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今日は、どんなご用件で

僕が、以前の職場で昼休みにたった一度だけのカルテットを組んだ話は、多くの方に読んでいただきました。注目記事にも選んでいただき、投稿に出てきた方にも読んでいただきました。

お昼休みに、来場者に向けた訳でもなく楽器を演奏することは、あまり褒められたことではありませんが、とても平和で優しい思い出です。


その職場とは、保健所でした。普段、検診などで使う部屋で、演奏をしたのでした。保健所は、さまざまな業務を担っています。まさに”揺り籠から墓場まで”、その地域に住まう人のために働いている場所でもあります。

もしかしたら、母子手帳を受け取りに行ったことがある方もいらっしゃるかも知れません。検診のために地域の保健所に訪れたことがある方も多いでしょう。

これは、あまり知られていることではありませんが、保健所では「免許」の発行代行を業務として取り扱っています(この表現、とても役所的ですね笑)。その免許とは、「医師」や「看護師」などの医療職の免許のこと。

医大などで学んだ方々が、”国試”と呼ばれている試験をパスすると、晴れて医師免許を受け取ることになるのですが、その申請を受け付けて、免許が出来上がったら、ご本人に渡すのが保健所なのです。

国試の合格発表の翌日から、その申請のために合格者が保健所を訪れるのです。

中の人は、窓口に来ていただいた方に、用件を確認して必要な部署や職員に繋ぐわけです。ふつう、自分の業務をしている傍らで対応することが多いため、窓口に誰か来た・・という気配を感じて、近くにいる人が対応することになります。

そんなとき、やはり知らないことのほうが多いので、誰を呼ぶのが通常対応でした。(お役所仕事の所以でもありますが、それぞれ担当する業務が厳密に決まっているため、経験者でなければ、他の部署の業務に詳しい方は少ないのです。)

僕は、窓口に立つと、端的に「今日は、どんなご用件で・・。」と尋ねてしまうのですが、ある日、とある先輩が対応しているのを見ていたら、窓口に立っていた方がふっと笑顔になったのを見かけました。

なにか、冗談を言ったとか、テレビでみたお笑い芸人の話をしていた・・はずもなく。とても短くて、でも温かな言葉を、来庁者にかけていたのです。


それは、「おめでとうございます」でした。

確かに、家族が何か試験に合格するなどしたら、「おめでとう」と声をかけるでしょう。その感じなのです。職場で知らない人に向けて発する言葉ではない、と思いつつも、こんなことを言われたら嬉しいだろうなぁと思うのです。

試験が合格した方に向けて、用件を確認した後に「おめでとうございます。少し、お待ちくださいね。」と繋いでいたのでした。

とある先輩、それは冒頭の引用にも登場した”フルートさん”です。ほかの人だって、きっと声かけをしていたはずですが、僕が聞こえたのはフルートさんの声だったから、印象に残っているのでしょう。

免許の申請に限らず、母子手帳だって実は同じ。「おめでとうございます」を声かけをするようにしました。僕のような男性職員から言われると、結構驚かれることが多くて、でも、すぐに笑顔になることを何度も経験することができました。

きっと役所の窓口だから「おめでとう」って言わなくてもいいのです。

でも、見ず知らずの誰かから「おめでとう」って言われたら、嬉しいし、ちょっと面白いな、なんて思っています。



#やさしさを感じた言葉 #おめでとう #仕事 #ひとこと

最後まで読んでいただき、ありがとうございました! サポートは、僕だけでなく家族で喜びます!