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「ファーストバイト」はもう古い。わたしはそれよりビンゴがしたい

この前の日曜日、だいすきな友人の結婚式に参加した。

社会人になってはじめて買ったお気に入りの紺色のワンピースを着て。
黒いキラキラのストールを肩にかけて、アクセサリーをこれでもない、あれでもないと探し続けていたら、なんだか地方の売れないキャバ嬢のようになってしまったので、お母さんにお願いしてパールのネックレスを借りた。
シンプルイズベスト、だ。


彼女とわたしは高校時代、部活のソフトテニスでペアを組んでいた。私が全幅の信頼を寄せている人の一人。

ソフトテニス部は全部で12人、全員女子。
「女が12人も集まったら、喧嘩も仲間割れも派閥もあるだろ」って声が聞こえてきそうだけど、わたしも思ってた。

でも、それが実は全然違くて、「女子でもこんなに仲良くなれる」ということを、わたし史上はじめて証明した。そして、もう二度と証明されない理論だと思う。

絶対、クラスにいても仲良くならないよねっていう人が半分くらいいたし(もっとかも)、小学生・中学生時代はちょっと荒れていたわたしは、彼女たちと喧嘩をした思い出もあった。
それでも出会ってから10年以上、まあまあ不定期に飲んだり、カフェしたり、彼女たちといることが楽しかった。

社会人になって全員が集まることはなかなか難しかったけど、10人以上集まるのは結婚式だから。

中には2、3年会ってなかったんじゃないか?と思う子もいるのに、「おお〜!」と一言、次に飛び出すのは「久しぶり!元気だった?」が教科書通り。
なのに、「ねえ、ハンドクリーム持ってない?」。

一気に「あれ、わたし、もしかして昨日もこの子と一緒にいた?」と思わせてくるあたり、良い。もし、私が彼女たちを主人公に映画を撮るなら、迷わずタイトルを「12人のベストフレンドたち」にする(興行収入少なそう)。

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結婚式で泣くのは苦手だ。でも、とにかく新婦が美しかった。

高校の時、まだちょっと荒れが残っていたわたしは、部活をちょっと、たくさん、サボったりした。
ペアで練習しなきゃいけない場面で、わたしがいないからできないこともあったかもしれない。
なのに試合になると負けず嫌いの血が騒ぎ、必死に直前まで作戦会議をするわたしを怒らずに、付き合ってくれた新婦がこの日はいつも以上に、とても綺麗だった。

はじめて会ってペアを組んだ時からなんだかんだずっと仲良くて、笑うタイミングが一緒で、好きなお笑い芸人も一緒で、どちらかというと突っ込み担当で。

テニスのペア同士でトランプの「7並べ団体戦」をすると最後の最後まで9を離さず、頭脳戦で勝利してきた私たち。


バージンロードを歩く後ろ姿は、彼女が数十歩先を歩いているように見えた。わたしが高校時代に知っている彼女じゃなくて、もう、ずっとずっと大人になっていて。

仕事でカナダから帰国して一週間経っていないわたしとの差は、ナイアガラの滝の落差くらいあった(仕事でナイアガラの滝はみてないけど)。

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披露宴がはじまり、新婦の弟が「このために鍛え上げてきました!」とスーツの背広を脱いでシャツだけになったと思ったら、新婦のお母さんがいきなり「脱げ!」コールをはじめ、親戚一同盛り上がり、結局めちゃくちゃ仕上がった上半身裸を晒しながら、お色直しのエスコートをしたり。


そんな中、一つ引っかかって離れなかったのが、ケーキ投入後の「ファーストバイト」だ。

司会者が「新郎から新婦へ『一生食べるものに困らせない』という意味で、新婦から新郎へ『一生美味しいものを作ってあげる』という意味のファーストバイトです。さあどうぞ!」

という掛け声に、わたしの心の中で「ちょっと待ったー!」がかかった。それはもう、ラグビーの審判並みの待て待て、ちょっと待て、スクラム組み直しだよ、はい、ちゃんと並んで、って、そんな感じ。

新郎から新婦へ『一生食べるものに困らせない』?新婦から新郎へ『一生美味しいものを作ってあげる』?この時代で?まじ?

と思って思わずツイートしてしまった。

私たちが生きてきた30年近く、果たして、新郎から新婦へ『一生食べるものに困らせない』?新婦から新郎へ『一生美味しいものを作ってあげる』は全体の何パーセントが達成してきただろうか。

大手航空会社で絶対に潰れないと言われたJALが倒産し、初の女性都知事が誕生した。世界に目を向けると、世界金融危機や、この間はフィンランドに史上最年少34歳の女性総理が誕生した。

世界は変わっている。男性の平均年収は下がり、共働きでないと子供は育てられない。一人暮らしの男性が増え、料理や家事が得意な人もいる。

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なのに、ファーストバイト、まじか。

わたしはまだ結婚の予定はないけど、結婚しても仕事は続けたいし相手の収入によりけりでなんなら正社員に復帰もアリ。子供ができても仕事はし続けたい。

というか、男性だけ働き続けるってフェアじゃない気がする。もし、本当にやりたいことがそこでできないなら、転職したり、起業したり、とにかく人生のパートナーとして一緒に生きていく人なら、後悔しないで生きて欲しい。そのサポートもしたい。
ただ、収入ゼロになるのはさすがに厳しいから、わたしも働く。

家事や育児のワンオペはいやだ。二人で生活してるから、二人でやりたいし、気分が乗ってる人が料理を作ればいい。美味しかったら嬉しい。美味しくないなら頑張って仕事して、外食しよう?子供は一緒に育てよう?二人の子だもん。


男性は大黒柱(この表現もいや)となってお金を稼いできて「あげて」女性は家庭に入り料理を作って「あげる」は多分もう古い。わたしの中ではもう古すぎる。

ファーストバイトを見ながらそんなことを考えて、わたしの結婚式(相手・時期ともに未定)ではファーストバイトをやめた。この際、ケーキカットもやめにして、この時間をビンゴ大会に使いたい。ビンゴ、楽しいよね。ワクワクするよね。景品当たったら楽しいし嬉しいし。


ねえ、あなたもそうじゃない?家事は得意な方がやれば良いし、ずっと働きたいでしょ?本当は家事が得意じゃないのも、頭の回転が早く仕事が得意なことも、わたしは知ってるよ。

と、幸せそうに大きなディズニーのしゃもじで新郎に大きなケーキの一塊りを食べさせている新婦の横顔を見ながら思った。

3秒後には「ビンゴの景品、何個用意しようかな、何入れようかな」と別のことを考えてたわたしは、素直にこの瞬間を楽しもうと心に決めた。