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修羅場エンタメ #創作大賞感想

青空に映える、赤茶色のレンガの建物・・オレンジ色で「仙台駅」とあった。なんだか懐かしい・・唐突だが、仙台は僕の妻が育った街である。

この作品を読んでいて、なぜ仙台なの?もっとほかにもあったんじゃないの?などと思っていたら、物語の後半で答え合わせがあった。なるほど、そういうことか。

誰にでもあるのか、ないのか、修羅場のお話し。でも、僕はとても楽しく読めた。たぶん、自分に重なるような人物がいなかったことと、そういうことは小説で読むことと思っているから。”僕には”遠い遠い設定で安心していたというか。

ちょっとした旅行・・・のはずが、悲喜交交の仙台行。

あなたは、笑えるか、泣けるか、それもと冷や汗・・花丸恵さんの「一泊二日」を読んだ。

主人公は怒っていた。怒った主人公は、走り出した。あいつのいる仙台へ向けて。

怒りを自分の中で育てるのではなく、ちゃんと相手にわからせようとすること、これは恋愛に限らず重要なことかも知れない。大抵、相手が怒っているかどうかなんて分からないし、家族だとしてもなかなか、本当の気持ちは分からないわけで。

あまり大きな声では言えないが、家族でとある温泉街に行った時に”この人、ひょっとして・・”という方が、ずっとレストランで1人で過ごされていたのを思い出してしまった。ずいぶん遅くなって、同行の方が到着されていた。

まだ赤ちゃんくらいだった我が子に、にこやかに反応してくださったが、一体どんな心境だったのだろうと・・ちょっとした寂しさのようなものを感じた。

とはいえ、この話は僕にはエンタメだった。主人公は悲しんだり、怒ったり、諦めたりしているが、それを楽しむというよりも、相手のリアクションにクスクスしたり、主人公と同じように”したり顔”になってみたり・・。

丁々発止のやり取り、それとも女子のノリの良さ?・・男の僕からしたら、とても意外な展開のように見えるけれど、ここに書いてある以上に彼女たちはお互いのことが分かっていたのかも知れない・・と今なら思う。

ただ、終盤には緊張感の漂う場面はあって、痛快だけでは終わらせない。読み手に何か釘を刺すような、ちょっとした胸の痛み。そして主人公の去り際の美しさと相俟って、人を傷つけてしまう嘘の愚かさをジクジクと感じながら、読み手も仙台をあとにするのだ。



#創作大賞感想 #仙台 #花丸恵さん

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