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人の印象

また突然の投稿になってしまいました(汗)。

実はわたくし引っ越しました。
夫の仕事の都合なんですが、島が変わるという大移動。(北島オークランドから南島へ)しかも突然。
未だにバタバタしておりますが、なんとか普通に生活できるようになりました。

さて、引っ越しといえば新生活。
新天地での安泰な生活には、人間関係の構築が重要な鍵です。
特に私という人間は普段から子どもたちに迷惑をかけているので、そのへんは気を引き締めなければと思っていたというのに・・・。

現在ニュージーランドは冬。そして南島の寒いこと・・・。
オークランドに住んでいたときは暖房いらずだったのに一変。朝は霜から始まり、夜は私のシモが冷えて夜間頻尿。
そして老いると手足だけ異様に冷える。
だから私は運転するときに靴下を手にはめる。
靴下としての役目を終えた、年季モノのモコモコ靴下は裏に滑り止めがついているので運転にはもってこいなのだ。
残念なのはその見てくれ。毛玉まみれで色もかなり褪せ、見た目がかなり汚いこと。

その日は子どもたちが通う予定の学校で面談があった。

予定より随分早くついてしまった私は、頻尿のため近くのガソリンスタンドへ駆け込んだ。
無事に脱尿し「もうおしっこ止まらないわー」と言いながら運転席に座った。

知らない人の車だった。

助手席には女子。沈黙の見つめ合い。
ニュージーランドの女子高生NKが言う「横の車じゃない?」と。
そこで初めて自分が車を間違えたのかと理解。焦った日本人中年女性は「ソリーソリーヒゲソーリー」と車から飛び出した。

自分の車に移動し、己を落ち着かせる。

子どもたちはそんな私の失態を見ていなかったようで、ひとまずホッとする。
そして思った。

私ったら、ちらっと車の形と色見て自分のだって思い込んでしまったんだ。本当に注意力鈍ってる・・歳のせいだとか、おっちょこちょいだからって言ってる場合じゃない。真面目に気を引き締めないと。と久しぶりに反省までした。

そんなことがあったので、面談に向かう私はかなり気を引き締めていた。

面談予定の教室を開けると、学校長に子どもらの担任3名(女性2名・男性1名)の計4名が出迎えてくれた。

私は顔に一張羅の笑顔を浮かべ、上品かつ気さく、それでいて元気な挨拶をしながら教室に入った。初対面での第一印象は人間関係の構築の第一歩。ここは非常に重要なところ。

最初に校長先生と思われる男性が椅子から立ち上がり「〇〇です、よろしく」と手を出した。握手に答えようと私も手を出した。

あ。

不潔極まりない見てくれの靴下。

靴下越しに交わされる固い握手。

躊躇はしないのかい?学校長よ。

個人主義の国ニュージーランド。
多様性を受け入れる国ニュージーランド。
しかしだよ、こんなことを認められては困る。

なんとか言い訳しようと思った私は
「ジャパニーズスタイルテブクロ!」と笑いながら言った。

私は殺された。

「あったかそうでいいですね。」
「素敵ね」という言葉を即座に投げてきた担任達。硬く微笑む学校長。

不潔極まりない見てくれの靴下を手にはめた人間に優しい言葉をかけるその意味。教師としての道徳、同情心からくる優しさ。

そして残酷なほどあっさりと面談は終わった。

死んだ目で「see you」と教室から出ようとすると、学校長も外出するようで、私達は駐車場へ一緒に歩いた。雑談をしながらも、頭の中ではずっと靴下の言い訳をしようと思っていた。けれどタイミングも無ければ、言い訳が見つからなかった。靴下を手にはめていたのは事実。
汚く見えますが、毎日洗濯しています。なんて言ったところで無意味だろう。靴下を手にはめていた事が問題なのだもの。
そんなことを考えていると、学校長が「それじゃあ」と言って車に乗り込んだ。その車に見覚えがあった。
そう、女子席にはあのNK。
「まさか!」と覗き込む私とNKの目があった。お互い脳裏にスタンドのひと時が浮かんだに違いない。

校長の娘だったんかい。

お手手に靴下どころの話じゃない。車間違えたあげく「おしっこが止まらない」と私ははっきり言ったのだから。

「人の印象は3〜5秒で決まる。」
そんな末恐ろしい法則をご存知だろうか。その上その印象は2年以上も続くらしい。
最初の5秒。そう、それだけ乗り切れば良かったのに。
見た目を整え、口角を上げても、微笑んでもなんの意味もなかった私の第一印象。

ここに住む予定は1年くらいだろうか・・・その間、私の印象はずっとバルタン星人または尿意の消えないバルタン星人。

その日の夜、ゴミ箱に私のジャパニーズスタイルテブクロが捨てられていた。娘だろう。
ごめんなさい、子どもたち。

そして日本人の皆様、特に近隣に住む皆様、汚い靴下を手にはめること、そしてそれが日本人の習慣かのように「ジャパニーズスタイルテブクロ」なんて嘘ついて申し訳ありません。
謝罪いたします。


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