険しい本の道を照らすランプのような:松田青子『読めよ、さらば憂いなし』
割と本の近くで生きてきたと思う。
実家には大量に活字が落ちていたし、本屋さんなら2~3時間くらい時間を潰せるし、友人の家や喫茶店ではこっそり本棚を眺めるのが好きで、旅行には必ず本を持つくらいには、私は本が好きだ。
でも読むべき本はまだまだあって、読みたい本もまだまだある。これまで読んできたジャンヌも偏っている。まだ見ぬ魅力的な本を想う。
毎日を過ごしているうちにもどんどん本は生み出され、大量の本で大量の本が埋もれていくイメージが湧く。
学生でなくなってからは、意識しないと本が読めなくなった。
すぐに今日が終わってしまう。読むはずの時間にスマートフォンを眺めて過ごしてしまったりして。
子どもが生まれてからは、意地で読まないと読めなくなった。
意地で読む本も、やっぱり楽しかった。読みたいから読む本は楽しい。
なかなか読めないことで焦燥感や欠乏感があっても、それでも読みたい。
だって本は愛らしいし。大きさを揃えて並べると愛しいし。雑然と置かれていても可愛いし。家にあると嬉しいし。
本は、新たな知見と充実感と達成感をくれる。大切な友人のような存在だ。
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『読めよ、さらば憂いなし』は、松田青子によるおすすめ本紹介本である。
彼女がそっと優しく打ち明けてくれるようなエピソードとともに、本たちの魅力が溢れてくる。本そのものへの信頼を思い出させてくれるような、そして勇気まで湧いてきてしまうような紹介文の数々に胸が熱くなる。
彼女の文章は、まだ見ぬ本で埋まった険しい道を照らしてくれるランプのように、どんどん読んで先に進んでいる人がいるという安心感をくれる。読みたいものをゆっくり読んでいけばいいよ。まだまだ素敵な本はたくさんあるよ。
焦らなくていいよ。
読みたい本に付箋をつけていったら、つけ過ぎて付箋の意味がなくなった。
憂いで目が曇っている時にはこの本のタイトルを唱えて、また次のページを開くことにする。