見出し画像

月の爆撃

街頭に止まった月からの爆撃によって僕の頭が可笑しくなった。僕の顔の上半分はプリンみたいな色合いになっているだろうし、下半分は昔からの色合いだけど鏡を見たらぎょっとしてしまうかもしれない。僕は考えることができない。なんたって爆撃されたから。頭が可笑しくなった。話しは出来る。幸い。僕は歩いている。ところでここはどこだろう。

砂浜に足が埋まった。
波が砂をどけて泡吹いている。
干からびた海藻がある。僕はそれを拾い上げて、遠くの海岸線にぶん投げた。海藻は空中で粉々にくだけちった。風に吹かれて見えなくなった。オレンジ色の光がぱらぱらと目の前でちった。波の音が足元で跳ねてきえた。目の下に白い足が見えた。
靴をはいてなくてよかった。

僕は足を乾かした。コンクリートの上に立って冷たくなった足に右手を滑らせた。親指にしわが刻まれていた。
靴を履いて、立ち上がる。
お尻についた僅かな砂を払い除ける。
まだ砂浜には人が疎らに立っていて、みんな暮れていく太陽を眺めている。
遠く感じる。一日が今日も終わる。

閑静な住宅街が好きな猫と歩いている。隣にいるのはどうてことない猫で僕はそんな何処にでもいるような猫が友達なんだ。話しはできないけど、少なくとも心では繋がっているような気がするので心地がいい。猫はたまにしかなかない。鳴くときは決まってお腹が空いたときで、僕はその度にニュールをあげている。多分だけど気に入ってくれていると思う。

僕は猫とわかれてひとりになる。結局は猫なんて気まぐれな生き物だから引き留める方法がない。無理矢理なんて僕にはできそうにない。

砂利を踏んで音を鳴らし背後に痕跡を残しながら道なりに歩いていく。ここは何処だろう。何をしているのだろう。そんな問いかけを十二回繰り返した辺りで立ち止まった。

月が出ていた。街頭の上に添えられたみたいに。
もう僕にはやることがなかったので、道端の壁に寄りかかって眺めた。
月の裏側。月を見ている。月が見ている。ぼんやりとした光を放ちながらこちらを見ている。
僕は歩いている。靴はしっかりはいている。頭のなかに月がある。

僕は猫と歩いている。
「ねこさんはいつもなにをして時間をすりつぶしているの?」
「僕の場合だけどね。とにかく寝ることに尽きるね。これ以上の回答はないよ。」僕の跳ばす砂利を避けながらねこさんは言う。
「あとは月が好きなんだ。あの怪しげな光をじっと見つめる。すると不思議と膨らんだえもいわれぬ気持ちが内側で輪郭を持ち始める。それを感じて時間を潰して寝るのがいいね。自分との対話が出来るし、結構癖になる。」
「ずいぶんと変な趣味だね、ねこさん
。」

頭が可笑しくなった

毎日マックポテト食べたいです