見出し画像

放浪する大人

御先真っ暗。暗夜行路。あの小説の主人公も結局は兄貴は良いところの会社に勤めて、自分はのらりくらり放浪…女と遊んで酒飲んでグデングデンになってぶっ倒れる様に眠る。
こちら油まみれのゴミ溜めから、虫が飛んでは頬をすり抜けて羽音が耳に侵入してくる肉の破片の掃除。近所で異臭騒ぎからの死体発見といった一連のニュースのまず出発点になりそうな匂いがする場所でバイトをしている。バイトならばと簡単に辞めて仕舞えばいいかと思ったが、もう一度面接に応募して合否に空っ風で吹き飛ぶ様な身体を曝すのはあまりにも耐え難い苦痛だと思い、今のバイトになんとかしがみついている。
それももう四ヶ月が経過した。冬ももうすぐ溶け始める。春がやってきて、また一年が過ぎ去っていく。今年22歳だ。変わらずに終わるだろう。変えようと思うだけ思って満足しては、明日を憂いて、なんとなく眠り、重い身体にお情けみたいな服を着て電車に乗って、ある目的まで行く。そこでの時間を成るだけ有意義に使う努力をして、また電車に乗って、かのバイト先に向かう。暗澹と生活。どこに希望がある。同じ時間に乗り合わせる人々の顔横にまた顔があったりする。数ヶ月後には二つが一つになっているかもしれない。そんな二人である。俺の横は大抵一人か二人分の空間が空いている。そんな日が指折りに数えると、自分が人間だったことを思い出す。話は変わって、ある夕暮れがあった。透明な空に金色の月が浮かんでいた。その下を私はいつもの様に歩いていた。音楽を聴きながら、もう既存の曲ばかりを聴いていた。今パッと浮かんだアーティストだとカネコアヤノ。多分その日も聴いていた。
花壇に咲いていた花に目が止まった。青いチューリップだった。というと季節は春だ。春なのだ。そこに蜂が飛んできた。私は少しだけ警戒して、家々の方へと左足を向けた。風が吹いた。何処かで洗濯物が揺れた。後方から鉄っぽい悲鳴が聞こえた。振り返るともう一本チューリップが咲いていた。赤だった。夕暮れが当たって綺麗だった。思い出しただけだが、もう数ヶ月前のことだ。書きながら思った。やっぱり文章を書く力がない。
レポートの提出があった。評価は最低ラインの二点上だった。お情けだった。まあそういうことだ。底辺の人間。こんな大人になりたくなかった。

毎日マックポテト食べたいです