずして和す】 に記していますのでお読みください。
4. 豊富な練習量:これはとにかく、時間をやりくりして、練習時間を作るようにしました。当時私は自衛官でしたので、規律が厳しい中においてもなんとか隙間時間に一人稽古を基地内で行っていました(体を鍛えることも自衛官にとっては仕事です)。一人でも、かつ狭い場所でもできる「入身」「転換」「当身」に絞って練習しました。いずれも合気道においては基本中の基本ですから、やりすぎるということはありませんので、何千回・何万回・何十万回と練習しました。その他に、自衛官の頃は外出が一日置きなので、外出時は町道場で通常の稽古をし、当直日は基地内の柔道場や剣道場で一人稽古をしていました。また、仕事が休みの日は少なくとも6時間の一人稽古をしていました。平均して年間一日4~5時間は稽古していたと思います。
5. 良い練習体系:練習体系が目に見える化されていなければ、自分で練習体系を図式するとか工夫して、今自分は体系の中のどれを行っているのかよく認識ことが必要です。館山支部道場では鈴木先生が、剣術と体術の整合性=剣の理による体術に則った指導、呼吸力養成、当身、体捌き〈運足、入身、転換〉、体術、対武器術、剣術、杖術、武器対武器術などの各項目については懇切丁寧に教えてくれましたので、あとはそれを量質転化して行くことが自分の責任でした。参考サイト:
6. 強固な土台(足腰)を作る:これは、鈴木先生から耳にタコができるくらいに何度も何度も言われました。では、どのようにすれば強固な土台(足腰)を作ることができるかというと、居合刀と素振り棒よる素振り、呼吸力養成法、膝行などの徹底練習。
参考サイト:【技そのものの学び方】
7. 毎日、つまり週七日練習する:毎日稽古することが武道武術にとっては非常に大事です。武道武術には、昔から「一日休めば、三日戻る」という言葉がありますように、いわゆる「継続は力なり」ですので、とにかく一日10分でもいいですから稽古することが大事です。継続は力なりです。
8. 一人稽古を徹底してやる:これは、一人で意識を集中して練習を行うことにより、金科玉条の「技」や「技の使い方」を手に入れるためです。昔の侍は、一貫目(4kg)の素振り棒を千回振ることができるようになったら、次は2貫目(8kg)を千回、そして次は3貫目(12kg)を千回と次々に素振り棒の重さを増やしていくというような稽古をしていたそうです。そうすると、呼吸力や合気や技を作る、それと技の使い方が身につく素地ができるわけです。その時の留意事項としては、自分のやっている動作に意識を集中することです。一つのことに意識を集中して行うということは、「禅」に通じますので、心も鍛えられることになります。
次のサイトに私がやった一人稽古が載ってますので、参考にしてください。但し、その一人稽古は3時間用なので、ご自分でやる時間はその何分の1かにしてみてください。3時間やれる人は同じようにやってみてください。
それと、一人稽古する場合に是非お勧めの稽古は、木剣による素振りと入身&転換です。とにかく沢山やってください。参考サイトは次の通りです。
9. 坐禅を毎日行う:かの有名な柔道家の木村政彦は、日本一になるためには坐禅が必要であると言われ、毎日1時間の坐禅を行ったそうです。結果日本一になりましたが坐禅も大きな要因です。剣の達人の山岡鉄舟も坐禅をやってました。多くの古の武術家、宮本武蔵などの名人・達人と言われる方達はほぼ全員と言って良いほど坐禅をやっていたそうです。なぜ、武道武術に坐禅が必要なのか。それは、命のやり取りをするという時に平常心を保つためです。これは、理想的には朝晩1時間づつが良いと言われていますが、一日一回40分でも良いですし、30分、20分、15分、どうしても時間がないときは1分でも良いという坐禅の専門家もいます。とにかく、坐禅は習慣づけることが大事です。その効果は、短期的には小さくとも、長期的には多大です。
10. 拮抗力を使う稽古を行う、例えば、乱取りなど:ご存知のように、合気道は一部の流派を除いて、乱取りや試合がなく、形稽古だけを繰り返し行う武道です。そのため受けは取りがどんな技をかけてくるのかを事前に知っています。そうすると受けは簡単に逆らうことができます。それでは稽古になりませんから、受けが自ら投げられ、抑えられるということを行います。そういう稽古だけをしているとどうなるでしょうか。そのような状況が当たり前となってしまい、黒帯になれば誰にも負けないという誤った自信を持った合気道家が出来上がります。試合や格闘の経験がなく、受けが勝手に投げられてくれる合気道の形稽古だけをしている合気道家は、本気で拮抗した稽古をしていないので、黒帯になったからどんな相手でも大丈夫と考えるようになります。しかし、実戦において、走って手首を掴みにくるような相手がいるでしょうか。でも、今の合気道ではそのような稽古しているのですよ。これでは護身術の練習にもならないと思いませんか。最弱と言われる所以です。合気とは、本来動く意志のない者を、また抵抗する者を、こちらの意のままに崩し、操作する技術の事ではなかったのではないでしょうか。だから、お互いに拮抗力を使うような稽古、例えば乱取りや自由組手などの稽古が必要なのです。参考動画:https://www.youtube.com/watch?v=5t1wrXha2TA&t=400s
11. 合気道以外の自由組手、乱取り、スパーリングなどがある武道武術を行う:戦前の合気道では、柔道や剣道など三段以上の者だけが植芝盛平先生の道場に入門できたとの事です。つまり、戦前の合気道が強かったのは、元々強い人たちが合気道をやってからだです。だから合気道だけでなく、他の武道武術もされることも必要です。実戦(護身術)の時は、相手は合気道家以外の場合が多いでしょう。なので、他の武道武術も経験しておくと咄嗟の時に応用が効きます。昔の侍は、武芸十八般と言われるように多くの武術を嗜んでしました。当時は必要だったからでしょうが、現在でも一つの武道にこだわるよりもいくつかの武道武術をすることの意義は大きいでしょう。
12. 肩の力を抜く、つまり上虚下実の身体を作る:これは、鈴木先生からよく注意されたことです。自分では力を入れてなくても、自然と肩に力が入っているのですね。力を抜くことが反対に合気の道に従うことになります。鈴木先生曰く、「どう動いてもいいんですよ、合気の道に則っていれば!」そのためには、肩の力を抜くこと、上虚下実の身体を作ることがとても大切なのです。
13. 必要な技だけ覚える:柔道、剣道、空手などの試合では各選手の得意技は精々数本です。合気道は技が多過ぎます。そう思いませんか。技が多過ぎると実戦の役に立ちません。
参考動画:https://www.youtube.com/watch?v=_N9JQKORHe8
例えば、私の場合、入身当てで入り、一撃で倒れたらそこでお終いです。一撃で倒れない場合は即座に顔面に肘当てを入れ、接近戦に持ち込み、柔道の投げ技で倒し、絞技でとどめを刺します。実戦では技は多くて10個以内で十分です。それ以上は多過ぎます。要は「技は少なく、戦法は豊富に」です。
参考webサイト:https://note.com/mondpaco/n/n2e39b57ebe54
14. 合気道を習得するのに必要な事は何かを明確にする:
それは、その目的と、基礎訓練です。
合気道の目的というと、大きく分けて2つになります。一つは「戦前の合気道」の目的であり、もう一つは「戦後の合気道」の目的です。
まず、「戦前の合気道」の目的は何かというと、「霊(または心)と身体を一致させること」です。そして、その基礎訓練とは「形の反復稽古により、形を身体に浸み込ませるという修行ではなく、形を行う際の自身の心の拡がりと、相手とのつながり、そのような心を養い、心気を練ること」です。
それに対して、「戦後の合気道」の目的は、「勝敗および優劣をつけず、お互いを高めあうこと」です。そしてその基礎訓練とは、「試合を行わず、形稽古の反復によって技を身に付けること」です。
私は、「戦前の合気道」の目的と基礎訓練をお勧めします。
15. 見取り稽古をする:この稽古の大切さをわかっている人は、必ず実行するように言われます。私も合気道の真の実力を身につけるならば、必須だと思います。特に高い合気道的センスを身につけるためには必ずすべきであると考えます。詳しくは、次のサイトをご覧ください。
見取り稽古は、ただ演武者の動きを観るだけでなく、その演武者の気と気の流れを観ることが大事です。
身体の動きを気の流れとして観る練習には、太極拳の套路(型)を観ることをお勧めします。
この動画を観ると演武者の動きが流れるように見えるのがお分かりいただけると思います。これが気の流れとして観じられるようになったらしめたものものです。
合気道においても気で観られるようになったら相手の心もわかるようになるので、それに合わせて事前に対処できるようになります。
気で観じられるようになれば、事前に危険を察知できるようになり、また対処できるようになります。そうなれば、敢えて相手と争うこともせずに適当に受け流せばいいわけです。
ここにおいては、「合気道は最弱だ!」というのは、もうどうでもいいわけです。言いたいヤツには言わせておけばいいのです。相手にしないこと。
以上、ご参考になれば幸いです。
「人生とは成長です。技術的にも精神的にも成長を止めてしまったら私たち
は死んだも同然です。」
植芝盛平
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