米軍機を撮影したくて父をラブホに誘ったら、まさかの撮れ高だった
「横田基地の近くにマニアックなラブホテルがあるらしい」
新手の誘い文句か何かだと思ったのだが……調べてみると本当にあった。
そこは、東京都福生市の在日米空軍横田基地および航空自衛隊横田基地すぐ近くにある、いわゆるラブホテル。何がマニアックなのかというと、米軍基地内の滑走路がホテルの部屋から一望できるのだという。
在日米軍や自衛隊の基地内部は基本的に一般公開されておらず、気軽に中を覗けない。そもそも基地周辺はフェンスや外壁で囲まれている。ところが、このラブホの窓からは、そんな謎のベールに包まれた基地内の滑走路がとてもよく見えるのだという。
滑走路が見えるということは……
米軍機が見えるということだ。
「それがどうした?」と普通の人は思うだろう。しかし、私のような飛行機好きからしたら、とんでもなくそそられる謳い文句だ。飛行機好き……特に軍用機好きからしたらなおさら。
生きているうちにぜひ行ってみたいスポットのひとつなのだが、この聖地を巡礼するには「ラブホテルに入る」という、まあまあ精神的にきついハードルを乗り越える必要がある。
カップルや夫婦なら何てことないが、私のような既婚アラフォー女となると、なかなか厳しいものがあるではないか。
とはいえ、ホテルがいつまでもそこに建っているかわからないし、私がいつまで日帰りで東京(それも福生市くんだりまで)に行ける場所に住んでいるかもわからない。
思い立ったが吉日。とある夏の日、私はひとりで「リゾートタワーホテル ラフェスタ横田」を目指した。
横田基地へのアクセス
横田基地は、JR青梅線の牛浜駅から徒歩約10分、または拝島駅(青梅線・西武・八高線)から徒歩で約20分に位置するという。
東京都とはいえ都心の新宿駅から約50分かかる場所で、何かのついでに行ける所ではない。調べてみると我が家の最寄り駅から電車で片道約2時間を要することが判明した。
噂のラブホはどんなラブホ?
「リゾートタワーホテル ラフェスタ横田」は、横田基地の滑走路にほぼ隣接している。そんなホテルについて調べると……
まったくもって普通のごく一般的なラブホテルだった。
飛行機オタク向けにラブホ感をマイルドにしてあったり、装飾が控えてあったりするわけではない。普通のそういうラブホっぽいラブホだった。
ただし、公式ツイッターを覗いてみると1名入室および同性入室がOKと記載あり。
同公式Twitterではアメリカから飛来してきた飛行機の画像や動画をたびたび紹介しているので、噂通り飛行機好きへの周知アピールもしっかり行っている模様。
かっこいいなあ……F-15戦闘機。これを見たらしり込みしていた気持ちが前向きに復活した。ひとりで堂々乗り込もうではないか。
潜入! ラブホの内部はどんな?
ホテルの前に、まずは横田基地を見学。
……と言っても中に入れるわけではないので、門の前をさっと通りすがる。
訪れたのは7月。若干雨がパラついている上ジメジメして不快な天気だった。
この日は休日だったが、基地近辺は人通りが少なく静かだ。
やっとホテルに辿り着いた時にはお昼近くになっていた。ここまで所要時間約2時間半。りっぱな遠征だ。
ところで、ラブホと無縁な日々を送っていたため失念していたが、もしや休日の昼間って混雑時なのでは? ここまで遠征して来たのに入れなかったらどうしよう。自分の計画性の無さを呪った。
入口にたどり着くと、まさにラブホだった。出入口が巧妙にガードされていて人の出入りが見られにくい造りになっている、あのラブホだ。
中に入ると、例のアレ、タッチパネル式の部屋チョイスマシンがある。
幸いにして部屋には空きがあった。しかも、飛行機がよく見えるという上層階8階が空いていた。お値段は土日フリータイム料金で7,600円也。
普段絶対見ることができない米軍機を特等席で見られるなら全然高くないだろう。
待てど暮らせど
部屋に到着し、期待に胸を膨らませて中に入ると……
噂どおり窓一面に基地内部が見渡せて、滑走路もばっちり見えた!
そして、窓の目の前には米空軍の大型輸送機C-5 ギャラクシーが駐機していた。
これはめちゃくちゃテンション上がる!
窓から外を見渡せば、なるほど滑走路が一望できる。右手にはさらに多くの米軍機が駐機してあるではないか!
私は興奮しながらシャッターを切りまくった。
ところが、
駐機中の航空機を撮影してしまうと、その後は全く動きがない。ここまで所要時間10分たらず。
ベッドサイドに腰を下ろし、何かほかの機体が飛んでこないか、今いる機体が動き出さないか、待つこと1時間……。
まったく動きなし。
窓の外は一切動きなし。基地内の飛行機はおろか、人っ子ひとり動きなしだ。
それからさらに1時間ほど粘ったが……
驚くほど何の動きもなかった。
米軍も土日は休日だった
暇なのでTwitterや個人ブログを検索して情報を集めた結果、わかったのは……
土日祝日は基本的に動きがないということ。
考えてみればそうだ。米軍にも自衛隊にも休日はある。緊急事態が発生すれば関係なく活動するだろうが、通常の訓練は土日に行わないのだ。
情報によると、休日でも戦闘機などが離陸、着陸することがあるが、あくまでレアケースとのこと。
そのレアケースを祈ってもう少し滞在することも考えたが、その日はもう何も起こらない気がしたのでそのままとぼとぼとホテルを後にした。
どうりで心なしか基地内が静まり返っているように感じたわけだ(気のせい?)。駐機している飛行機ばかりで、ただの1機も飛んでないわけだ。
父をラブホに誘う
もっと入念に情報を集めてから行動すべきだった。
それからしばらくTwitterを中心に横田基地の飛行機事情をチェックする日々を送っていたところ、ある日F-35という米軍の戦闘機が横田基地に来ているという情報をゲットした。
F-35は最新のステルス戦闘機だ。日本の航空自衛隊も保有しているが、青森県の三沢基地に所属しており、気軽に行ける距離ではない。ここ数年はコロナの影響で航空祭が中止になっているので、私は実物を見たことがない。
これは、行くべきだろう。
問題は、私のモチベーションが低下気味であることだ。前回ひとりで電車と徒歩で往復5時間かけて行ったところ、心と身体が想像以上にくたびれてしまったのだ。
誰か平日暇にしている&車を出してくれる人はいないものだろうか?
考えた結果……
父親(定年退職のち現在無職)を誘った。
その結果……
ホテルは断固拒否された。
当たり前だろう。
とりあえず車は出してくれることになったので、行ってから基地近くで撮影できるポイントを探してみることに。
激レア!グローバルホークあらわる
当日は前回と打って変わって超快晴の猛暑だった。情報によるとF-35はまだ横田基地に留まっているとのこと。
父の運転で高速を爽快に飛ばして横田に向かう。なぜ父を誘ったのかというと、父も飛行機が好きだからだ。
ちなみにこの父、運転手兼話し相手になってくれれば……というつもりで誘ったものの、実際はすばらしい戦力になった。いや、私がポンコツすぎるのだが。詳細を下記でお伝えする。
横田基地周辺に近づくと、さっそく頭上に大きなプロペラ音が響いた。
慌ててカメラを構えると、前回は遠目に「オスプレ・・・イ?」程度にしか見えなかった航空機CV-22 オスプレイが飛んでくるのが見えた。
本当に横田基地周辺の日常にはオスプレイがあるんだなあと思った。
父は地図で滑走路の位置と今飛んできたオスプレイが向かう方向を確認するや、
父「滑走路って何本あるの?」
私「えっと、『18』と『36』というのがあるらしい。ということは2本かな」
父「……それは1本だよ。滑走路の南側を「18」(180度)、北側を「36」(360度)と呼ぶのよ。その日の風向きなんかによって離陸と着陸をどっち側からするか決まってるんだ。お前はそんなことも知らないのか?」
知らなかったー。
とにかく、その日は18側から離着陸するようだったので滑走路近くの公園で着陸してくるところをとらえようと的確に指示する父。頼りになるー。
公園で待つこと数分、先ほどのオスプレイが旋回して降りてくるのが見えた。
ばっちり撮影できた。
そうこうするうちに別の機体が飛んでくる気配を察知。カメラを構えると、C-130という輸送機が現れた。これも前回基地で見たが1ミリも動かなかったやつだ。
左右に翼を振りながら低空で旋回して降りてくる。
夢中で撮影する私の隣では、父が低空で旋回する操縦の難しさを力説していた。
へーーー。
次にやってきたのは、無人機RQ-4グローバルホークだ。無人航空機も生まれて初めて見た!しかも飛んでいるところを……。これはかなりレアなのではないだろうか?
F-35はどうなった?
なんだかもう、満足してしまった。ちょうど正午に差し掛かったのでランチタイムとすることに。
ところで今回の目的はF-35戦闘機を見ることだ。今のところ飛び立ったという情報は入っていないので現在も横田基地にいるはず。せっかく来たのでできればF-35が駐機しているところだけでも見たかったのだが……
基地の周辺で見えそうなところを探してみるも、結局F-35をみることができないまま、次の予定によってタイムオーバーになってしまった。
心残りではあるが、今回は飛んでいる米軍機が複数見えたので満足だった。
今年からは航空自衛隊の航空祭も再開していることだし、航空機ファンとしてもっと情報集めを入念に行い、素敵な写真をたくさん撮れるように精進しようと決めた!