ツラツラ小説。 リモコン。

私はリモコン。誰かを操作するリモコン。私が今の立場になると私はリモコンのようだ。私は動かずリモコンで操作される「それら」が動く。楽で仕方ない。罪悪感などとうにない。罪悪感というものを持つと仕事にならない。人としてではなく、ものとして、私はリモコンとしてでないとおかしくなってしまう。

ある時、「それら」が壊れた。言うことを聞かなくなってしまった。リモコンの故障というよりも、もっと根本的な、システム障害だ。

「それら」が壊れたことでリモコンも壊れた。というよりもダメになった。操作が効かない。また、リモコンのため、実際のところはわからない。ただ操作するだけ。こんな私に価値はない。リモコンは部屋の隅っこの特に邪魔にならなそうなところに置かれることになった。私はそこに大量におかれた古いリモコンと同じように持ち主に忘れられ、「それら」にも忘れられるようになった。

時が経ち、ボロボロになった私は他の多くの古いリモコンと同じように燃えないゴミとして捨てられた。

わかったことがある。リモコンだろうが「それら」だろうが、地球に存在する同じものだ。そこにあるかないか、どこにいるかいないかの違いくらいだ。「それら」だけではダメだし、「それら」が居なくなってもいけない。そして、リモコンが多すぎてもいけない。古いリモコンがたどる道を私も知っていたのだ。

いつしか、材料がなくてはならないことを忘れ、そこにいる理由も忘れ、人だった時のことも忘れ、何もかも忘れたリモコンには当然の報いなのかもしれない。

私はリモコン。古いリモコン。電池を抜かれた、ただのもの。「それら」にもなれない部屋の隅っこ。昨日その部屋もなくなった。ゴミを漁り、ゴミを探す。ゴミがゴミを探す。

そのことに笑えるようになるのはあともう少しだけ時間がかかる。なぜなら電池がないから。

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