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マドリードのフェーズ移行におけるドタバタ劇

今日(5月8日)の夕方、保健大臣のSalvador Illaと保健省非常事態本部の責任者Fernando Simónによる会見があり、来週5月11日から外出制限緩和のフェーズ1に移行するエリアの発表がされました。 昨日までの経緯はこちら↓

申請時点で一部の地域を除きフェーズ0に留まるとしていたカタルーニャ州は、その申請通りの結果に、一方、強行策でフェーズ1への移行申請をしていたマドリード州の希望は却下、フェーズ0に留まる結果となりました。そりゃ、そうだよね、という予想通りの結果に。。。

実は、マドリード州に関しては、この申請にあたりドタバタ劇がありました。というのは、当初マドリード州首相のIsabel Díaz Ayusoはフェーズ1への移行には消極的だったのです。彼女自身コロナウイルスの感染者の一人であり(現在は復活)、実際、事前のインタビューで「フェーズ1に移行する準備はまだできていない」と言っていたぐらいでした。また、マドリード州の公衆衛生局長のCarmen Yolanda Fuentesもフェーズ1への移行に反対の立場を取っていました。

マドリード州は右派のPP (Partido Popular 国民党)が自治権を有しており、PSOE (Partido Socialista Obrero Español 社会労働党)とPODEMOSの連立左派であるスペイン政権とは対立した、経済優先志向の政策を取っています。マドリード州の副首相Ignacio Aguadoは当初からフェーズ1への移行案を進めており、「病床数は十分に確保できている」と主張を続けていました。そして、結局ギリギリになって、首相のIsabel Díaz Ayusoも「経済を止めることはできない」と、半ば押し切られる形でフェーズ1への申請に踏み切ったわけです。

ちなみに、病床数が確保できているというのはある意味正しいのですが、これは「野戦病院」と呼ばれたIfemaという総合イベント施設を改良した仮設病院(5月1日に最後の患者が退院し、現在は閉鎖している)の病床数も含めてカウントしたものであり、これを良しとするかどうかは微妙なところです(仮設であることはもとより、誰もあんな所に入院なんてしたくないはずなので、人道的な観点からも疑問と言えるでしょう)。

また、医療における物資や人的リソースに関しても、十分な確保ができているかどうか不安が残っています。特に人材に関しては、感染症に対応するには不十分な医療従事者も含まれていたと言われていますし、さらには、必死で集められた医療従事者の契約が今月末か6月の初めに終了するということで、一時物議を醸していたことも事実です(Isabel Díaz Ayusoが12月末までの契約を確約する形でおさまりましたが)。

結果的に、今日の発表で「NO」と突っぱねられてしまったわけですが、断固として反対の姿勢を取っていたCarmen Yolanda Fuentesは、「フェーズ1への移行の申請をするのであれば、公衆衛生局長を辞任する」という言葉通り、その職を退くことになってしまいました。そして、その後任は副局長でIfema仮設病院の責任者であるAntonio Zapateroになるだろうと言われており、今回のマドリード州のドタバタ劇はなんだか政治や利権のにおいがプンプンするよね、と思った次第です。

* 冒頭の写真は、今日のバレンシアの中心地の様子。もはや定点観測になっています。相変わらず人通りは少ないです。

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