闇籤 #週間ショートショートnote

良い運気とされた紙は、そばにある焚き火で燃やし、空に還す。
悪い運気だったら、船の形に折って少し先のせせらぎで、水に流す。

何が書いてあるのかは、誰にも分からない。


元日の夜8時ちかく、とうに日は沈んで暗闇が覆い被さっているこの森にあるやしろに向けて、長い行列ができていた。

「よく当たる」
「ほんとうのパワースポット」
「ここには龍神がいる」
「引き寄せ体質になれる」

さまざまな噂が飛び交うネット掲示板に、毎年書かれている神社はここだ。

境内に太鼓の音が響き、定刻を知らせた。

薄明かりの中、ゆっくりと列を進む。手にしていた初穂料を小さな賽銭箱に入れ、道を進んでいくと、いくつかの台に、おみくじらしき包みが山積みになっていた。

思い思いに包みを選び、中をあらためている。

さまざまな噂がある「夜光おみくじ」が、この神社の名物だった。

今年こそは、いい年にしたい。今年こそ、成功したい。

手に入れたくじを開く。

(410字)



#毎週ショートショートnote #夜光おみくじ  

この記事が参加している募集

最後まで読んでいただき、ありがとうございました! サポートは、僕だけでなく家族で喜びます!