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最後の非常事態延長の決定&政治のゴタゴタ

今日6月3日の議会で、スペインにおける6回目の非常事態延長が正式に決まりました(6月21日まで)。非常事態の延長はこれが最後になるとのことで、今回においては政府のコントロールは人々の移動に関するものに留まり、外出制限緩和のフェーズ移行等に関しては自治体の判断に任せるという内容のようです。それぞれの政党に政権に対する複雑な思いはあったものの、今回が最後ということもあり、なんとか可決に至ったものと思われます。それにしても、ヨーロッパをはじめ世界各国で外出制限緩和のスタートと共に非常事態も解除となっている中で、スペインはいまだに非常事態が続いているという、何とも言えない状況であるのも事実。。。

さて、そんな今日の議会の状況はというと、相変わらず激しい討論が繰り広げられ、今回も6時間近く続く長丁場。。。そして、相変わらず政治のゴタゴタは続いており、その分断も甚だしい。。。ここ数回の非常事態の延長にまつわる議決で右派の賛成が得られず、左派の政権側がバスクの政党に協力を求める傾向にあり、そこからさらに右派の反発が激しくなっています。さらには、先週の5月25日に、内務大臣のFernando Grande MarlaskaがGuardia Civil(治安警備隊)のマドリード部隊のトップであるDiego Pérez de los Cobos大佐を解任したことで(詳細は別の記事で書こうと思っています)、さらに右派の反発に拍車をかけてしまった形となっています。

政権側のバスク政党に協力を求める傾向、中でもEH Bildu (Euskal Herria Bildu) への歩み寄りが右派の反発を過激化させているのですが、これは今ではこの党にとっての亡霊ともなっているETA (バスク祖国と自由)やバタスナといったテロリスト組織の影がちらつくことが原因だと思われます。そこから、右派のPP(国民党)や極右のVOXを始めとする議員が政権側に対してテロリスト呼ばわりするようなことが起きていたりします。PPのスポークスパーソンに至っては、第2副首相のPablo Iglesiasに対して「あなたの父親はテロリストだ(*1)」とまで言ってしまう始末。

*1: Pablo Iglesiasの父親は、1970年代のフランコ政権下における過激派組織FRAP(革命的反ファシストと愛国戦線)の一員だった。

もちろん、ERTE (一時的雇用調整)を含む失業保険の給付の遅れや補償の問題、最近の死亡者数報告における数値の変動、そしてGuardia Civil(治安警備隊)のマドリード部隊トップの解任にまつわる問題、その他様々な点において政権側に問題があるのも否めないし、反発も理解できる。ただ、政権側は「今は左も右もなくこの危機に立ち向かわなければならない」という姿勢を貫いているにも関わらず、右派は侮辱的な言葉で反対をするばかりで、PPに至っては右派というよりも極右に近づいていっている印象があるのも事実(中には、この人VOXの議員なの?と思ってしまうような人もいるぐらい)。

そんな中、今日の議会におけるそれぞれの党のスピーチにおいて一番まともに見えたのが、皮肉にもテロリスト呼ばわりされているEH Bilduの代表だった、というのが私の個人的見解です。右派や極右の反発姿勢はもとより、他の党も自分達の党の正当性や地域等への配慮等をうったえる中、彼女は自分の党にまつわる話は一切せず、冷静に今の状況の評価をしていました。「政府の政策は間違いもあったが、正しい部分もあった」と、ERTEによる雇用の維持やIngreso Mínimo Vital (貧困層におけるベーシックインカム)の導入に対する一定の評価をした上で、「日産やALCOA (*2) の社員を簡単に解雇させてはいけない」「健康面におけるパンデミックも困難ではあったが、社会的経済的なパンデミックはそれ以上になる」といった問題提起もしていました。

*2: ガリシアのLugoにあるALCOA (アメリカのアルミニウム製造企業)の工場における500人以上の大量解雇が発表され、バルセロナの日産工場同様、連日社員によるデモが行われている。

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そんなわけで、非常事態はまだ続くものの、来週からさらにフェーズが進むエリアもあり、政治のゴタゴタをよそに社会生活は確実に前に進んでいます。ちなみに、内務大臣によるGuardia Civilのマドリード部隊トップの解任に関しては、ここでは書き切れないくらい複雑且つ大きな問題となっているので、この件については追ってまた書いていきたいと思っています。

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