『ホワイトアルバム』安達哲

安達哲の初連載

「かったりーよなァこれから懲役3年だぜ」
同じ学校で偶然出合った高校生達が織りなすそれぞれの物語──安達哲鮮烈のデビュー作。
ホワイトアルバム (週刊少年マガジンコミックス)


唐突に読みたくなった。
安達哲のデビュー作からの初期3作品(『ホワイトアルバム』、『キラキラ!』、『さくらの唄』)はどれも青春モノとしてのクオリティが神がかっていて素晴らしい。3作品の中だと『さくらの唄』ばかり取り上げられがちだけど全部すごいからね。
この青春三部作を読むたびに、安達哲は本当に非凡な才能を持った作家だなと思う。
青春モノというのは思春期真っ只中にいる少年少女の心情を描いた作品ってことなんだけど、何回読んでも読み終わったあとに心に穴が空いたような気持ちになる。
どんなに歳を取ったとしても、安達哲の漫画を読むことで自分が10代だった時を思い出せる。万人の心をぶっ刺す青春感を表現する描写力とでも言うんだろうか。
ただ若さで突っ走っただけで描いただけとも違う。魔法のように「あの頃」の空気を作品に閉じ込めている。キラキラした部分だけじゃないやるせなさとか鬱屈した気持ちまで。
特に安達哲節というべき青臭いモノローグは一見の価値があると思う。俺はめちゃくちゃ好きだ。むしろこの小っ恥ずかしい語りがないと物足りない。これが恥ずかしさと共に読者をグッと学生時代に引き戻すフックになっている。
「ホワイトアルバム」は初連載作でコミックス2巻分の短いので、はじめに安達哲を読むにはちょうど良い作品だと思う。
自分も狂ったように安達哲、安達哲連呼してるけど初期三部作しか持ってない。
高校一年生の男女の学校生活を描く群像劇となっている。
第1希望の高校に落ちた秀才。お調子者のムードメーカー。破天荒かつ繊細な絵の天才。清楚なマドンナ。やんちゃな不良少女。
いろんな奴がいろんな思いを抱えて高校生になり、周りと関係を作っていく。
初めての酒や夜遊び、車の運転、バイト、恋。高校生になってぐっと世界が広がって見えるあの感じが描かれている。高校一年で店で酒飲んだり、堂々と車運転してるのが時代を感じる。昔の高校生ってヤンキーだな。
短い連載なので高校入学から半年くらいをさらっと描いて、そのあとすぐ終わってしまうけど、これが逆に切なさを際立たせていると思う。
高校入学してそれぞれのお互いを知らないキャラクターたちが人間関係を構築するまでの一瞬だけを切り取って描いて、肝心のキャラの学校生活の大半をあえて読者の想像に委ねる。
これにこの作品を読んでいる読者自身の学生生活を思い出させる余白みたいなものを持たせる効果がある。
ってここまで書いてから気づいたけど、タイトルの「ホワイトアルバム」ってそういうことか。天才かよ。
卒業アルバムの白ページのように、この作品の空白を読む人それぞれの青春の思い出で満たしていけばいい、ということなのかもしれない。

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