医療という名の隣人 #書もつ
読書メーターという、読書をする人用のSNSがあります。
本を登録し、読み、感想や要約を投稿する。ただそれだけで、読書記録として積み上がっていく仕組みが、僕は好きです。
ただ、このところあまり書き込んだりしていませんでした。それは読書量の減少もさることながら、読み終えても、ぱっと言葉が浮かばないことが度々あるからなのです。それは、きっと何か自分以外の存在を意識しすぎて、自分がどう思っているのかを考えることを否定していたのかも知れません。
このnoteでも、本の紹介もしたいと思いつつ、なかなか前に進めないので、まずは読書メーターにある過去の感想から、個人的に印象深かった作品を紹介しよう、という企みです。名付けて、#書もつ 。
しばらくは読書メーターから、僕が書いた感想を引用して、作品の紹介をしたいと思います。いまもなお緊張が続く、医療現場を舞台にした小説。
チーム・バチスタの栄光 上・下
海堂 尊
先輩の読書家が、絶賛していたのを知りながら、どうせ小難しいことが書いてあるのだと勘ぐっていた、そんな自分を恥じる。
圧倒的な物語の反面、冷静で間の抜けた語り部の着実なブレーキが、スピード感を一層引き立てている印象なのだ。
つまり、気持ちがいい。読み心地がいい。
健康であるが故に、おおらかに病院の様子が眺められるという発想でもあるけれど、こうした社会風刺的なドラマが手軽に読めるのは、この作家の大いなる努力が結実した証である。
下巻も楽しみだ。
白鳥の人柄が、ホントいたらヤダなぁと思えるくらい、身近な描き方だったのが、ぐいぐいと惹き込んでくれる原動力なのだと思う。
中の人の作家という視点による客観と主観の混ざる感じが、とても楽しかった。権威的なところも書くけど、人間くささもあって。
読みながら、本当に健康が尊いものであることを痛感できた。死を描くことで生きていることへの祝福を滲ませるという、命をキラキラと描く世界に、またすぐにでも会いに行きたい。
自分や大切な人の命を思う、そんな作品とは、まさか思ってもいなかった。
医療系の小説は、社会の問題点を明るみにするといった使命感が漂うものですが、とりわけ作家による人の描き方が印象的でした。
この作家のほかの作品でも共通して感じることは、どの人物にも人間味があり明るく、懸命でした。これがデビュー作だなんて、信じられないし、その努力や苦労は想像を絶します。
作品を紹介してくださった先輩は、この作品で医療従事者の存在意義が見直された、と語っていました。
現役の医師による視点は、ドキュメンタリーを観ているように臨場感があり、程よいコミカルさは物語の長さを感じさせません。病院という世界を、暗すぎずまた楽観的にもならずに、とても身近な存在として構築した世界観が、僕はとても好きです。
何より、ラストに向けて疾走する思考の鮮やかさは、登場人物のそれぞれに緊張感が漲るようで、演劇を観ている感覚に似ていました。
健康であること、命があることを「尊い」と思えるような作品として、単なるミステリー小説ではない切なさが残るのは、僕だけではないはずです。
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