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テーマとパークのこと

これは、千葉にあるあの国の話ではありません。まずそれを断っておかなければ、このnoteを読み進められないと思うのです。どちらも英語で、テーマには主題という訳がついています。パークは、公園です。

暮らしている地域のとなりに、調布という街があります。かつて、朝ドラでも映像化された妖怪作家の水木しげるが暮らしていた土地です。代表作の「ゲゲゲの鬼太郎」はあまりにも有名です。いろいろなタイミングで、アニメ化されており、世代を超えて認知度が高いというのが、本当に素晴らしいことだなぁと思います。

その「鬼太郎」がテーマになった公園が、今年の春、調布にできました。鬼太郎ひろば、という名前です。京王線の調布駅が地下化されたことにともなって、線路だった場所を用地として開発。鬼太郎の世界観を取り入れ、キャラクターたちが遊具になったり、ベンチや縁側に座っていたりして、広い世代が憩いの場として利用できる公園になっていました。

家族と一緒に、ようやく行くことが出来たのは、つい先日のこと。それはもう、思っていた以上の体験というか気付きのある公園でした。調布駅から徒歩15分くらいで、大きな街道沿いに面した入口があり、もともと線路だった土地だからか、長細い形をした公園でした。休日の午後に行ったこともあり、小さいこども連れから、家族連れ、大人の一団など、多くの人がいる印象を受けました。遊具とベンチが点在し、街道沿いの入口には鬼太郎のオブジェがありました。公園の入り口の反対側は、地下線路のトンネル口となっていて、京王線の出入りが間近で見られる場所としても整備されていました。

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たかが公園に、なぜそんなに興奮しているのか、そんな風に思われているかも知れませんが、この鬼太郎ひろばは、とても夢のある公園だと思っているのです。

ひとつめに感激したのは、キャラクターの遊具でした。一反木綿は地面に配置されて、平均台のような遊具になっていたり、ぬりかべはクライミングが出来るようになっていたり、鬼太郎ハウスの滑り台があったり。ふつう、キャラクターのある公園は、オブジェがあるとか既成の遊具にキャラクターが描いてあるだけだったりするのですが、この遊具たちは違いました。公園の遊具はメーカーがあって、そこから買って設置するというのが公園の作り方として、ふつうのやり方です。

鬼太郎ひろばにある遊具は、設置場所にも工夫があったり、遊具そのもののデザインや設計、そして設置など、すべてをゼロから行っているのではないかと思います。もともと公園だったところをリニューアルしたわけでもないですし、京王線の地下化で用地が生まれることから始まった話なのではないかと考えています。それは、かなり時間がかかるはずで、おそらく数年前から計画されていたのではないかと思うのです。

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もうひとつは、キャラクターが水木しげるの描いた鬼太郎をベースにしていることに感動しました。作家への敬意も感じられましたし、リアルな妖怪たちを配置することで、多くの世代が違和感なく溶け込める設計になり得ていると感じたのです。アニメにもなっているし、デフォルメしたほうがカワイイし、リアルなものは子どもが怖がるから公園の遊具としてふさわしくない、という発想もきっとあったはずです。ただ、そこをオリジナルで造形した妖怪たちを配置することで、私たち大人世代も「え、ちょっと怖いね」と話せるような、気軽さというか子どものためだけのスペースではないというのが、心地いいなぁと思いました。ぬらりひょんの縁台は、夜の暗がりで見かけたら、大人だって、さぞ怖い思いをしそうです。

都市部では、公園を作ろうと思ってもなかなか場所がなくて困っているという話もあります。保育園と同じように、子どもたちの声がするからということで整備を近隣住民が反対するといったニュースもあります。そういう中で、このような公園が生まれたことに、明るい兆しを感じるのです。

ふつう、公園を作ろうとすると、用地取得、測量設計、整備や設置の工事、場合によっては(トイレなど)建設工事が必要になります。規模によって期間は異なりますが、特に時間というか年月を要するのは用地の取得で、私有地の場合には数十年かかることもあるのです。土地の所有者からすれば、公園になるよりも駐車場や家が建つほうが収入になります。金銭的な利益もなく騒音などの苦情などが入ってくるのは、まったく不本意なのです。

鬼太郎ひろばの場合は、土地の所有者は京王電鉄だったと思います。経緯は分からないのですが、駅や線路を地下化した際の土地活用のひとつとして公園ができた(市が買い上げたのかも知れませんが)のは、英断だと言いたいのです。また、線路沿いに住む住民にとって、電車が走るよりも公園ができた方が、騒音の内容が変わるとともに、自由ではないけれど自分たちが利用できるスペースが増えるのです。僕なら、あぁ沿線に住んでてよかったなぁ、と思えるかもと考えています。

点在する遊具を眺めているうち、鬼太郎ひろばに登場しているキャラクターたちは誰が決めたのか、そんな疑問が浮かびました。それは、いつか関係者にお会いできたときに聞いてみたいと思います。

ここまで鬼太郎ひろばのことを書いてきましたが、僕は、例えば都道府県や市町村に、ひとつづつ地元ゆかりの「テーマ」のある公園があるといいなと思います。聖地巡礼といった言葉に代表されるように、テーマのある旅は楽しいですし、単なる公園が目的地となること、さらには観光客が来るということ自体が地元の誇りにもなる可能性があるはずです。賑やかになりすぎるのは、迷惑になってしまうので調整は必要になってきますが・・。そういう意味では、鬼太郎ひろばにはトイレはありませんでした。トイレは需要は高いけれど、管理がとても難しい施設です。

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また、単なる公園、それも日常生活に必要だと思います。みどりや遊具、散歩道、ベンチなど憩いの時間を過ごす屋外の場所として、これからもずっと暮らしの中の部品として、利用されていく場であると思います。そして、今回紹介したようなテーマのある公園が、地域にとっては単なる公園として認知され、他方で地域外からは、いわば「聖地」として扱われるようになったら、公園としての価値は高まるのではないかと思います。

それには、公園の作り手をどんな風に決めていくか、という視点が必要になってくると。地域の外の人が決めるのか、地域の人が話し合うのか、何かをお手本にするのか、色々な事例があり玉石混交ではあると思うのですが、あちこちに「この公園は、ここがいい!」と胸を張って利用している人(そんな人いないか笑)が増えるといいなと思いました。

長すぎる独り言、読んでいただきありがとうございました。鬼太郎ひろばに、また遊びに行きたいと思います。すぐに。

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