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MITで学ぶデータドリブン経営

経験と論理的思考に基づく経営判断。これは正しいだろうか?例えばあなたがグローバル大企業の社長だったとして、経験と論理的思考だけで、グローバル且つ広範な業務領域をカバーする組織をリードすることができるだろうか。

ドイツ帝国の宰相ビスマルクが言った。「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」、つまり人間の経験には限界がある。もしビスマルクがこの情報化社会の時代に生まれていたら、「賢者はデータに学ぶ」とも言うだろう。デジタル化が進む現代には、膨大なデータを処理しうるプラットフォームとそれを活用するモデリングの技術がある。

ロシア系のガマルニック教授による"Data, Models, and Decisions"では、全15回に亘って、データに基づく経営判断の手段として、モデリング手法についてみっちり学ぶことができる。

具体的なケーススタディを見てみよう。あなたはMIT SloanでMBAを取得し、サンフランシスコで戦略コンサルタントとして働いている。ある日、クライアントであるメキシコ料理の有名チェーンの社長から、大規模新規出店に伴う収益予測の推計方法の相談を受ける。社長は、このレストラン運営会社をファンドに売却したいので、売却価格に大きな影響を与える新規出店の収益予測を第三者のコンサルタントであるあなたに依頼したのである。

出店する各店舗の収益予測は、既存店舗の収益実績と、関連するデータ(店舗面積、周辺人口、近隣住民の特性データなど)を用いて、回帰分析という手法によって推計することができる。回帰分析は統計学の世界では極めて初歩的なモデルだが、十分なデータ量があれば、統計的に意味のある予測ができる。

このメキシコ料理店のケースの提出課題は、面白い展開を見せ、授業の最後は教授への拍手喝采(Standing ovation)となった。課題設定は、正しいモデルをつくった上で、社長のアドバイザーとしてファンドにプレゼンをすることだったが、ジレンマを生じさせて生徒を悩ませるのだ。正しいモデルだと社長が交渉上不利になるのである。あなたならどうするか。正しいモデルを主張して、クライアントと案件を失うのか、クライアントの利益と自己保身を重視して、モデルを歪めるのか。

「経営判断で最も大事なのは何が正しいか判断する力、即ちビジネス倫理である。データやモデルの正しさではないんだよ」。ガマルニック教授はどちらが正解とも言わずに、ウインクをして教室を出て行った。

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