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きっと書き手を癒す #創作大賞感想

この作品は、あえて初めから読まなくていいと言いたい。いや、書いた人からしたらとても失礼なアドバイスかも知れないが、きっと許してくれるはずだ。

小説という建前ではあるものの、その語り口はいつもの“みやもとさん”である。エッセイのようでもあり、長い自分史のようでもある。たくさんの知識や発想がありながら、静かに相手を見つめるような言葉遣いが、いつだって羨ましくなる。

みやもとまなぶさんのお仕事小説「中小ITショチョーの秘密」を読んだ。

誰にだって、秘密はある。

働くことの深さは、人によって違う。守りたいものも、捨てたいものも、秘密という箱に収められている。きっと同年代の方々なら、共感を持って読み進められるだろう。

あえていうなら、この作品は、みやもとさんのお仕事人生を、幼少期から振り返った力作であると同時に、どんな読み手にも相応しくない、みやもとさんのための作品なのだ。

きっと、書き上げた時には圧倒的な達成感があったはずだし、いままで断片的に話したことがあることでも、体系的に並べて整理するのはしたことがないだろう。

そのくらい長い長い仕事人生、みやもとさんだけでなく誰にでもある。

誰に何を言われたか、そして自分はどう思ったか、それはきっと胸の奥にしまわれていて、必要な時に取り出せるようになっていて。

これを読んだ時、正直悔しさを感じた。だって、僕も書きたいことだったから。きっと、同じように感じる人はたくさんいるだろう。

みやもとさんは、読んでくれる誰かのために書いたのではなく、ご自分やあるいは大切な誰かのために書いたのだと思う。

こんなに豊かな自分史が書けたら、いつだって戻ってこられる。そして、癒してくれるはずなのだ。


#創作大賞感想 #自分史  

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