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大宮駅の小さなプリキュア
週末、旅に出た。
なんて大袈裟に書いたが、毎年新潟で行われているマラソン大会に参加できることになった。
事務局によると、今年はFacebookでの告知ができなかったらしく、僕は全くエントリーしていなかったのだけれど、滑り込みで現金書留で申し込める日にちが少し残っていて、慌てて申し込んだのだ。
新潟方面に向かうには、我が家の場合、埼玉の大宮駅で新幹線に乗る。結婚するまで東京駅や品川駅が最寄りの新幹線駅と信じていたから、検索したその結果に驚いた。
数年前、同じように大宮から北陸に向かった時のことだ。
小さな子どもと連れ立っていくには、在来線と新幹線乗り場が近い大宮駅はとても便利だった。
新幹線を待つ間、待合室で時間を潰していた。新幹線の模型のようなものがあったり、顔ハメパネルがあったりして、楽しんでいた。
子は、当時好きだったプリキュアの衣装を模したワンピースを着ていた。とはいえ、そのワンピースも誰かから貰ったもので、リアルタイムのプリキュアではなかった。
僕は派手な服が苦手で、当初女の子が着る服がどうも恥ずかしいというか、とにかく目立つのが気になっていた。
しかし、子どもはそんなことはどこ吹く風である。むしろウェルカムで、かわいいものやキャラクターものをこぞって着ていた。洗濯して乾いていないと機嫌が悪くなった。
そのプリキュアのワンピースは、保育園には着ていけないタイプの服だったので、お出かけの時にはよく着ていた。
待合室は静かで、小さい我が子の声が響くように聞こえたので、たびたび「アリさんの声で」と制止していた。
待合室には様々な人がいて、その中にちょっとヤンチャな格好をしたカップルがいた。髪の毛の色が金色で、レザーのジャケットのようないかつい格好をしている、僕がちょっと緊張するタイプの見た目だった。
我が子の、予測不可能な動きによって、そのカップルの前に走り出てしまったことがあった。ただでさえ騒がしくして、目の前で邪魔だったろうなと、僕は身が縮こまる思いがした。
すると、男性が隣の女性に小さな声で言ったのだ。
「プリキュアがいるよ」
僕は何か聞き間違えたのかと思ったが、女性の方が「プリキュア?」と聞き返していたので間違いないだろう。男性は、我が子の服がプリキュアのそれであるとわかったのだ。
ちょっと、というかだいぶ驚いた。怒らないの?ではなく、知ってるの?という感じで。
子どもを呼び戻して、待合室から出たときに、そのことを子どもに伝えた。すると「あのおにいさんも、プリキュアみてるんだね」と当然のように応えた。
子どもは驚かなかった、というかプリキュア仲間として認めていた。それがなんだか、とても微笑ましくて、大宮駅に来ると思い出してしまう。
そして、週末のこと。
僕が、大宮駅から新幹線に乗ろうとしていたら、改札の前に父親に手を引かれた小さなプリキュアがいた。
お出かけのテンションを上げるために着せたんだろうなぁと、共感が溢れてきて、思わず凝視してしまった。
数年の時を超えて、我が子と同じような格好をする子がいるなんて、と感慨深い。きっと、これからも大宮駅には小さなプリキュアが登場するかもしれない。
かわいいサムネイル作っていただきました。infocusさんありがとうございます。リーゼントだったらもっと怖かった…。
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