雑文 #182 手紙
去年の秋にあるひとに手紙を書いた。
メールじゃなくて、タイプした紙でもなくて、手で書いた紙。手紙。
紙を折って封筒に入れて宛名を書いて。
だいたい私は昔から手紙を書くことがとても好きだ。
遠くにいる人に書くのも好きだし、学校でよく会う人にわざわざ書くのも好きだった。
皆さんもそうだと思うけど、手紙を書く機会はぐっと減った。
だから去年の秋に書いた手紙の内容をよく覚えている。
それは勝手な近況報告だった。というか、心境報告か。
「私は変わらなきゃいけない。何かを捨てて何かを新しくしないといけない」と書いた。
その考えは、くるりのライブを観ていたときに突如降ってきたのである。
歌詞に感化されたのかもしれない。曲の調べが潜在意識的な何かを刺激したのかもしれない。
ただそれははっきりくっきりと、私の内部に降りてきたのだ。
ただ私はどう変わるのか、具体的なことは何ひとつわからなかった。
良い変化なのか悪い変化なのか、変わるのは自身なのか環境なのか、身体的なのか心象的なのか、何ひとつ。
あまりにも漠然としていて恥ずかしいとすら思った。
実際年が明けても私はとくに変わらなかった。
令和2年。
しかし変化は降ってきた。
コロナの世界。
私が変わるのではなく、世界が変わる。
そんなに変わらないよ、と言う人がいるかもしれない。
急に戦争が起きたわけでもない、政変が起きたわけでもないと。
でも私は世界がぎしぎしと変わっていくように感じる。
ウイルスそのものではない。
それをきっかけに、いろんなことを捨てていろんなことを新しくするのだ。
そんなふうに世界が流れてる。
世界の住人である私も、それに応じて何かを捨てて何かを新しくしなければならないだろう。
私があの手紙に書いた予感のようなことは、このことだったのか。
なんて予知能力めいたものなど私にはない。
ただ、変わる予感が引き続きあるのみである。
手紙を受け取ったひとは困っただろうか。
ちなみに私は字がきれいじゃない。
きたない字で長い手紙を書いてしまう。
今ではメールも短文になったけど、私はいつまできたない字で長い手紙を書き続けるのだろうか。
ここは変わらずにいたいなぁ。
手紙がなくなりませんように。
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