『連ちゃんパパ』ありま猛

道徳の教科書に載せるべき

妻が家出、そして残った借金!!息子と二人で妻を探して日本中を探し歩く。借金取りと3人の歪なトリオの放浪記!!
連ちゃんパパ【合冊版】(1) (ヤング宣言)

ものすごい漫画を読んでしまった。途中でやめられなくて、睡眠時間を削って一気に読んだ。
この世には「面白いけど絶対に手元に置いておきたくない漫画」が存在する。
『ヤミ金ウシジマ君』『座敷女』『殺し屋1』…
『連ちゃんパパ』も文句なしに面白かったが、単行本が見つけても絶対に買わないと思う。今ならwebで全話公開されてるので、パチンコ好きな人もそうでない人も興味があったら読んでみてほしい。
妻に逃げられ、多額の借金を肩代わりさせられそうになった主人公が日銭をパチンコで稼ぎながら息子と一緒に妻の行方を追う。
というのが導入で、それをきっかけにパチンコにハマってしまった主人公の鬼畜ぶりを克明に描いた作品となっている。
ほのぼのとした愛嬌のある画風とキャラを突き放した容赦ない展開のギャップが怖い。
妻がパチンコに狂って貯金全部使い込んで借金を作り、子どもと自分を置いてほかの男と駆け落ちする、という主人公の不幸ぶりに同情させてから、その後のパチンコに取り憑かれた主人公の豹変ぶりが凄まじい。

債務者の子どもが学校でいじめられるように仕向ける。
借金の取り立てで債務者を自殺未遂まで追い込む。
親から紹介してもらった職場をばっくれる。
息子の担任をレ○プする。
親権と引き換えに息子を300万で売る。
ヤクザと組んでバイト先の弁当屋を破滅させる。

逃げた妻と主人公がとにかくダントツで人間性やばいんだけど、目を背けたくなるような邪悪さに不思議と引き込まれてしまう。
パチンコを知る前の主人公は高校教師で真っ当な人間だったのに、底が見えないくらい落ちぶれていく。
中盤からの行動は明らかに常軌を逸して邪悪なんだけど、あまりにもストレートに「人間のクズ」を体現してて笑うしかない。人間のモラルから解放されたパチンコのためのモンスターになる。
唯一の癒しは主人公の息子と金貸しヤクザくらいだった。この人たちがいなかったら主人公は金のために人とか平気で殺してそう。

おすすめエピソード

4話
主人公と逃げた妻がついに対面する回。作者の容赦なさを初めて実感した話。ものすごく胸糞悪くて、よくこんな話描けるなと思った。この話を読んでから扉絵を見返すと泣ける。
8話
主人公が意外な才能に目覚めて、お金を稼ぐ回。ある意味パチンコを離れて主人公が社会と関わる場面なんだけど、クズ過ぎて思わず笑ってしまった。長年教員をやっていた人間とは思えない行動に出る。ヤクザが躊躇する追い込み方をアクセル全開で行える主人公に引く。
28話
主人公がヤクザとフィリピン旅行に行く回。ドタバタコメディと思いきや、めっちゃキツい話だった。ラストのコマに至るまでの演出が映画みたいでかっこいい。最後に全部持ってかれた。主人公の人間関係を根底から揺るがすエピソード。

作中のニュースが大概悪い知らせなので、テレビと新聞が死亡フラグになってるのが面白い。
話の途中で、家庭環境の荒み具合に息子が一時的に何も喋らなくなるけど、その様子が「自閉症」と言われてて気になった。どちらかと言えばノイローゼとか鬱だと思う。

更生するフラグをことごとくへし折って、途中から更生が破滅へのフラグみたいになる。救いがたい人物だが、本人が一切自他を省みずパチンコに没頭し続けるので清々しく見えてしまう。ぜひ、主人公の生きざまを最後まで見届けてほしい。

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