中二病

 ここ数日、「無職転生」をなろうで読みふけっていた。もう多分5週目くらいだと思う。

 アニメの無職転生を見たのが最初だったはずだ。題名からして「The なろう」な薄っぺらいアニメだと思っていた。で、いつも通り1~3話辺りを一気見して「これは」って思って、なろうをぶっ通しで読んだ記憶がある。
 物語の詳しい内容はさておいて、本当に面白い作品だと思う。腰の入ったファンタジー作品なのだ。

 俺にとってはファンタジー作品というのはわりと身近なものだ。
 ゼロ使や軌跡シリーズ、スレイヤーズ、伝勇伝、無職転生。色んなアニメで見てきた。
 世界観がしっかりしているファンタジー作品もあれば、FFやドラクエのパロディをファンタジーといってるものもある。ナーロッパなんて揶揄されるファンタジー観もある。
 ファンタジーにも色んな世界があるが、共通しているのは「自分たちが生きているこのリアルではなく、別の歴史を持って別の文化で別の技術体系を持った別の世界」というところだろう。
 そして往々にして主人公は重厚なバックボーンを持ち強大な力を振るって壮大な敵と戦う。
 彼らは圧倒的に特別なのだ。

 中二病という言葉がある。14歳くらいの頃に持つ「自分は特別な存在で、特別な力を持ち世界を変え得るのだ」という幻想だ。
 分かりやすく邪王真眼を発言したり、ダークフレームマスターの称号を名乗らずとも、自分が特別だという仮初の全能感を持ったことがある人は少なくないだろう。
 そして大抵現実に打ちのめされて、飼いならされていく。

 あぁ、そうさ。他の人は知らない。でも俺は未だにこの病が完治していないと言えるだろう。
 特別な人間になりたい。憧れる。人には無い力を持って、誰もが体験しない人生の苦難を乗り越え、誰も成しえない偉業を打ち立てたい。
 沢山の人に賞賛されたいし、高い地位や権力を持った人に一目置かれたい。
 ただ現実は自分は沢山いる人間の一人で、ありふれた替えの効く人間だ。
 多少の優劣があっても飛びぬけたものではない。法の基に誰もが平等だ。
 何かを成し遂げる英雄にはなれず、社会の一員として歯車となることを強く勧められる。

 そう、少なくとも日本に於いて、全国民は平等だ。総理大臣も生保受給者も等しく大事な命だ。勿論現実的な優先順位はある。ただ平等だというのが建前であると同時に本心でもある。きっとそれは、人類の進歩という意味では素晴らしい事なのだろう。
 ただ、やはりこの実現しつつある理想は、大分難易度の高い事なのだと思う。

『人間誰しも平等で、誰しもが可能性があり、誰しもにチャンスはある』

 きっとこんな綺麗事を、多くの日本人は受け入れるだろう。それぞれ思うところはあってもその理念を鼻で笑う人は少なく、それを目指すこと自体は善だと思っているはずだ。
 そして「個性」を活かす時代だというのを声高に叫び、それを善だという風潮が作り上げられている。
 一方で実際の価値観は変わらず、大人達は同じ口で「"常識的"に考えて」とか「"普通"はこうする」と言う。
 相反するはずの理念を、「理想と現実」なんて言葉で、平気で両方本気で言えるのがこの世界だ。

 そんな世界で、自分が特別だと思うためにはどうしたらいいのだろう。
 家柄とかの特権階級意識? 前時代的だ。勉強で主席を取ればいいのか? それが出来るのは東大の主席だけだ。架空の設定で特別観を出す? 中二病乙。特別な成果を出す? 出る杭は打たれる。

 多分、特別になりたいというこの願望は、自尊心を満たしたいがためのものなのだろう。自分自身に自信が無いから、自分でなければならない、代替不可な存在だという裏付けが欲しい。

 逆の意味でも特別さは必要だ。
「あの子は天才だから。」
 そうした言い訳、逃げ道も必要だったはずだ。

 平等というのは素晴らしい言葉のように聞こえる。
 ただ平等というのは自己責任の理念と密接に繋がっており、凡人にとっては安易に自尊心向上させる、或いは出来なくても仕方ないと言い訳する、そういった逃げ道を奪う言葉でもあるのだ。というのは近頃ちょくちょく聞く理論だ。

 無職転生を読んでて、久しぶりにファンタジーにどっぷり浸かって、俺も特別になれたら、だったらという感傷が揺蕩った。
 これを書きながら、うつらうつらしながら何故今これを欲したのか考えていたが、多分俺は自信が欲しいのだろう。
 彼らのように自分に能力があるのだと。彼らのように世界を変える力があるのだと。彼らのように困難の先で幸せを掴み取れると。乗り越えられると。

 うん、多分あってるな。それに意識を傾けると、なんというか痒いところに手が届いたかような心地よさがある。
 自己解決出来たから以上で。
 特別な存在だったらなぁー 誰かファンタジー系のシステムの壮大なキャンペーンシナリオやってくれ

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