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ここはどこ #書もつ

毎週木曜日は、読んだ本のことを書いています。

没入してしまう物語を読んでいると、迫真の筆致で、行ったことない場所へもいけるような感覚を味わうことがあります。電車を舞台にした物語はなおさらそんな風になりがちです。

いつもとは違う、でも、いつか読むべき作品も。


メトロに乗って
浅田次郎

地下鉄を使って大学へ通っていた頃、たまたまこの作品を読んでいました。タイトルの通り、主人公は地下鉄に乗るのですが・・。現代と過去を行き来する物語は多くありますが、身近な地下鉄がその媒体となるのがとても面白かったです。

得体の知れない怖さというか、フィクションだと分かっているのに、物語が背中に迫ってきて飲み込まれてしまうような気分でした。

暗いトンネルが続く地下鉄の道のりと、物語の展開がとてもよく合っていて、自分が乗っているのは現実の地下鉄なのだろうかと、時々本から顔をあげて見回したくなる気持ちにもなりました。

早く読み終えないと、終点に着いてしまう。そんなふうにして、一気に読んだことが思い出されます。そのくらい、この作家さんの物語が身近で怖い世界だったのだと読みながら感じました。


夜と霧 新版
ヴィクトール・E・フランクル

ずっと読みたいと思っていた作品。
よくある被害者録ではなく、心理学的に極限状態への対応や事例をごく簡単に示し、当時の施設での残虐性などを訴えかける、渾身の作品でした。

本当に良く生き延びてくれました。
そして、よくまとめてくれたものだと読んでいて、何度も感謝する思いがしました。

平和がなくなったとき、果たして自分に生きる道はあるのか、いまと言う恵まれた世界への自覚は強いか、作者に叱られているような読了感でした。

さまざまな心理学の本や、自己啓発などの本にも引用される名著。人間の尊厳とは何か、自分が大切にしているもの、それをどう守っていくのか、そんなことを考えました。

時々、平和ボケという言葉を目にすることがあります。確かに、世界は広くて様々な課題があるし、日本にだって、僕が見えていない壮絶な環境があると思うのです。

この本も電車の中で読んでいましたが、ふと自分が筆者と同じような場所に入れられたとき、どんな風に考えるだろうか・・と不安に思ったことがありました。特別な人だからこの作品が書けた・・わけではないと思うのです。

生き延びるかどうかわからない極限の中で、その人の内面が問われる・・。もちろん解放されてから書いているので、安堵の中で記憶を美化したり、改変している部分もあるとは思いつつも、僕には想像できない世界がありました。

夕暮れのさびしい雰囲気、そして知らない場所に来てしまった不安・・何となく温かいけれど、怖い・・そんなサムネイル。infocus📷さん、いつもありがとうございます!

#推薦図書 #浅田次郎 #地下鉄 #夜と霧 #没入感  

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