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超ざっくりゲームシナリオ講座 入門編① 『ゲームシナリオ書けないんだけど、どうしたらいいの!?』

対象者

・ゲームをプレーしていて「このシナリオ、すげー!!」って感動して、自分も書いてみたくなった人。
・描きたい世界とか設定があって、それをゲームにしたい、そのためにシナリオ書きたいって人。
・ゲームのシナリオライターになりたい入門者。

そんな人のための記事です。
初歩的な内容を取り扱うので、もうすでにシナリオや小説を書いたことがある人、勉強をしたことがある人には物足りないかもしれません。

第1回目のテーマは、『なぜかシナリオが書けない、どうする!?』

なお、画像でさらにざっくりまとめたのをツイッターにも上げました。


シナリオを書く手が止まるとき

もう設定はできているのに、なぜかシナリオが形にならない。
書いてみようとパソコンを立ち上げたけど、手が止まってしまう。

わかる。
私、仕事でシナリオライターしてるくせにいまだにある。


「やりたいのに、できない」

よくよく考えればシナリオに限らず、多くの人はこんな葛藤を抱きます。

「ダイエットのために運動をしたいけど、めんどくさくなってしまう」
「英語の勉強を決意したけど、教材を買ったら満足してしまった」

ともかく人は、『苦痛』を予感すると行動がストップしてしまう生き物です。
ダイエット・運動ならば、いかにも疲れそうですし、
英語の勉強だってどう考えたって楽しくはなさそう。

逆に『快楽』が予感できると、人間の行動力はすごい。
ちょっと離れた場所に美味しいケーキ屋さんがあるとか知ったら、行っちゃう。で、太っちゃう。


さて、「シナリオが書きたいけれど書けない」ときに人が予感している『苦痛』はなにか。

今回の記事では、
「シナリオが書けないのは、書き方がきちんとわからない・書くための準備ができてないために『不安』という苦痛があるからなんじゃないか?」
と仮定して話を進めていきます。


『不安』程度でシナリオが書けなくなるもんかい、と思う人もいるかも知れませんが……
あなた、不安を甘く見ているっ……!

人っていうのは行動に具体性がないと動き出せないものなのです。

想像してみてください。
「今からポーランド語を勉強してください」と言われたとします。
きっと「英語を勉強してください」と言われるよりもはるかに大変そうだと感じるはずです。

英語は(真面目に勉強していたかどうかは別として)、中学・高校で勉強をするので、勉強のやりかたとか、どこで躓くかとかがなんとなくわかっているものです。
しかしポーランド語は、多くの人にとって縁遠いもので、聞いたことない人すらいるかもしれません。どんな教材が必要なのか、どこから手をつければいいのかまったくわからない……先行きが見えない不安が、面倒くささを引き立てるのです。

なので今回は、シナリオってどんなものなの? ということを知ることで不安を解消し、シナリオを書く手が少しでも止まらないようにすることを目指します。

そのために、

①シナリオに必要な資料をそろえる
②シナリオ独特の「文法」を知る
③セリフ中心で話を進めるためのテクニックを知る

の3点をお話しします。

①シナリオに必要な資料をそろえる

ここら辺の話は、次回以降に話す予定の『シナリオライターに仕事を頼むにはどんな資料が必要なの?』とも関係するところ。

外部にシナリオを依頼する際には形になった資料があったほうがいいのですが、例えば個人でゲームを作るときには、自分が分かる程度の資料しか作ってないって人もいるんじゃないかと思います。
べつに、それでもいいんです。「資料は俺の頭の中にあるぜぇー!!」、それで結構です。

大切なのは、「資料に具体性があるかどうか」。

具体性って言っても色々あるのですがひとまず今回は「裏付けるエピソードがあるか」「エピソードにできるか」辺りを重視して考えてみようと思います。


例えば、こんなキャラ資料……

勇者

とても正義感が強い。
女神に選ばれし勇者で、聖剣を使う。
必殺技はスーパースラッシュ。
めっちゃ女の子にモテモテ。
男からも、動物からもモテモテ。

まあ、ぱっと見てダメそうなのが分かりますよね。
この資料を、裏付ける「エピソード」があるか、「エピソード」が作れるかどうかを観点に書き直してみます。


勇者

生まれ育った故郷を山賊に焼かれてしまったため、以来悪を許せない正義漢。そのため悪に虐げられる弱者を見ると、つい手を貸してしまう。
⇒「正義感が強い」が「山賊に故郷を焼かれた」というエピソードに裏打ちされている。
 ⇒今後、「他の村が焼かれるのを見て、激高する」みたいなエピソードが作れる。

女神に選ばれし勇者で、魔のみを討つ聖剣を所持している。
⇒「魔のみを討つ聖剣」魔物に対しては最強だけど、人間相手には本領が発揮できないみたいなエピソードが作れる。

女の子にもてるが、鈍感。故郷を失って以来剣一本で殺伐とした世界を生きてきたため他人の感情があまり理解できない。
⇒鈍感が「故郷を失って~」というエピソードに裏打ちされている。
⇒「言い寄られるが、気づかずに相手をヤキモキさせてしまう」みたいなエピソードが作れる。


……みたいな感じでしょうか。
すごく適当に作ったので「この設定で面白いのか」「この設定で長い物語を進めていけるのか」などの問題はありますが、最初の設定よりは大分具体的になりました。

(なお例外として、具体性をわざと持たせない「無個性主人公」や「モブキャラ」などがいますが、今回はひとまず除外)


世界設定の場合でも同じです。

【世界設定】
オーソドックスな剣と魔法の世界

これではさすがに具体性が低いので……

『剣と魔法の世界。魔法は血筋によって貴族しか使えないため、平民は金属の武器を使っている』
『剣と魔法の世界。モンスターが跋扈しており、それを討伐する冒険者がいる』

みたいな感じでどんどん具体化していきましょう。
(上の例はまだ具体性が低いのでもっと細かく決めていくことになります)

キャラクター設定、世界設定に限らず、その場面の設定(シーンで何を描くか)なども具体的に決まっていないと筆が止まってしまいます。

最初に

「資料は俺の頭の中にあるぜぇー!!」、それで結構です。

と書いたんですが、頭の中で作っている資料は、具体性が低いことが多いです。

「設定決ってるぜ!」
と思いきや、書きだしてみたら細部が穴だらけ、なんてことも珍しくありません。

なので紙に書くなり、エクセルにまとめるなり形にしておくと、自分の想定のどこが具体的でないのかがわかるかも。

(なお、具体的な資料の作り方に関しては、ライターさんへのシナリオ発注方法と合わせて今後解説していく予定です)


まとめ
・資料はどんどん具体的にしていこう。
・最初のうちは、具体化の目安として「エピソードに裏打ちされているか」「エピソードが作れるか」と考えておこう。
・頭の中で具体的になっていると思っても、よく考えるとそうでもないってこともあるぞ!


②シナリオ独特の「文法」を知る

早速ですが問題です。
以下の画像のうち、正しいシナリオの表示はどれでしょうか。
あるいは今自分がプレーしているゲームの表示に近いのはどれでしょうか。

なお、これは全て『正しい』(実際にあり得る)シナリオの表示の仕方です。ゲーム内で(あるいはシナリオ内で)統一されてさえいれば、どのような書き方でも問題ありません。

この画像を見た時に「どれが正しいんだっけ……ゲームでシナリオを読んでいるはずなのに、具体的に思い出せない」と思った方も、まあ少しはいるんじゃないでしょうか。

べつにこれはシナリオに限らないのですが、表現のディティールというものは意外と見落としてしまうものです。
小説を例に考えると……

・文章の終わりは、現在系で終わっているか過去形で終わっているか。どちらの方が多いか。
現在:「俺は、スイカを食べる」 過去:「俺は、スイカを食べた」

・括弧の中の文章には句点が必要か。
なし:「俺はスイカだ」 あり:「俺はスイカだ。」

・よく見るのはどれ?
①「……」 ②「・・・」 ③「…」

みたいな。
小説を書いたことがない人は自信をもってこれだ! と言えないんじゃないかなと思います(言える人は、細かいところまで見てる人ですね。すごい)。

同じく、ゲームシナリオも普段読んでいるような気がしていても、細部が分からないということがあります。
細部が分からないと、書くときに「どう書くんだっけ?」と手が止まる。
すると書くのが面倒くさくなる……という悪循環へ。


なのでシナリオを書く前に、自分が好きなゲームのシナリオを読んでみて、具体的にどんな書き方をされているのか確認してみるとよいでしょう。

また、自分で書く場合には最初にルールを決めておくのが大切です。途中で迷いが出るとやはり面倒くささが増しますし、後から直すのは大変ですからね。

以下に、シナリオを書く前に私がざっくり確認するチェックリストも載せておきますので、参考までにどうぞー。

チェックリスト
・一度に表示できる文字数、行数はどれくらいか。
・記号の扱い。!や?の後に全角スペースを設けるか。「!!」か「!!」か。「!?」と「?!」どちらを使うか。
・句読点の扱い。文末に句読点をつけるか。途中改行する場合は、どうするか。
・括弧の扱い。カッコをつけるか。つけるとしたら、次の文頭にスペースを入れるか。


文頭スペースなし
「俺はスイカだ。
しかも糖度は20もある」

文頭スペースあり
「俺はスイカだ。
 しかも糖度は20もある」

・地の文を使うか使わないか。
・心中語を使うか使わないか。
・セリフが表示されるのはどこか(ウィンドウか、吹き出しかなど)
・セリフには音声がつくか(音声がつく場合は、主人公の名前を変えたりすることはできない)
・提出時のフォーマットはなにか(テキストファイルなのか、エクセルの専用フォーマットがあるのかなど)
・SE、演出、表情などの指定はいるか。


③セリフ中心で話を進めるためのテクニックを知る

ゲームシナリオが、普通の文章や小説と違うところは「セリフ中心で書かれている」「ゲーム実装時には、立ち絵や演出などがつく」などでしょうか。

(地の文がつく場合もありますが、①割合としては少なめ②地の文を使うメリットがあまり大きくない(メリットを生かすのが難しい)ことから、今回は除外します)

セリフ中心で物語を進めていくテクニックはたくさんあるのですが、今回は躓きやすい点だけざっくり説明します。


〇表現できるものには限界があることを知ろう。

ゲームシナリオは、ダイナミックな動きや複雑な動作を表現するのは難しい媒体です。
図のように「空を飛ぶ」という動きは、なかなかセリフのみでは表現しにくいですし、背景やエフェクトなどを用意しなければならないので手間も増えます。

しかもこいつ、猫じゃなくて犬じゃねぇか!!(画像を出力した後に気づいた)

他にも、
「大人数を一度に喋らせる」(画面に表示できる立ち絵には限界がある。画面を頻繁に切り替えすぎるとプレーヤーが混乱する)
「無口なキャラ、しゃべれないキャラしか登場しない」
「動き中心のシーン」(スポーツとか戦いの場面は難しい)
などが、シナリオで表現するのに向いていない場面です。

がんばってどうにか表現するという方法もあるのですが、最初のうちは物語の構成を練るときに「この場面はシナリオで効果的に表現できるかな……?」と考えると良いでしょう。


〇説明的になりすぎないように注意しよう

上で書いた通りどうしてもシナリオでは表現しにくい場面というのもあります。
でも、どうしてもそのシーンが書きたい……と思うあまりにセリフ回しが不自然になったり、説明的になったりすることがあります。

そして説明的なセリフが続くと「なんかおもしろくないな」とか「雰囲気出ないなー」とか思ったりすることもあるでしょう。

ひとまず例を見てみましょー。

まあ、そこそこ雰囲気が変わったんじゃないでしょうか。

説明的な文章が悪なわけではないのですが、

自分が書きたい理想のセリフのやり取り・雰囲気と
自分が現実的に書けるシナリオとの間にギャップがあると、嫌気がさしてしまって手が止まることもあるんじゃないかと思います。

補足として、
前述の通りシナリオは書き方に制限があるため、どうしても説明的にならざるを得ない場面があります。
また、説明的にすることで情報をたくさん入れられるというメリットもありますし、説明台詞を効果的に使えばテンポが良くなるという効果もあります。

今自分が目指しているのは、説明的な文章なのか、そうじゃないのか。
きちんと意識しながら書くといいんじゃないでしょうか(急に投げやり)。

(具体的な、『いい感じの会話の流れの作り方』みたいなのは後日執筆予定)

まとめ
・シナリオで表現するのには向き不向きな場面がある。
・「こんなシーン書きたい!」という情熱と、現実のシナリオ制作レベルとの差によって、説明台詞などの魔物が生み出される。

全体のまとめ

ここまで、「もしかしてシナリオ制作入門者は、こんなところで手が止まっちゃうんじゃないかなー」と予測しつつ書いてきました。

①シナリオに必要な資料をそろえる
 ⇒きちんと「エピソード」が作れる資料になっているかを確認してみよう。

②シナリオ独特の「文法」を知る
 ⇒シナリオってどんなもの? わかっているつもりでもわかってないことがあるかも。

③セリフ中心で話を進めるためのテクニックを知る
 ⇒セリフを中心に物語を進めていくのは結構テクニックがいる! そこら辺が足りないとうんざりしちゃうかもね。

今回の内容は概要というか、ほんの入門編なのでもっと具体的な内容に踏み込んでいく必要があるのかなーとは思っています。

①②の内容に関しては「シナリオライターさんに発注する際に必要な事」みたいな内容で、資料作りの講座を今後執筆する予定です。

③の内容に関しては「自分でももっとしっかりシナリオを書きたい」という人向けに、具体的なシナリオ執筆テク講座的な物を書くかも。

私はもうシナリオ制作のみで生計を立てていますし、周囲には書くのが上手な人が多いですから、今回の内容が難しすぎるたのか簡単すぎたのかちょっと判断がつきません。

「簡単すぎた!」「難しかった!」「いやいや、こういう内容じゃなくてさ……もっと○○について教えてくれない」

みたいなご意見、あれば参考にしたいので遠慮なくお伝えくださいませー。



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