短編小説『去り際の終電』第2話

大学2年生になった。そのころになると先輩は就活で必死になり大変そうだった。先輩のツイッターを見ると、就活辞めたい、か、酒飲みたい、か。無言で日本酒の画像を、上げていた。日本酒の画像に一番いいねがついていてクスッと笑える。先輩がリツイートした漫画を読んでいると先輩からLINEが来た。今からウチ来ない?日本酒あるよ?というものだった。日本酒は苦手だし、先輩の家も遠い。だが終電間際の時間に家を飛び出し、先輩の家へ向かった。母親には内緒で。

先輩の家に着くともう軽く出来上がっていた。エントリーシートと自己分析の本を無造作によけたところにスルメと日本酒とチータラがあった。意外と渋いなと思いつつ、そういえば前にチーズが好きっていう会話をしていたことを思い出し、少し嬉しかった。先輩は就活で少し疲れていて合うやいなや、僕に抱きついてきた。僕は困ったが抱き返した。先輩はとても嬉しそうな感じで僕のコップを用意して、注いだ。飲みやすかった。少しだけ美味しいと思ってると、先輩はまたキスしてきた。僕はお酒に強くなかったのでそこから先は全く覚えていない。覚えてるのは先輩の匂いだけ。相変わらずチョコミントだけど。

モヤモヤ。

モヤモヤ。

モヤモヤ。

朝。目が覚めると、目の前に温かいコーヒーがあった。目が覚める。今日は面接の日らしい。先輩は朝からバタバタしていた。鍵開けっ放しでいいからといって先輩は出ていってしまった。なんだか1日があっという間だった。とても強い虚無感に襲われ、先輩のベットでもう一度寝た。先輩の匂いがした。

僕は初めて先輩のことを名前で呼び、僕たちは都合の良い関係になった。

モヤモヤする。3度寝。4度寝。

彼女が帰ってきた。どうやら上手く行ったらしい。また違う日本酒を買ってきた。日本酒が好きになってきて、嬉しかった。

また、次の日の朝も温かいコーヒーを飲んだ。これが日課になってくるとより、相手のことを知りたくなる。でも、その話になる前に先輩は酔っ払ってしまうのだ。そこに何か距離を感じてしまう。なんか知ってしまうと後悔する気がする。その頃から先輩はチョコミントの香りからチョコの香りになっていった。タバコを辞めたらしい。僕はタバコ嫌いじゃないのに。なんでだろう。

帰りにツイッターを見た。先輩は内定をもらっていた。おめでとうLINEを送るととても嬉しいということを伝えてきた。やっぱり先輩は可愛い。今日は終電で帰る。たまには家にかえるんだ。明日も学校で会えるから。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?