【小説】はだかの王様とは【ショートストーリー】
この物語は、日本一の漫才師を目指す2人のオッサンが、悪意が廻るこの世界に、笑いで「わずかな余白」を届ける為に奮闘する、オッサン臭がはんぱないオッサンによるオッサンしかわからないオッサンだけの物語である。
※最後にオッサンの声が出てきます。
《登場人物》
オッサン1: 渡邊惺仁
以下「渡」と表記
オッサン2: ○○について思うこと 改め、思う
以下「思」と表記
2022年3月14日
とあるアパート
ピンポーン
渡「はい」
ガチャ
思「きちゃった」
渡「…」
バタン! ガチャガチャ シャッ!
思「おい!閉めんなよ!お前、今 チェーンしただろ?チェーンしただ ろ?おい!」
ドン!ドン!
思「ドアのチェーンはしてもいいか ら!心のチェーンはしないでく れ!」
ドン!ドン!ドン!
ガチャ
渡「あー、すまん。昨日、ズボンのポ ケットに蓮根入れたまま洗濯し ちゃって食えなくなったんだよ。ド ブに捨てたはずの蓮根が戻って来た のかと思ってつい。まあ、入れよ」
思「もう!大事にしてよね!」
※※※
思「あれ?この部屋暑くね?暖房つ いてんの?」
渡「いや、つけてないんだけど朝から 暑いんだよ。お前、その上着脱げ よ暑苦しい」
思「ああ、そうだな」
渡「そういえばお前、芸名変えたんだ よな」
思「そうなんだよ。事務所に俺宛の ファンレターが何通も届いてて、名 前が長すぎて腱鞘炎になりましたと か、藁人形に名前が収まりませんと か、そんな内容ばっかりだったから 変えたんだ」
渡「藁人形って…お前、それファンレ ターじゃなくクレームだ。いや、ク レームじゃなく怨みだな」
思「え?怨み?でもプレゼントも添え てあったぞ。カラシとか」
渡「カラシ?それ嫌がらせだろ。いや …カラシ入れて食べるのか…?それよ り、どうやって名前決めたんだ?」
思「それよりって…。ああ、名前?ヤ ボー知恵袋で募集したんだ。そした ら、スナフキンってペンネームの人 がいいネーミングをつけてくれたん だ。『思う』って。⚫⚫ってふざけ たのもあったけど、これが一番しっ くりきたから」
渡「ああ、いいネーミングだな」
思「そうだろ?『思う』って、俺は お前の事を『思う』、お前も俺の 事を『思う』そんなコンビを目指そ うと思って…」
渡「お前…」
思「あ、すまん。今の嘘」
渡「貴様!ちょっとホロっときたんだ ぞ!俺のホロっを返せ!」
思「さっき、心のチェーンを閉めた仕 返しじゃ」
渡「それより、いよいよ今日だな。
真-1グランプリ2022。今回の審 査員、あの人だろ?」
思「それよりって…。ああ、『そらい ろの裏ボス』って呼ばれてるあの 人だろ?」
渡「厳しいかもな。あの人、見た目は 優しそうだけど、悟空とラディッ ツを貫いた魔貫光殺砲と同じくら い鋭い指摘するからなあ」
思「厳しいなあ…」
渡「そういえば、俺たちの今日の衣装 はどうした?手ぶらで来たみたい だけど」
思「ああ、その事なんだけどな。俺、 考えたんだよ。衣装より大事なこ とを」
渡「大事なこと?」
思「俺たちって今、そこそこ売れてる だろ?今回の大会で優勝したとした ら、周りからもてはやされ、思い上 がった俺たちはそのうち、芸も磨か ず、人の忠告も聞かない芸人にな るんじゃないかと思うんだ」
渡「いや、多分それお前だけ…」
思「そう言いきれるか?自分は大丈夫 だって」
渡「それは…」
思「売れて思い上がった先輩たちをお 前も見てきただろ?大して面白く もないネタに「面白い」としか言 えなくなった周りの人間。誰も 「面白くない」って指摘しない。 そんな、はだかの王様みたいにな りたくないんだ、俺は。いや、俺 たちだけは」
渡「お前、そこまで考えてたのか…」
思「だから、衣装という目に見える栄 光なんて必要ない。ありのままの 俺たちで漫才をやり続けたいん だ!だから衣装は用意しなかっ た。それでいいか?」
渡「ありのままか…。わかった。今度 は俺がお前の我が儘を聞くよ。コ ンビも俺の我が儘で組んだんだか らな」
思「ありがとう…渡邊」
※※※
渡「じゃあ、行くぞ。会場に」
思「ああ!」
二人は、全裸でアパートを出た。
#真顔で文字を書いて笑う1グランプリ
#裏ボスの魔貫光殺砲
#下ネタ3連投
#全裸排泄物全裸のサンドイッチ
#とは
以上!
ーーーーーーーーーーーーーー―ー――
全裸の事を考えていたら、「はだかの王様」が降りてきました。「はだかの王様」が降りてきたら、今度はこの記事が降りてきました。火災報知機の「火事です」「火事です」の声に似てるオッサンの声が聞けます。良かったら、音量オフにしてお聴きください。
↓↓↓↓↓↓↓↓