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健康診断の受診義務と就業規則~健康経営の第一歩

毎年5月、6月は企業の定期健康診断が集中する時期ですが、今年はコロナの影響で延期している企業が多いようです。今後、健康診断を実施するときに必ず話題になる、古くて新しい問題について考えます。

受診を嫌がる人たち


Q1.
仕事が忙しいと言って、定期健康診断を受診しない従業員がいます。どうすればいいでしょうか?
A1.
労働安全衛生法では、使用者(会社)に年1回の定期健康診断の実施を義務付けるとともに、労働者にその受診を義務付けています。使用者は実施を怠ると50万円以下の罰金刑が課されることがあります。ただし、労働者に罰則はありませんので、定期健康診断の受診義務を定めた就業規則を作成し、その重要性を伝えることが必要でしょう。
就業規則例①
第〇条(健康診断の受診)
1 従業員は1年に1回、会社の指定する医師による定期健康診断を受診しなければならない。


Q2.
それでは定期健康診断の結果、「要再検査」と診断された場合は、どのように指導すればいいでしょうか?
A2.
労働安全衛生法では、使用者に再検査を受診させる義務も命令権もありません。しかし、労働者の心身の異常を知りながら、通常通り業務を行わせて何らかの事故等が発生したとき、安全配慮義務違反に問われることがあります。そのため、労働者に再検査を受診させることができるように就業規則に定めることがいいでしょう。
就業規則例②
第〇条(健康診断の受診)
2 従業員は前項に定める定期健康診断の結果に異常の所見がある場合には、会社の指定する医師による再検査を受診し、その結果を会社に報告しなければならない。
3 従業員が正当な理由なく前項の再検査を受診しない場合、または、その結果を報告しない場合、会社は当該従業員の労務提供の受領を拒否することがある。なお、この期間については無給とする。


Q3.
最近は個人情報の意識が高まっているので、再検診の結果を知らせたくないという従業員が出た場合はどうすればいいでしょう?
A3.
使用者は労働安全衛生法において定期健康診断の実施義務があるため、その結果は会社に帰属する情報として考えられますが、それ以外の診断結果は会社命令で受診したとしても、当然に会社に帰属するとは言えません。そのため就業規則に報告義務を定めた方がいいでしょう。
就業規則例③
第〇条(健康診断の受診)
4 会社は、定期健康診断およびその再検査について、会社の指定する医師への受診およびその結果を報告することを命ずることができる。


Q4.
定期健康診断を受診する時間は業務時間中に、通常の賃金を支払うものと認識しています。再検査の場合はどうすればいいでしょうか?
A4.
定期健康診断を業務時間中に行い、賃金を支払うことは法的義務ではありません。しかし、会社には健康診断の実施義務があるのですから受診率を高めるには、就業時間内に行い、通常賃金を支払う方がスムーズに義務を果たせるでしょう。行政もそのように指導しています。
なお、再検査については就業時間に行うことが望ましいですが、賃金支払いについては使用者の判断によります。以下の事例では無給としました。
第〇条(健康診断の受診)
5 再検査に要する時間については無給とする。

健康経営の第一歩

以上、規程を作るだけではなく、安全衛生と労務の担当者が協力して、従業員へ啓蒙活動を続けることが大切です。近年、「健康経営」の考え方が広まってきました。健康管理は個人の問題ではなく、会社業績にも関係する重要な問題という認識で、風土づくりを進めていただきたいものです。


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株式会社H&Mコンサルティング 代表取締役  「企業の成長と従業員の成長を両立させる懸け橋になります」を社是として、中小企業の人と組織活性化を支援をしています。 社会保険労務士・産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
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