ツラツラ小説。 こみゅにけーしょん。

バーカ。そんな声が聞こえた。それはいわゆるチクチク言葉である。本来使うべきではなく、いや使う場合もあるだろうが、使うことで相手を傷つけてしまう言葉のため使わないようにすることを教えられる。そして、僕の通っていた小学校では、チクチク言葉一覧というものが作られた。そこには、
ばか、あほ、ちび、まぬけ、脳みそない、漢字できないウンコ野郎、九九ができないクソデブげろぼけあんぽんたん、のような言葉を使うなと書いてあった。後半2つはうちのクラス限定だ。だから、僕はそれを使わないで人と生きていた。ある時、友達に言われた。

君は優しいけど楽しくないよねって。

その友達は今でも友達なんだけど、その時の言葉は忘れられない。そして、僕は大きくなっていくにつれて暗い人になっていった。中学高校は、チクチク言葉のオンパレードだった。というか、それでこみゅにけーしょんが成り立っていた。理由がわからなかった。そこで僕も使ってみることにした。仲のいい友達に向かって

ばーーーーーーーーーーーか!!!!

教室がシンとなり友達は黙って僕を見つめた。僕だけは、正しいことをしようとした人だった。僕は数少ない友達を失うことになる。

正しく生きてきた。道から逸れることなく、真っ直ぐに、言うことを聞いて、行くところを明確にして、嘘をつかないで人に悪口を言わないで喧嘩もせず泣きもせず殴られても反撃せず、

ばーーーーーーーーーーーか

には、生活を変える力がある

ばーーーーーーーーーーーか

って言わなければどうなっていただろう。

ばーーーーーーーーーーーか

声が枯れる。

こみゅにけーしょんって難しい。なんだ。こみゅにけーしょんって。他人の心はわからない。わからないまま大人になった僕はきっとロボットのように生きていくんだ。 

ばーーーーーーーーーーーか

なんて、2度と言わないような優しいけど楽しくないよねって人になるんだ。

ねえ、どう思う?友達に聞いてみた

「そんな人生、楽しい?」

僕は、楽しいと言ってみることにした。

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