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本の虫へ虫の本 #書もつ

毎週木曜日は、読んだ本のことを書いています。

虫の声が聴こえると、僕は秋を感じます。夏の暑苦しい蝉の合唱から一転して、涼やかな高音は、心を穏やかにしてくれます。ただ、穏やかなのは姿を見ていないから、かも知れません。

もし部屋の中で目撃したら、穏やかではいられないでしょう(笑)

僕は、虫が苦手です。

水底の棘 法医昆虫学捜査官
川瀬七緒

気持ち悪い、それが目を背けたくなる"本質"なのだと、この作品は教えてくれました。個性的が過ぎる面々の、かなりマニアックなやり取りと、緻密な虫たちの描写には驚きました。

幸い、虫には疎くて姿形が想像できぬまま読み進めることが出来ました。自然を守れ、生態系を保護しろ、それは人間のエゴ。

綺麗事ではなく、多くの人間が地球にはいるけれど、虫がいないと生きられないという事実を、物語が見せてくれました。良い作品でした。

虫が苦手な人がいれば、その逆に大好きな人もいます。それを人生として、社会に役立てるような人だっているのです。虫と人間の共同作業で、事件を解決するという画期的な捜査を、ぜひ覗いてください。

普通のミステリー小説なのですが、かなり精緻に虫の描写があるので、虫がほんとうに苦手だという方にはおすすめしません。ちなみに挿絵はまったくありませんでした。

僕も虫が苦手ですが、知らないことが多くて、むしろためになる感覚でした。矛盾していますが、本当にそう感じたのです。

この作品は2作目で、このシリーズは何巻か出ており、どれも虫たちの活躍が細やかに描かれています。シリーズものの読み方として、僕としてはあえて2巻から読むことが多いです。それは、いろいろな説明が省かれているから、すっと読めるのです。

虫によって事件を解決するという単純なストーリーのようで、なかなかに練られた物語は読み手を事件現場に貼り付けにするような感覚にさせます。

その臨場感は鮮やかで、耳元にハエが飛んでいるような幻聴すら聞こえてきそうです。ただ、虫の名前があまりにも正確であるために、一体どんな形をしているのか想像しにくいという利点がありました。

虫が好きな方、自然を愛する方、そんな方々には虫たちの姿がヒーローに見えるかもしれません。

実はこの作品は、職場の読書家おじさんにお借りしたのです。「無理して読まなくていいから!」と言われて手渡されたのがこれでした。その方は、いつも2巻にあたる作品から貸してくれて、僕の反応が良いと続きを貸してくれるのでした。

無理して読むな、と言われたら、無理して読むのが人情ってもので。みるみる吸い込まれてしまいました(笑)

登場人物たちが、とにかくよく喋ってくれるので、とてもスピードが早かった印象です。虫だけではなく、その環境などとのつながりについても語ってくれる部分では、現代の暮らし方にも何か引っかかるものを感じたりします。

この本を読めば、憎らしい蚊だって、愛おしくなる・・・かどうか、お試しください。

かわいいタイトルフォト、infocus📷さんに作っていただいたものです。回文のようなタイトルをテキストに色を付けて読みやすくしていただきました。ありがとうございます!
虫、と聞いててんとう虫をイメージできなかった僕は、つい苦手なセミやカマキリなどを想像してしまうのでした。

#推薦図書 #虫好き #ミステリー #川瀬七緒

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