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幸せを集める。


生きる理由とは何か。

それを知るために生きていると言う人もいるし、そもそも理由なんてないという人もいる。
それに、そんなことを全く考えずに生きる人もいる。

生きる理由。

そんなことを考えても答えがあるとは思わないけれど、考えたくなる時もある。
その日は考えたい日だった。そして頭にふっと浮かんだ言葉がある。
「人間は幸せになるために生きている」という言葉。何度も聞いたことがあるし、色んな本にも登場してくるこの言葉。深く考えたこともなかったけれど、幸せというのは凄く曖昧なものだと思う。

私にとっての幸せはあの人にとっての幸せじゃないし。

幸せを感じる瞬間、時間はたくさんある。
子どもの成長を感じた時、店員さんの笑顔、友達の優しい一言、赤ちゃんが笑った瞬間、花が綺麗だと心から感じた瞬間、誰かが私のノートにスキしてくれた瞬間とか。

でも、生理前は全てが灰色。大好きなコーヒーも美味しいと感じない唯一の日々。家族や友達に何かあった時なんかも同じだ。どんな楽しいイベント中でもずっと灰色。

そう考えると、幸せって刹那的なもので、継続するのは難しいのかもしれない。

私の叔母は若くして癌で他界しのだが、亡くなる間際にその叔母が言っていた言葉を思い出した。
「今私が幸せかと聞かれた、きっと不幸だろうね。痛いし苦しいもの。
それに死にたくないんだから、死にそうな今なんて幸せなわけがないもの。でもね、幸せな思い出が幸せにしてくれる瞬間はあるの。
きっと人は死ぬ間際とか、苦しくて辛い時は、幸せな思い出で自分を幸せにしようとするのかもしれないわね。じゃなきゃ諦めちゃう。だって大好きなケーキももう食べられないのよー」と。

幸せを集めるために生きる。
生きる意味とは幸せを集めることなんだろうか。

苦しい時はその集めた幸せで心を満たして、また生きようと頑張ったり、人生に立ち向かおうとするのかもしれない。

私はもともと深く物事を考えない人間だから、やっぱり生きる目的なんかさっぱり分からない。
でも幸せを集めるために生きるなら私にもできそうな気がする。

先週、友人の命日だった。
突然亡くなったもんだから今も悲しみはなくならない。でも彼女と感じた幸せは、今も私に幸せをくれる。

センチメンタルだった私は、彼女のことを考えながらランニングをした。
すると私は集めてしまった。
もちろん、幸せではない。

糞を。

家のすぐ近くで猫(たぶん)の糞を踏んだのだ。
無理やり幸せモードに切り替えた「運(うんこ)がついたから、ラッキーじゃないか!」糞を足裏に付けたまま帰宅すると、鍵がねえ。

来た道を戻り鍵を探すこと数分。歩道に茶色い物体。糞か?
汚ったねえ、と思いながらしっかりと目で糞を凝視。こいつが私の足裏に…と思ったら。

‼‼‼
あった!
なんと猫の糞の中に‼


こんな事ある?

誰が糞の真上に鍵を落としてそれを自分で踏めるの?
どう考えてもそんなこと物理的に起こるわけがない。

でもどう見ても鍵は糞の中。

その辺に転がっていた枝を使い、できる限りの糞を鍵からそぎ落とした。
そして左手に葉っぱをもち、葉っぱ越しに鍵に触れ、拾い上げた。もう全身の細胞が悲鳴を上げ、頭のてっぺんまで震えた。そして思わずつぶやいた。
「あまのくん」
なぜ、ウド鈴木?

そこからはとにかく凄い形相で家まで猛ダッシュ。手はまっすぐ横に伸ばし
カギをできるだけ身体から遠ざけたスタイル。糞のついた鍵をしっかりと握りたくない、でも落としたくないから走り方は衝撃が少ない小走りだった。
何人もの人とすれ違ったが挨拶する気にもならない。
とにかく「天野君。天野君。天野君。天野君」とひたすら走るリズムに合わせて天野君の名前を呼び続け帰宅。(天野君は全く関係ありません。)

鍵を庭のシンクに放り投げ、おもむろに指を鼻に近づける。やってはいけないと思っていたけど、好奇心は止められない。
思い切りなんて大胆なことはできなかった、それはそれは控えめに鼻から息をちょっとだけ吸い込む。
「キャイ~ン‼‼‼‼‼」
だから、なぜ?
なぜウド鈴木?

無事に鍵を洗い、コーヒーを飲みながら
ノートを書いている私の指からはうんこ臭
何度も洗ったのに消えないうんこ臭
鼻の穴にこびりついたうんこ臭。
亡くなった友人を想いうんこ臭。

何故私はこんなにうんこを集めてしまうのか。
幸せを集めなきゃ意味がないのに。これじゃあ人生に立ち向かえない。

そういえば最近、しんどい日が多かった。そんな心に余裕がない私に、亡くなった友人が何かを伝えたかったのかもしれない。
人生にはスパイスになるような出来事が必要で、それが人に笑いを与えてくれる。彼女はそんな出来事を私にプレゼントしてくれたのかもしれない。
私の性格を熟知している彼女だからこその、このプレゼント。そう思ったら少し救われた。
ありがとう。

なんて思わわけがない。できることならば、普通の幸せをプレゼントしてもらいたかったよ。


皆さま、素敵な夜を。











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