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獣医学生のたたかい②~機能制御薬理編~

機能制御薬理、来る

今年も、機能分析薬理学がやってきた。悪魔と知識と血の祭典。脳の容量を命と引き換えに増やすデッドヒート。獣医学部の電気は24時間消えることはない!! そう、すべての薬品名を頭に叩き込むまで!!!!

のっけからうるさいことを言ったが、機能制御薬理についてきちんと説明しよう。こちらの科目、我が学部の3年生(前期)に課せられる残酷な運命の一つである。こちらの単位をゲットするスローガンはただ一つ。「教えたこと、ぜんぶ覚えてね❤️

今更、「教えられたことを全部覚える」が獣医学部でどのような意味を持つかを語ってもしょうがない。ただ、それは精神の殺人である、とだけ言っておこう。

もちろん我々は頑張って勉強した。全ての余剰時間を注ぎ込み、メチャクチャに密度の高いレジュメから情報を抽出し、歴史書と照らし合わせながらベストな回答を模索した。気が狂いそうだった。いや、もう多分気は狂っていただろう。

しかし、試験内容はまるで我々の努力を嘲笑うかのようだった。今年度のこちらの試験、とてつもない新規性をはらんでいやがったのだ。回答用紙を配られた時点で、なんか嫌な予感はしていたのだ。右上の方に、見覚えのない表があるのだ。それも、空欄を埋めよとばかりにスッカスカの。

 あの時の級友の心の叫びを聞いてやりたい。みな、どれだけ絶望したことだろうか。

 問1は許す。歴史書通りであった。問2あたりから、雲行きが怪しくなってくる。初めて聞く薬の名前と作用、副作用。初めて見る記述問題。右上の図は、なんとてんかん薬の細かい効用を尋ねている。しかも完答しても4点しかもらえないという始末。

 まあ、我々とて武装しているので、モンスターが目の前に現れたとて、みすみす死を待つだけではない。『マルバツ問題は脊髄で解け、考えると間違える』と言ったのは友人Kだったか。マルかバツを書いておけば二分の一の可能性で点が入るのだ。書かない手はないであろう。

 まあ記述問題を見たあたりで闘志は粉砕されたわけであるけれども。それでも我々は戦った。自分でも『何言ってんの?』と真顔になるほど支離滅裂な理由を。そう、アミノグリコシド系抗菌薬がグラム陰性菌に効く、その理由を。

 問題を解き終え、外に出る。『見直しはしない。考えると間違える』と言ったのは友人Mだったか。外に出ると、みんな日向に体育座りしていた。口々に言う。

「あれは犯罪だろ」

 私もそう思った。

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