見出し画像

京都祇園甲部のお茶屋遊びの前に、親子丼で腹ごしらえ

 その日は、懐が大いに温かい友人のGさんに誘われて、祇園甲部の「一力亭」へ、お茶屋遊びに出掛けることになっていました。
 祇園甲部に限らず、先斗町、上七軒など京都の五花街はいずれも「一見さんお断り」です。取材のためにお茶屋「吉うた」さんへは足繁く通っているものの、他のお店へは誰かのお供でなくては、立ち入ることはできません。
 なにしろ、大石内蔵助も遊んだという老舗です。
 建物自体が文化財級。
 わくわくして、当日を迎えました。
 
 さて、その前に、軽~く腹ごしらえです。
 その日は、何人か初対面のお客様と同席することになっていました。ホテルのパーティでもそうなのですが、人が集う場所では、「人が一番のご馳走」だと思っています。それが、「一力亭」で顔を合わせる人たちなのですから、何かの分野で究めた人である可能性が高い。
 仕出し屋さんから届くお料理は一流に違いありませんが、おしゃべりに夢中になってしまい、結局、お腹を空かせたまま散会になることがままあるからです。
 
 こういう時、決めている食事があります。
 親子丼です。
 まず味に当たり外れがないからです。
そして、入るのは蕎麦屋さんかうどん屋さん!
なぜなら、蕎麦もうどんも出汁が命。
その出汁で作る親子丼が、美味しくないはずがありません。
 そこで、以前から店の前を何度も通り過ぎて、なかなか入る機会のなかった「祇園 権兵衛」さんを訪ねることにしました。
 「一力亭」さんとは、ほんの目と鼻の先です。
 なんと、あのミシュランガイドにも掲載されている蕎麦屋さんで、そのサイトには、こう書かれています。
 
「品書きを「舌代」と記した古風な言い回しが似つかわしい。口上の意味合いで、これが私共の挨拶と言わんばかり。蕎麦が看板なのは蕎麦屋として創業したことにちなむ。うどんは煮込み野菜たっぷりの「しっぽく」、玉子とじ餡かけの「けいらん」などが京都らしい。親子丼も名物。通し営業なので使いやすい。」
 
 別に、ミシュランの評価を崇めている訳ではありません。
でも、本当に美味しかった。
支払いを済ませて外へ出ると、家族連れが「入ろうかどうしようか」と迷っていました。
「おせっかい」は無粋になる可能性のあります。
そっと、心の中で、「美味しいですよ」と声を掛けました。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?