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シルク博物館@日本大通り駅

山下公園へ向かう途中「シルクセンター」なる文字が目に飛び込んできました。
これは絶対に、着物関連に違いない👘
夫と息子も「いいよー」と言ってくれたので、寄ることにしました。

いでたちは、パッと有楽町の交通会館を思い出すような昭和~という感じ。
開館中にもかかわらず、階段には誰もいないし、薄暗くて不安をあおる感じ。

くるっと振り向くと、中2階という感じで入り口がありました。
謎のつくり…

そして、入ってさらに不安になるような感じ。

でも、本当に行って良かったのでそれを記したいと思います。


まず、昭和にタイムスリップしたかのような薄暗いミュージアムショップを通って受付についたので、この時点で500円の入館料を払って見学する気が失せていました。

でも、すでに夫が払っていました…着物割引きで、私は300円。

機織り機体験


腹をくくって中に入ると、機織り機がお出迎え。
私、人生初の機織り体験です。

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めちゃくちゃ楽しい‼ 絶対、秩父の銘仙館に申し込む‼とさらに強く決意

着物やネクタイなど絹製品に繭がどれだけ使われているかの展示


清涼飲料水にこれだけ角砂糖が入っている!という展示を見た子供の頃、大好きなミルクティにこんなに砂糖が…とドン引きしたものですが、繭展示はその比ではありません…

機織り体験と、この繭の使用数が一目でわかる展示で、心の底から来てよかったと思いました。

私は、着物は着物の形として着たい派の者です。
もしくは、着物関連(着物→帯や羽織とか繰り回したり、傷んだから使えるところをリメイクするなど)。

それは数年前に富岡製糸場で「蛹は生きたまま丸茹で」「家蚕はただ卵を産むためだけに羽化し、飛べもしないしご飯も食べられない」という衝撃の事実に眩暈がし、お蚕様を祀る神社やお社に複雑な思いを抱いた時の感情からです。
私は蚕の飼育など行っていない小中学校に通っていたため、蚕について知ったのは大人になってからであり、その衝撃たるや相当のものでした。

蚕から命をもらって絹をつくるということは、どんなに言葉をぼかしても美しくしても蚕を殺すということであり、残酷か否かでいうと、確実に残酷です。
でも、私は絹が大好き。
この矛盾した感情。
そしてすでに何千年も、養蚕の歴史はある。

着物は洋服と違って、布地のほとんどを使い切って仕立てるといいます。
(洋服は立体的なので2割前後無駄が出るとのこと)
そして、徹底的に使いまわし、現在は廃れているのでしょうが、最後は灰にしてもその灰までも洗濯に使うといいます。
(強アルカリってこと?)

仕立てに無駄がほとんどない着物の形というのは、蚕に対する感謝と「ごめんね、でも無駄にはしないからね」という申し訳ない気持ちが表れているのだと思います。
だから、何回か着たら捨てる、破れちゃったから捨てるというのは私には合わない考え方です。
文句も言わず殺されていった蚕たちの犠牲が、「繭の使用量」展示によって更に可視化されました…
この量を見たら、大事に着よう、繰り回そうという気持ちに自然となります。

生きている蚕の展示もありました。
作りものだと思ったら、微妙に動いている。
そして、桑の葉ではなくって、抹茶色の人工飼料に群がって一生懸命食べていました。
私はあんまりウゾウゾ動く芋虫が得意ではないなのですが、蚕だけは可愛いと思ってしまいます。
蛾も、あんまり…というより、むしろ「ヒィ」と思ってしまいますが、蚕は羽化した後もふわふわしたぬいぐるみみたいで、可愛い。

蚕の歴史は辿っていくと5000年も前まで遡れるというので、DNAにポジティブな感情が組み込まれているのかもしれません。


上階に上がると、日本の絹衣の歴史と、素晴らしいお着物の展示がありました。まずは、江戸時代の芸術のようなお着物。

江戸時代の振袖

衣服としての寿命は尽きているので、資料としての展示です。
骨董市でも、触った瞬間ホロホロ崩れてしまう着物(紅絹とか)を見ることがあるので、展示や保管は本当に大変だろうなと思います。
もううっとり。
いつまでも眺めていられそう。

時代ごとの展示

それぞれの時代の等身大の人形に、しっかりと着付けてあります。
絹を着ることが出来たのは貴族階級以上だったからなのか、人形も顔立ちが高貴でした。
古代はむしろ、現代っぽい。
髪型は置いておいて、こういったファッションの人は割と見かける気がする。
ざっくりとした素朴な感じとか。

飛鳥時代

天女系。こういった感じも良いなぁと思う。

奈良時代

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天女進化系。

平安時代

まさに旬(私は今、大河”光る君へ”にドはまり中)。

鎌倉時代

私は水干や虫垂が好き。旅装束、可愛いけど歩きにくそうだな…

室町時代

女性の、まだ帯というより紐っぽくて装飾というより実用一本主義で、ワンピースみたいにヒラッと開いてるところとか可愛い。

江戸時代

染色や加工技術が進化して、一気に豪華に!気の遠くなるような、手絞り。

町方の女房の帯は、引き抜き結びなのかしら。
帯揚げも帯締めもないから、位置も低め。
(骨盤で支えてるのかしら?)

「おはしょりというのはね、仮の姿よ。昔は室内では引きずっていたのよ。はしょるっていうことは、仮の姿よ」「毎日はしょってるって、変じゃありません?もともとの着付けには最初から、腰紐はなかったのよ。裾をひいて、というのが着物の本来の形。それを、こんな風に裾をあげて歩くのよ」

篠田桃紅(「きものが欲しい!」群ようこ の対談部分より)

篠田桃紅の言葉を思い出しました。
やっぱり、お引きずりの形は美しいなと思う。

もう、おはしょりがあるのが当たり前になってから結構経つ時代なのだけど、改めて目の前にお引きずりの形が現れると、目を奪われてしまいます。

明治・大正時代

一番ときめいたかも。
刺繍たっぷりのふっくらとした半襟がたまらん。
池田重子の世界。

へばりついて帯を見ましたが、結び方までは見えませんでした。
残念。
絞りの帯揚げ、良いなぁ。
ヤ●オクとかで安いし、買ってみようかな?
それにしても、大変荷物が少ない。
この時代、外出といってもそんなに遠方までは行かないだろうし、大きな荷物はお手伝いさんに持ってもらっていただろうから、袋物も小さくて良かったのでしょうか。

反物の展示では、つい最近NHKオンデマンドで「真田丸」を視聴し終わったあとだったので、上田紬にときめきました。
父上の奨励した織物。その息子の幸村は真田紐を考案したわけで、親子2代で現代でもすっかり定着したものにかかわっていてすごいな。

話逸れましたが、私が熱心に着物を観察している最中、夫と息子は隅っこで映像を見ていました。
蚕をキャラ化した「まゆるん」が可愛く色々説明してくれているのだけど、にこにこ笑ってる場合じゃないだろう!と言いたいシーン(まるゆん的に)もあり。

着物だけでなく、世界の絹を使用した民族衣装も展示されていました。
インドのサリーは色鮮やかできらびやかで、たーっぷりの布地を用いていあるから豪華な感じ。

土曜の午後でも来館者はとても少なく、我々家族を除くと、高校生と思われる男子3人組のみでした。
最初は入るのに戸惑いもあったのは事実ですが、実に素敵な博物館でした。

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