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安らかな悲哀 #書もつ
子どもと動物の話題は、興味を示す人が多いと言われています。テレビでも、ひと頃は動物番組が多く放送されていた記憶があります。
サバンナを何百時間も撮り続けて、たったの1時間程度にまとめ上げられたドキュメンタリーは、動物の生き様を教えてくれるようです。
反対に、家庭で飼われるような動物たちを主眼にしている番組は、その可愛さを存分に引き出そうとしていたり、人間に寄り添う動物のいじましさのようなものを伝えてくれるわけで。
今回は動物園の訪問記。
動物園にいる動物への愛情と哀しみ、そしてそれを飼育する人間への友情と励まし、この本を読めば動物園のほんとうの裏側が見えてくるのかも知れません。
あれ?
檻の中にいるのは、
動物ですか人間ですか?
動物のぞき
幸田 文
知性あふれる文章で、可愛い動物のことを書かれた作品を読むと、脳がバグったように感じられます。あれ、いま何を読んでいるの?と。
それもそのはず、この作家の整った言葉に触れると、背筋まで伸びるように感じるし、可愛い可愛いと手放しに喜ぶのではない、奥に籠った苦しみのようなものまで描かれているのです。すごい、とさえ思うのです。
動物園への取材の初日、その初っ端に見かけた動物には、作家だけでなく読み手も驚かされました。時代が変わっても、奴は人間のそばにいました。
この作家が活躍された時期はやや昔。
この作品は、昭和30年代に雑誌の企画として書かれたもので、収録されている写真も、土門拳なる巨匠と呼ばれる方のもの。
動物を知らない、と思うからこそ、飼育員への問いかけや、純粋な驚きが鮮やかに描かれていました。
物言わぬ動物だからこそ、人間が「こうかも」と考えることになる、飼育員は特殊な仕事です。
作家なりの言葉遣いではないと思いつつ、あまり聞かないカタカナ表現が印象的でした。
ゴリチン
トンタカ
ゴリチンは、ゴリラとチンパンジーのことをまとめてそう呼ぶのだと飼育員から教えてもらったとありました。それはそうかもしれません。
ただ、トンタカは、トンビが鷹を産むことを略して言う、それも当時は一般的に言っていると書いてありました。本当でしょうか。
作家の思うところは、動物は可愛いのだけれど、動物園はどうだ、サーカスはどうだ、と問わずとも哀しんでいるふうなので、読んでいる方も動物園の楽しさを知りつつも、そこで生きていく動物たちの野生を知らない哀しみを思ってしまうのです。
手放しで動物を愛でるだけではダメで、彼らや野にいる彼らの仲間たちまで想いを馳せてこそ、動物園の意義なのかと思わされもします。
古典からの引用表現も多彩で、読み終わるとひとつの小説を読んだような、さまざまな言葉に触れたあとの、あの充実感が味わえました。
また僕も、動物のぞき、行きたくなりました。
以前書いた、同じ作家の作品。小説を読みながら着物の知識が着く・・かも。
なんとも言えない表情のシロクマ。動物園に暮らすことは、幸せなのでしょうか、それとも・・。infocusさんありがとうございました!
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