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なぜベテランは若手を育てられないのか

人手不足が叫ばれ、若手社員の採用が難しくなっているうえに、雇用延長・定年延長の流れもあり、ますます高齢化が進んでいます。中小企業の場合は、中堅・若手社員が少数で、ベテラン・高齢社員が多数という構造も珍しくありません。
企業が高齢社員に対して、「今後は経験を活かして、人材育成を中心に頑張ってください」と期待を伝えると、「ウチの職場は半分が50代だ」、「若手は俺たちの話など聞きやしない」という反応が返ってくることも、よくあることです。
各種アンケート調査結果を調べると、技能伝承の必要性を多くの企業で感じているものの、上手くいかないことが多く、その理由として、「熟練社員の指導力不足または指導意欲不足」が50%程度、「若手社員の能力・意欲不足」が30%程度となっています。
このアンケート結果は、高齢社員である熟練社員と若手社員とのコミュニケーション不足を表しています。ちょっとしたボタンの掛け違いで、「世代間断絶」が起こっているとしたら大変なことです。そこで、コミュニケーションギャップの現状を確認してみます。

若手社員から見る「指導下手」な高齢社員

若手社員の声を聞くと、「指導上手」な高齢社員と「指導下手」な高齢社員がいることが分かります。そう感じる一番の原因は「コミュニケーションスタイル」にあるようです。高齢社員が若手の頃は、「技は見て、盗んで覚えるもの」という職人タイプの先輩に指導された方も少なくありません。それを今の若手社員に当てはめても上手くいきません。下手をすると「パワハラ」、「モラハラ」と捉えられる可能性もありますし、高齢社員もハラスメントを気にして、「叱ってもいいのか?」と上司に質問してくるような状況で、大きなギャップがあります。
若手社員の声として「指導下手」な高齢社員の特徴は、次の3つに集約されます。
・話が長い(自慢話が多い)
・上から目線
・聞きたい話をしてくれない
一つずつ具体的に見ていきます。

(1)話が長い(自慢話が多い)
これは、高齢社員に限らず、指導下手な人の共通点です。話が長くなる理由として、知っていることをダラダラ話し続けることがあります。
(2)上から目線
なぜ「上から目線」なるかと言えば、若手社員を敬う気持ちがないからです。高齢社員が経験豊富なことは事実ですが、若手社員も高齢社員の知らないことを知っています。お互い様だと思えば、そんな気持ちにはならないでしょう。
(3)聞きたい話をしてくれない
これは、若手社員が知りたいことに対する的確な答えを返せていないということです。指導する立場になると、自分の知識を色々伝えたいという思いがあり、あれもこれもと話を盛り込みがちになります。しかし、聞き手は興味のないことをされても、聞く気は失せてしまいます。

ベテランから若手へ

高齢社員による指導のポイント

では、若手社員に響く指導の仕方、端的に言えば若手社員が腹落ちするような「教え方・伝え方」とはどのようなものでしょうか。
(1)若手社員が聞きたい話を把握する(自分が話したい話をするのではない)
若手社員にとって何が重要で、何を聞きたいと思っているのかを把握してから話をする必要があります。人は誰しも、興味がないことを教えられてもなかなか覚えられません。「今、何に興味がある?」などと質問をして、現状を把握すべきでしょう。

(2)今、一番伝えるべきことを少しずつ分けて伝える
指導者の方は、多くの知識・経験をお持ちなので、指導するとき「あれもこれも」教えてしまいがちです。しかし指導される側は、キャパシティーオーバーになってしまう可能性があります。
指導のコツとしては、まず質問をして現状を把握した上で、「今、一番伝えるべきこと」から少しずつ伝えることです。一つできるようになってから、二つ目、三つ目と伝えることが効果的なのです。

(3)格好つけて話をしない
若手社員に敬遠されがちなのが「武勇伝」です。むしろ「失敗談」の方が、共感を持って聞いてくれるでしょう。「失敗しても、それをリカバーすれば大丈夫」と伝えれば、若手社員は安心できます。

(4)相手本位で接する
最後に一番大切なことは、自分のやりたいように指導するのではなく、「相手本位」で指導するということです。お互いの立場や状況を理解して、信頼関係を築き、若手社員が学びやすいように手助けしてあげることです。
若手社員の話を聞けないようでは、仕事だけでなく、社会からも置いていかれてしまうかもしれません。高齢社員のリタイヤ―した後の、人生の質にも関係することだと思います。



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