7.悲しみのどん底だからこそ、優先順位をつけて動こう

配偶者との死別は、ライフイベントにおけるストレスの中でも最大規模だと言われている。夫婦関係や家族構成、お互いの年齢などによって、死別した人が置かれる状況は様々だ。若くして伴侶を亡くすことで、ひとり親で子育てしなければならなくなったり、子供達は巣立っていったが老後の生活を一人で営まなければならなかったり。直面する問題はそれぞれだが、年数が長かろうが短かろうが、仲が悪かろうが良かろうが、配偶者と死別したことで受ける悲しみが想像を絶するに値するという点では同じである。
心が悲しみに支配されると、まず何もできなくなる。食べることも、寝ることも、言葉を発することすらできなくなる。体の防衛反応なのかなんなのか、まるで何もできないのだ。ただただ、頭の中で、なんでこんなことになってしまったんだろう、どうしたらこの状況を避けれたのだろう、そんなことを考えては涙が溢れ出る。死別したこと以外何も考えられない。個人差があれど、そういう状況はある期間続く。そんな中、葬儀を取り仕切り、日々の生活を営まなければならない。そして、配偶者が死亡したことにより、やらなければならないことは山盛りある。ただでさえ、悲しみで心が弱り、判断力や処理能力が著しく低下しているので、ここは優先順位をつけてやるべきことをこなしていくことをオススメする。期限のないもの、しばらく放置しても問題なさそうなものには手をつけない。というのも、時間の経過とともに、少しづつ悲しみは和らぎ、脳も心も通常運転に近づいていくからだ。そのタイミングがきてから行なっても、何もお咎めがないものは、ただただその時を待つのが良いと思う。

まず最初に考えなければいけないのは、相続についてだ。相続するかしないか、この判断だけは死別から3ヶ月以内に下さなければならない。一般的には相続はする方向かと思うので、そういう方々はあまり心配はいらない。我が家の場合、旦那が以前会社を経営していたときの事業負債があり、会社を畳んだのち、その事業負債を個人負債として細々と返済していた。自営業の方、経営者の配偶者については、財産がかならずプラスであるとは限らないので、ここは早めに銀行に確認し、判断する必要がある。私は、旦那の遺産については相続放棄することにした。これについては、別途詳細をお伝えしようと思う。

死別することでやらなければならないことは、前項でも述べた通りだが、この一覧に期限を追記してみた。

<停止・解約・返納>
・亡くなった人名義の金融資産凍結(銀行口座や投資信託など)期限なし
・亡くなった人名義のクレジットカード解約 期限なし
・亡くなった人名義の運転免許証返納 期限なし
・亡くなった人名義のパスポート返納 期限なし
・亡くなった人名義の携帯電話解約 期限なし
・亡くなった人の雇用保険受給資格証の返還 1ヶ月以内
<名義変更>
・賃貸契約の名義変更・支払方法変更 期限なし
・子供達の保護者変更(保育園、小学校、学童)・支払方法変更 期限なし
・亡くなった人名義の自動車名義変更 期限なし
・亡くなった人所有の株式名義変更 期限なし
・亡くなった人名義の上下水道名義変更・支払方法変更 期限なし
・亡くなった人名義の電気・ガス名義変更・支払方法変更 期限なし
・亡くなった人名義で家族で利用しているネット関連サービスの名義変更(Amazon Prime, NetFlix, Hulu, Spotifyなどなど)期限なし
<支払>
・住民税の納税 
<もらえるお金の手続き>
・保険金請求 2年以内
・遺族年金請求 5年以内
・健康保険加入者の埋葬料請求 2年以内

これをみるとわかる通り、明確に期限がついていて、急がなければならないのは、遺産相続の決断と、雇用保険受給資格証の返還だけである。残りのものについては、期限の設定が長いかあるいは設定がない。とはいえ、例えば携帯電話の解約を行わなければ、その間基本料金は払い続けなければならないし、銀行口座を凍結しても尚、銀行引き落としの支払い方法を変更していなければ、支払いの督促が届く。保護者の変更手続きをしなければ、世帯年収が大幅にさがったにも関わらず、保育料も据え置きのままだ。もらえるお金にしても、早く手続きをすれば早くもらえるが、先延ばしにするともちろん支払いも先延ばしとなる。なので、これは本当に残されたものの置かれた立場や悲しみの度合い、周りにサポートしてくれる人がいるかどうかによって、自由に裁量すればよいと思う。

参考までに、私が辿った順をお伝えしようと思う。

1. 戸籍謄本をGetする
2. 雇用保険受給者証の返還
3. 遺族年金の詳細確認/手続き
4. 賃貸契約の契約者変更に必要な書類確認/手続き
5. 銀行に借入金の確認
6. 給食費の振替口座変更
7. 相続放棄申請
8. クレジットカード解約
9. 銀行口座凍結
10. 所有車両廃車

1. 戸籍謄本をGetする
死亡届を提出してから、戸籍が書き換わるのに1〜2週間を要するとのことで、死亡届提出から2週間経過してから取得することにした。出会った当初から住んでいた街を訪れ、旦那の死亡が記載されている書類を持ち帰る気力がなかったので、親友かつ同僚にお願いした。最初に5通取得してもらったが、そのあと追加で3通取得。戸籍謄本は、割といろんなところで求められるので、取得しづらい場合は最初に10通ほど取得しておいても良いかもしれません。

2. 雇用保険受給者証の返還
こちらは、旦那が勤務していた会社の総務の方のご厚意に甘えて、諸々お願い致しました。とはいえ、返還するにあたり、死亡を証明するものが必要となるので、こちらも戸籍謄本が必要。戸籍謄本の取得後、書類を送付し対応していただきました。

3. 遺族年金の詳細確認/手続き
遺族年金については、別項にて詳しく記述します。

4. 賃貸契約の契約者変更に必要な書類確認/手続き
賃貸契約を行なっている管理事務所に問い合わせて、必要な書類を聞き、書類が揃い次第手続きを行なった。うちは集合住宅に住んでいるので、旦那が遺体となって帰宅したとき、そして葬儀に向かう際、棺を載せるためエレベーターの隠し扉を開ける必要があった。その鍵を管理事務所に借りていたので、先方があらかじめ状況を理解しており、必要書類を準備してくれていたので、手続きは大変スムーズに行えた。

5. 銀行に借入金の確認
前述の通り、旦那には事業負債があり、それを返済していた。その残額がどうなのか、旦那が亡くなったことによってPayされるのかどうなのか、その辺をまず銀行に確認しにいった。この辺については、別項にて詳しく記述します。

6. 給食費の振替口座変更
市役所の保育課にて、保育料や学童費の振替口座は変更が行えたのだが、小学校の学校給食費については、別途学校とのやりとりが必要となった。息子の連絡帳で、振替口座変更したいと連絡すると、担当の先生からすぐにお電話をいただき、口座振替用紙をもらうことができた。

7. 相続放棄申請
千葉県の家庭裁判所に電話をかけ、管轄の家庭裁判所を教えてもらい、直接裁判所へ出向いた。そこでは、相続放棄に必要な申請書類をもらい、書き方や今後の流れについて説明を受けた。裁判所の方はとても親切に教えてくださるので、不安なことがある場合は直接出向くことをオススメする。
相続放棄に必要な書類を揃え、家庭裁判所に提出。問題がなければ1ヶ月ほどで受理される、と聞いていたが、提出から3週間をまたずして受理の通知が届いた。相続放棄をする場合、状況確認などで裁判官から電話がある可能性がある、と弁護士の先生に聞いていたのだが、今回はそういった確認事項はなく、書類を提出しただけで、法的に私と子供達の相続放棄が認められた。
ちなみに、配偶者と子供達が相続を廃棄すると、次の相続権は父母にわたり、続いて兄弟・姉妹にわたることとなる。相続放棄受理の通知を受けて、父母の相続放棄、旦那の妹家族の相続放棄を行うと、旦那の負債を含む財産は誰からも相続されないものとなる。そのあとはどうなるのか、現時点ではわからないので、また状況が変わって何かわかったことがあれば、追記しようと思う。


8. クレジットカード解約
長年お世話になった旦那名義のANAゴールドカード、DCゴールドカード、Amexを解約した。クレジットカードの解約は電話をかけるだけで比較的簡単にできる。注意したいのは、債務残だ。我々の場合、相続放棄することにきめたので、クレジットカードの債務残に対して支払いは行わない。ここで支払いを行うと、旦那の遺産を相続する意思があるとみなされるとのこと。ちなみに、クレジットカード解約時には、すでに各方面の支払い方法を私のクレジットカードに切り替えており、債務残はほとんどない状態であった。


9. 銀行口座凍結
旦那がメインでつかっていたみずほ銀行に連絡し、口座凍結した。もちろん、相続放棄するため、口座に残っていたお金が私たちの手元にくることはない。銀行口座凍結に関しては、別途詳細をお伝えしようと思う。


10. 所有車両廃車
相続放棄に伴い、自家用車も手放さなければならない。車屋で見積もりを出してもらったところ、0円(価値なし)とのことだったので、廃車処分とすることにした。これは現在進行中なので、また別途追記しようと思う。

ざっとこんな感じです。旦那がなくなって3ヶ月経過しましたが、まだまだ進行中のものもあります。一つづつの作業は難しいものではないのですが、悲しみに打ちひしがれているときは、その難しくない手続きですら、重荷に感じるものです。ひとつづつ、彼の生きてきた形跡を消していく作業は、なんともいえない淋しさを伴うのも事実です。もし、私のような状況に陥った場合、こういった手続きを行うときには誰かに寄り添ってもらってください。時間がたてば、一人でできることも増えてきます。でも無理はせずに、頼ることも大事です。ただでさえ、配偶者と死別という、ライフイベントでうける最大のストレスを受けているのですから。

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