親と子とのあいだ #書もつ
仲の良い親子、距離のある親子、憎み合う親子、何の事情も知らないで見つめる親子像は、つい自分の知っている、あるいは自分そのものの関係性を当てはめてしまいがちです。
その実、本人たちにしか分からない事情を抱えていたりするものです。それが良くも悪くも、その人の性格を作ったりしているのかも知れません。
ふとした時に、親子の関係ってなんだろうね、と考えてしまうことがあります。特に、他の人の親子関係の話題には、興味津々だったりして(笑)。
グリーン・グリーン 新米教師二年目の試練
あさのあつこ
都会育ちの主人公が、ど田舎の農林高校の教師として働くことになって、2年目・・のお話し。教師になる経緯は、同タイトル作品の一作目で語られています。
生徒と教師、教師と教師、教師と保護者、そして生徒と保護者。さまざまな人間関係の中で、主人公が思いを巡らせます。
1年目にはなかった仕事に関する悩みや不安、そして自分自身への不満もあり、前作よりも現実味のある物語になっていました。
ただ、そこにファンタジーのように、高校で飼われている豚が登場するのは前作と同じでホッとします。動物や植物など、物言わぬ“教材”との関わりから、普通の高校生活ではないことは想像できますが、それはまた教師にも同じく降りかかっているのだと読みました。
村のような場での暮らしは、ともすれば隠し事などできない、つながりの濃さがあります。さらには、親族や同族関係の思いがけない広さと深さ。そして強さ。
それは何かのきっかけで、誰も触れられぬ闇になってしまうことも。
高校に限らず、学校にいる教師がそんなことまで抱えているのかと驚くとともに、教育の尊さを改めて考えました。子どもにとっての先生は、親とは違います。
とはいえ、主人公の一生懸命なところと、空回りしてドジをしてしまうのは王道というか、小説の楽しみだなと感じます。
一作目では、イベントがいくつも出てくるのですが、今作はかなり主人公の人間関係に焦点が絞られている印象でした。働くことを励ましてくれるような、そんな細やかな物語は作家の真骨頂かも知れません。
物語では、とある木工作品が主人公たちを助けてくれるのですが、そこには制作を担当した生徒のイニシャルが彫られています。
主人公の手元にあった作品のイニシャルは作中で紹介されたにも関わらず、その伏線は回収されずに物語が終わってしまった・・と思いきや、読み終わってから、実は伏線が回収されていたことに気がつく仕掛けも。
さまざまな悩みとともに、その道のプロとなり逸材となっていくのかも知れないと、元気をもらえる読み終わりでした。
1年目のお話も投稿しています。
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