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カスパー/言葉の拷問劇か快楽か


カスパー@東京芸術劇場シアターイースト

ミュージカルだけではなくストプレも観てますよのコーナーです


一言で言うと、今の自分に相応しい作品でした
言語論やメアリーの部屋に関心ある人にはぜひおすすめしたい!


1.作中感想

言葉を与えられずに育った主人公カスパーを言葉の拷問とも言える環境で徹底的に育て直す物語

言葉を一つしか知らないため、全ての感情や説明を
僕はそういう前に他のだれかだったことがあるような人になりたい
という言葉でしか説明できない段階
→言葉の洗礼を受けて語とのつながりを意識して話せる
→意味が通る文が話せる
→(…)
→ゲームを覚える
→暴力を覚える
→演説できる(他人に説明できる、言葉の暴力)
→自伝できる(自分で自分が説明できる)

という風に発達していきます

また、カスパーとは他の語り方ができるよ、みたいなことを言って映写機で色々見せる場面では、
他の可能性の提示
→カスパーはそれを否定する
(今いるのが僕だ!みたいなニュアンスのセリフ)
=実存の肯定、可能世界の否定
→現実生活に適応できるようになる

という風に複雑化していきます

※上記は個人の解釈です
※原作本をパラパラとめくってみたのですが、どの場面だったか特定できませんでした(力不足ですみません)

こう見ると、学習を経て人に教える行為ってのは自分自身に語り直す行為の前段なんだなあ、と改めて考えさせられました

最後のカスパーの台詞は、「ヤギと猿」って言っていたことを原作本で確認
何言ってるのか聞き取れなかったし意味も汲み取れないけれど、音の連続が気持ちよくて改札通る位までずっと脳内でリフレインされました

また、全身白色の衣装から成長につれて派手な裏地の色が増えていくのは鮮やかで暗示的でした


2.作品背景

パンフを読んで驚きだったのは、カスパーにはモデルとなる人物が存在したこと(原作もドイツ語です)

作中でも航空機や爆弾のような衝撃音が聞こえてくる場面があったので、WWⅡあたりの時代背景なのだろうかと予想していたのですが、

実際はそれより前、19世紀のはじめドイツのニュルンベルクで発見されたカスパー・ハウザーという人物だそうです

しかし『カスパー』を書いた作家ペーター・ハントケは、ドイツ軍の兵士を父に持ち、WWⅡの間にオーストリアで生まれたという背景を持っています

このことから、彼の出自が作品に深く関わっていると考えて間違いではなさそうです

なんと2019年にノーベル文学賞も受賞されているそうです😳
※パンフより


3.振り返り感想

観劇後、もう一度私も生まれ直した感覚になりました
洗練された言葉の暴力が最初から最後まで美しく胸を打ち
自分が忘れていたことを思い出させてくれました

言葉が自分の中に入って自分から「何か」を奪っていく感覚を一度も嫌がったことがなかったけれどそれは一方的な喪失だったのだと

こんなに高揚して脳みそが興奮したのいつぶりだろう!
ストレスない思考対象は心の健康維持に大切だとしみじみ
そうでないと考えなくて良いことをうじゃうじゃ考えて駄目になってしまうので……

徹頭徹尾惹きつけられる芝居で、極めて自分好み

良い言葉に包まれるだけで多幸感に浸れる

自分の原点を思い出せる、言葉の快感に包みこんでくれる作品でした

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