超ざっくりゲームシナリオ講座 入門編4 『シナリオライターさんに依頼したいんだけどどんな資料が必要? 其の3』
対象者
・ゲーム作ってんだけどシナリオ書けないからライターに外注するぜ! っていう個人のゲーム制作者さん
・ゲームのシナリオライターになりたい入門者。
そんな人のための記事です。
(プロとして、あるいは同人でもしっかりお金のやり取りがある場合は、今回のやり方だとちょっと物足りないかも)
今回は、前回、前々回の内容を受けて、「現実的にシナリオライターさんに発注するにはどうしたらいいの?」ってことを考えていこうと思います。
例の如く、今回も私の主観バリバリな内容です。
また簡易まとめはツイッターへ。
身も蓋もないけど大切なのは「コミュニケーション」
「シナリオライターさんも人それぞれだから、きちんとコミュニケーションをとるのが大切だよ!」
……個人的には、こういう毒にも薬にもならぬ正論っていうのはあんまり好きではないのですが、このことを念頭に読んでいただければ。
シナリオライターと一口に言っても、様々です。メインとなる戦場や得意分野がそれぞれ違います。
私の場合は、(頼まれればなんでもやりますが)基本的にはスマートフォンのゲームの案件が多め。(なので「超ざっくりゲームシナリオ講座」もその立場や視点からの内容が多くなってしまっています)
それぞれのライターさんでアプローチの仕方や、こだわり、必要となる資料や時間、報酬なども違ってくるのです。
前回示したような資料が全部そろっていないとNGということはありません。
逆に資料をしっかりそろえたからOKというものでもありません。
なので結論から言えば、「発注の際に必要なのは、ライターさんとコミュニケーションをとっていろいろな『落としどころ』を見つけていくこと」です。
その上で、具体的にどんなことをすればいいのかなー……ということに関して、以下の3点をお話しします。
・基本的な戦略
・『譲れない部分はどこか』と『自分でもわかってない部分』を認識する
・とりあえずできている部分を共有する
・基本的な戦略~資料が足りてない状態を必要以上に恐れない~
「ライターさんへ外注したい!」
「でも、資料をうまくつくれない、っていうかどんな指示を出したらいいかわからない!」
そんな場面で選択できる戦略を、今回は2つの方向性で考えてみます。
①「金」はすべてを解決する。
お金 イズ パワー。
お金 イズ ジャスティス。
どんな面倒くさい案件でも、資料作りからやれと言われても、1億円くらいの札束ぶっかけてやれば、シナリオライターはいうこと聞きます。
……というのは冗談だとしても。
「お金をきちんと支払ってプロに依頼すれば、多少資料が足りないのも補ってくれる(あるいは確認をとってくれる)」
ということです。
執筆に関係する資料の確保や、足りてない資料の補完は、作業の一環としてやってくれるライターさんも多いかもしれません。
(足りてない、の程度にもよるのですが)
実は『資料が十全にそろった状態でシナリオ制作を始める』という理想でしかなく、現実には全然資料がない状態でとりあえず書き始めることが多いです。
プロの製作現場でもスタートの時点で資料が完璧にそろっていたことは(私の経験では)ありません。
さらに言えば、資料がそろっているかと思いきや、制作してみたら粗が見えてくるというのも日常茶飯事。
なので、資料がそろわない、どう指示したらいいかわからないという場面でも、相談してみればライターさんの側で補ってくれるかもしれないから必要以上に怯えないで! と思っておいてください。
②「友情パワー」で乗り切る。
一緒に制作してくれるライター友達がいれば完璧?
経験のあるライターに依頼する予算がない!っていう場面もあると思います。
となると、仕事でやっているプロライターさんではなく、アマチュア(あるいはプロが趣味で無償で)のライターさんに頼むことになると思います。
安く済ませたいのが人情でしょうし、そもそも同人でのゲーム制作ならば手弁当はあたりまえですからね。
理想なのは、
・趣味や好きな作品が同じ
・制作のペースが似てる
・理想や目指すものが近い
・同じ制作ツールや、ゲームエンジンを使っている。使い方がわかる
などなど……一言でまとめると「気が合うライター」さんを見つけることでしょう。
きっと、資料がまとまっていなくても必要なことを読み取ってくれるでしょうし、以心伝心でつくりたい作品に向かって一緒に走ってくれるはず。
問題は、そんな理想のライターと出会える確率はものすごく低いってことです。
(理想の恋人が見つからないのと同じように)
ってことで、プロにしっかりお金払って書いてもらうのも、すごく気が合うライター仲間を見つけるのもどちらも現実的ではないので、折衷案や妥協案狙っていくことになるでしょう。
例えば……
・プロのライターさんに「シナリオ協力」みたいな形で、資料制作や、シナリオのサンプルづくりなどを行ってもらい、それをもとに自分で執筆。
・自分や仲間でシナリオを書けるところまで書いて、文章が書ける人(小説書きさんでもいいかも)に添削やアドバイス、監修してもらう。
・話しをまとめるのが上手いやつに、資料作りだけでも手伝ってもらう。
などなど。
なんで最終的に折衷案なんて出すのに、最初に「二つの戦略」として分けたかというと…
自分にとって「優先するところはどこか」「足りないリソースはなにか」が分かりやすくなるからです。
・お金はいくらでもあるから、外部に発注したい!
・自分の実績作りとしてゲームを作っているから1年以内に仕上げたい
・趣味で楽しく、が優先だから仲間が欲しい
自分の求めることに合わせて、どんな人材を探すのかを決めてもらえれば
・『譲れない部分はどこか』と『自分でもわかってない部分』を認識する
さて、ここからは運よく自分の理想にあうライターさんを見つけた、あるいは妥協したりお金を払ったりしてシナリオを外注することを決めた人向けです。
誰かにシナリオを頼まないといけない!
でも、きちんと資料をそろえるのもむずかしい!
という場合には、まず「ココだけは譲らねぇ!」って場所を決めるのが大切です。
絶対可愛い女の子登場させるもんね。それだけは譲らないもんね。
「譲らないこだわり」は、例えば…
・ゲームの雰囲気
・世界観
・特定のキャラクター、関係性
・ゲームのシステム的な側面
・イラスト
などなど
とにかく、「自分が作りたい/こだわっている部分はここだから、そこは外してほしくない」ってところをきちんと認識して伝えるのが大切です。
もし資料がそろっていない、あるいは頭の中に資料や設定があるけれどそれをアウトプットできない場合、ある程度ライターさんにお任せしなければならない場面が出てきます。
そんなときに「こだわりはここです!」ときちんと伝えてあげることで、望まないシナリオが出来上がってくるのを避けるんですね。
もし、「自分のこだわりをうまく言葉に(あるいは資料に)できないよ~」「こだわりなんてないよ~」と思う場合は、『それまでの作業で一番時間をかけた場所』を考えてみてください。
キャラクターの絵をかくのに時間をかけた、ゲームシステムを組むのに時間をかけた、ステージ制作に時間をかけた、あるイベントに時間をかけた。あるいは「設定だけをずっと妄想し続けている」なんてのもOK。
そこが(暫定的な)『譲れない部分』になってくるはずです。
また、「譲れない部分でない場所」かつ「資料の形になってない」部分は『自分でもわかってない部分』です。
ここら辺はライターさんの裁量に任せてしまうことになるので、「自分の想定とは違うものが上がってくるかもしれない」と心の中で折り合いをつけておくことが大切です。
もし折り合いがつかない予感がするならば……『譲れない部分』を再考して言葉にするか、あるいは資料にするしかありません。
・とりあえずできている部分を共有する
前回、「イメージを共有するのも大事だよ~」という話を書きました。
なので、「自分の作りたい作品はこんなのなんだ!」というのを示す意味も込めて、すでに出来上がっている部分を共有するのも方法です。
例え骨組みだけでも、十分参考になる
もし過去に完成させた作品があれば、それをプレーしてもらう。
過去作がないのならば、製作途中の断片でもいいので共有する。
資料としてうまくまとめられなくても、↑だけで大分作業内容やイメージが共有できます。
既に出来上がっている作品から、芸風や文体、文章の決まり事を真似して制作するのはそれほど難しい作業ではありませんしね。
(得意なライターさんと苦手なライターさんがいますが)
もっともゲームをプレーするのには時間がかかるので、ライターさんによっては嫌がる可能性もあります。
私はできるだけ過去作はプレーするタイプです。しかしゲームをプレーする作業はお金にならないので、ある程度で見切りをつけてしまいます。クリアまでプレーすることはあんまりありません。
全体のまとめ
・お金でライターを雇うか、気の合う仲間を見つけるか……難しいので、とりあえずできる折衷案を見つけよう。
・自分にとって『譲れない部分』だけは自覚しといて! それを伝えるだけでも、思った通りのシナリオがあがってくる可能性が高くなる
・とりあえず過去作や、出来上がっている部品を見せるだけでもイメージや作業が伝わることがある。
ここまで3回かけて「シナリオライターへ外注するための基礎知識」を解説してきました。
最難関である「ライターを見つける方法」に関しては解説できなかった(というか私にもわからない)のが残念ですが、
今までの内容を踏まえればひとまず「発注」までなんとかこぎつけることはできるんじゃないかな、と思います。
なお、ここまで長々と解説しておいてなんですが、抜け道というか番外編として以下のような方法もあります。
・自分で書く
⇒意外と書いてみるとシナリオライティングって楽しい! と思うかも。
・シナリオを書いたことがないけど書けそうな友達にたのむ
⇒なんかコイツ面白いなとか、なんか文章上手いなってやつにシナリオを頼むと、意外と面白いものができるかも。気の置けない友人がいる場合は軽率に声をかけてみるべし。
さて、次回以降の予定ですが。
ひとまず「ゲームシナリオを自分で書くためにはどうしたらいいの?」って内容を書いて行こうかと思います。
ゲームシナリオや小説、物語の書き方は、書籍やホームページなどもうわんさか情報があるのですが、文章への苦手意識がある方には若干ハードルが高めなんですよねぇ。
「超ざっくりゲームシナリオ講座」は本当に入門者向けに制作しているので、初歩の部分からやっていこうと思ってます。
あくまでも予定なので「こんなこと教えてほしい!」「○○というテーマで書いてほしい!」ってのがあれば、そっちを取り上げるかも。気軽に言ってくださいな。
面と向かって言いにくい人は質問箱にでもどうぞ
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