8. 銀行への連絡は後回しにするべき理由と注意事項

身近な人が亡くなった時、まず最初にやらなければならないこととして、銀行への連絡があげられる。銀行は、銀行口座の名義人が死亡した際、口座を凍結して、名義人の資産を守る義務がある。よって、銀行は名義人死亡の連絡を受けると、その銀行に登録されている全ての口座を凍結する。口座が凍結されると、その口座で行われる全ての取引がストップされる。毎月の決まった引き落としもされない。出金もできなければ入金もできなくなる。亡くなった家族名義の口座を、生活費のメイン口座としている場合は、口座凍結によって然るべき支払いが行われなくなるので注意が必要である。

前述の通り、配偶者と死別すると、その悲しみによりしばらくは思考回路はもちろん、日常生活ですら満足に送れない状態になる。口座凍結によって支払いが滞ると、その都度連絡がきて、その都度支払いと支払い先変更の手続きをすることになる。それらをできるだけの強靭な精神力を備えているか、あるいはそこをちゃんとサポートしてくれる人がいる場合は、亡くなった直後に銀行に連絡するのもひとつだと思う。しかし、そう簡単ではない。徐々に手続きを進めたいのであれば、銀行への連絡は後回しにするべきである。

ここで一つ注意したいのは、預金の引き出しである。相続の観点から、名義人が死亡してから口座を凍結するまでの間に行われた預貯金の引き出しは、名義人の資産を守るという銀行の義務からすると、たとえ生計を共にする親族であっても、行なってはならないことになっている。名義人の遺産相続をする場合であっても同じだ。もし、名義人が死亡してから講座を凍結するまでの間に、家族が預貯金を引き出していた場合、その預貯金は口座凍結時に銀行に戻さなければならないことがあるという。また、私のように相続放棄をする場合、名義人の預貯金を引き出すという行為は絶対にしてはいけない。預貯金を引き出す、すなわち、名義人の遺産を使うと、遺産相続の意思があるとみなされるため、その後相続放棄の手続きができなくなるからだ。

ちなみに、銀行口座の凍結は比較的簡単にできる。口座を持っている銀行に電話をかけ、口座名義人の名前を生年月日を伝えるだけだ。名義人が死亡した事実と生年月日を知っている人であれば、家族以外の人でも口座を凍結することができる。銀行同士はこのような情報提供は行なっておらず、また、死亡届を出したからといって銀行に連絡がいくようなシステムも存在しない。今の時代、一人の人がいくつも銀行口座をもっていることはよくあることで、また同一銀行であっても支店違いで口座を保有していることもある。都市銀行の場合、口座凍結の申し出を行うと、傘下のグループ銀行の口座もストップしてくれる。

これまでの話をまとめると

・死亡届を出したからといって、勝手に銀行口座が凍結されるわけではない
・銀行口座の凍結は、電話1本で簡単にできる
・銀行口座を凍結すると、引き落とし・入金・出金すべてできなくなる
・預貯金を出金すると、あとでややこしいことになる
・相続放棄をする人は特に注意。
・死んだからといってすぐに凍結する必要はない
・諸々準備が整ってから銀行へ連絡しよう

私の旦那は、お金を借りていた銀行と、生活に使うメインの銀行は別だった。まずは負債金額を確認するために、その銀行の窓口に出向き、事情を説明した。窓口のお姉さんは、ご自身も結婚して子供をお持ちということで、旦那の亡くなった経緯を話すと、大粒の涙をポロポロ流した。その後、融資課の担当がぞろぞろとでてきたのだが、この人たちの対応が、もう、なんていうか、クソでした(失礼)。

まず最初に、”相続しますか”と聞かれたので、”相続するかどうかはまだ決めていません。負債額がどれくらいかがわからないと、決められないので”というと、”まずは相続するかどうか決めてください”と。
バカですか?!判断材料をもらいにいってるのに、判断材料もくれずに判断しろと。相続するにしろ、相続放棄するにしろ、色々書類があるの、それをお送りします、と。私としては、生前旦那が、”もし俺が死んだら、この借金は返さなくてもよくなるから”っていっていたことがあったので、もしかしたら住宅ローンのように、死亡したことで借金がチャラになるんじゃないかなぁって甘い気持ちがあってわざわざ銀行の窓口に出向いたのに、この対応なんですか?!もちろん、死亡したことでそういう保証とかがあるのかどうか、も確認したのですが、”さぁ、そういうの聞いたことないですけど”って言われただけでした。ふつふつと湧き上がる怒りをグッと抑えて、負債額とそれがチャラになるのかならないのかを、書類を送るときにあわせて教えてください、と銀行を後にした。

その後、弁護士の先生にお会いしてこの話をすると、”あー、それはひどいですね。なんとしても払わそうとしてるんですかね。ひどい、ひどい。でもそんな話が通るわけないので、もし可能なら、次回はその銀行でちゃんと対面で担当者とあって話をすること。その内容はボイスレコーダーにおさめたほうがいいね”と助言をいただいた。

最初にその銀行を訪れてから、3週間経って、ようやく銀行から連絡があった。ただし、書類がメールに添付されてきただけであった。すぐに電話をかけて、負債額とそれがチャラになるかどうかについて回答ください、と話すと、またあらためて連絡します、と。え?!そんなに確認に時間かかります???都市銀行ですよね?!その銀行で働いている方、それなりに良い大学出ているスマートな方々ですよね?!年収もそこそこもらってますよね?!しかも、諸々管理するシステム入ってますよね?!
開いた口が塞がらないってこういうことをいうんですね。。。余談ですが、私は本業ヘッドハンターでして、最近はM&A人材で結構銀行勤めの方もヘッドハントしているのですが、金輪際この銀行に勤めてる人はヘッドハントしないと心に決めました。レベル低すぎる。

その後、すぐ連絡があり、銀行にいって話を聞くことになった。ボイスレコーダーを仕込んで、話を聞いたところ、負債額があきらかになり、また、死亡したことでこの負債がなくならないということもわかった。そこで初めて、この度相続放棄をしようと決めた。旦那が亡くなってから、1ヶ月半が経過していた。前述の通り、相続放棄は、亡くなってから3ヶ月以内に申し出なければならない。3ヶ月という期限があるのは、こういった銀行の不親切な対応を見越してのことなのかもしれない。時間はかかったが、ちゃんと負債額も保証がないことも確認でき、無事に相続放棄の決断をし、亡くなってから2ヶ月がすぎたころ、無事に千葉の家庭裁判所の相続放棄の申し立てをすることができた。

実は、これを書いている時点で、もう一つメインで使っていた銀行にはまだ亡くなったことは連絡していない。引き落とし先の変更も、クレジットカードの切り替えも終えて、あとは連絡するだけなので、もうそろそろ連絡してもいいのだが、彼がメインで使っていた銀行口座を凍結するのは、なんとも言えない寂しさを伴い、なかなか踏ん切りがつかない。少し元気なときに、電話をしてみようと思う。

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