見出し画像

枯れた人

一階にある食洗機から音が鳴ったのを聞いた。
丁度四百字詰の原稿用紙の人マス目にペンを置いた時だった。ペン先から赤いインクが垂れていた。頭の中から垂れた。集中力が空っぽになった。

頭の上には蛍光灯があった。目を凝らしてみるとぼんやりと蒼く光っていった。右手で目を擦ると黒い点が浮かんだ。椅子から立ち上がって、腰に掛かった負担を地面に逃がすために背伸びをした。蛍光灯を覆うカバーの中に虫が死んでいた。
季節は夏だった。それも終わりかけの。

僕は誘蛾灯に群がる蟲のように、遠くに見える光の方へと歩いていた。
まあ、明日から始めよう。今日はいいよ、それはそれで、帰って何しようか。
映画でも見ようかな。武さんの映画見直そうかな。新作あるし、それか買ったけど観てない映画もあるしな。

蛍光灯の下、僕は考えた。
そして階段を降りて、トイレに行った。
便器の水に自分を溶かして混ぜた。手を洗って鏡を見たら僕がいた。

水を飲んだ。それから吐いた。吐いたから、また飲んだ、それからまた吐いた。冷蔵庫を覗いた。なにもなかった。あるのは嫌いなチョコレートが一枚だけだった。

毎日マックポテト食べたいです