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水面に映る炎の美しさ【サンリオ映画「シリウスの伝説」を見て】

こんにちは!ももかろりーたです。
皆さま夏休み、お盆休みいかがお過ごしでしょうか。
今日はおすすめのアニメーション映画のお話をさせてください。

さて皆さま、サンリオが企画制作をした「シリウスの伝説」という映画はご存知でしょうか?公開年は1981年でサンリオ創設20周年の年。今から約40年前に公開された映画です!

シリウスの伝説(1981)


サンリオは、辻信太郎さん自身の戦争体験をきっかけに、戦争のない平和な世界への願いを込めて創られた会社です。
そんな愛や平和への哲学を持つ辻さんが制作した「シリウスの伝説」。
今年は終戦77年。今このタイミングで、皆さまにも共有したいと思い書いていきたいと思います!
途中本作のネタバレがあります。そちらご注意の上、ぜひ最後まで読んでくださると嬉しいです!


映画「シリウスの伝説」のあらすじ

シェイクスピアの傑作「ロミオとジュリエット」をモチーフにしたファンタジー&ラブストーリー。
ある世界に水の国と火の国がある。隣り合う2つの国は昔大きな争いをし対立していて、それぞれの国に掟があり決して交わることはない。
水の国の少年シリウスは、ある日火の国の少女マルタに出会う。2人は意気投合し恋に落ちる。だがその恋はそれぞれの国の掟に反するもので叶わない恋である。

左:火のマルタ/右:水のシリウス

太陽の光を浴びると死んでしまう水の子シリウス、水中に落ちてしまうと死んでしまう火の子マルタ。
2人の関係を知った住人たちは大騒ぎしあらぬ誤解も招いてしまう。
だがある時、彼らの叶わぬ恋を叶える逸話を耳にして…!

てな感じでなんともロマンチックです。
これだけ見ると恋愛映画かな?と思われそうですが、この作品は全てのものへの愛の哲学なるものをすごく感じる作品です。なので恋愛興味ない派の方もぜひです!
では冒頭触れた戦争や平和へのメッセージとはどんな部分にあるのでしょうか?
そちらも解説していきますね!

制作者であるサンリオの辻信太郎さんについて

1927年12月7日生まれ。御年94歳。山梨県出身。
冒頭で触れたとおり、戦争体験をきっかけに世界中の人がなかよしになれるソーシャルコミュニケーションギフト商品を企画・販売する会社「サンリオ」を創設。
サンリオの企業理念”スモールギフト・ビッグスマイル”は、辻さん自身が幼少期誰かへプレゼントをあげると仲良くなれる、という経験から来ている。
いちごの王様としてキャラクター化もしている。

いちごの王様🍓


サンリオファンなら購読してるであろう「いちご新聞」では、めくって1ページ目にいちごの王様からのメッセージが添えられている。
そして毎年8月号では、自身の戦争体験の話をするのが恒例となっている。

サンリオは約60年続く古き良き会社です。

そして今回ご紹介してる「シリウスの伝説」の企画・制作は辻さんです。
ロミオとジュリエットを水の国の少年、火の国の少女と置き換えて物語をつくる想像力というか創作センスは、なんだかクリエイターの印象も感じられます。
そして滅多にメディア出演しないにも関わらず、株主総会での発言や数少ないインタビューなどからネットで話題になる名言も多々。

何が言いたいかっていうと、そんじゃそこらの人じゃないってことです!
これだけ長年会社を続けていることももちろん、キャラクターライセンス事業への先見の明であったり、お人柄であったり…
そんな辻さんの「シリウスの伝説」、まだ見たことない方にはぜひ見て欲しいのです!



シリウスの伝説」ネタバレあり解説&感想

ここからはネタバレありです!!
気をつけて閲覧ください!




①オープニング

まず物語はおじいさん声のナレーションから始まります。
(この声の正体は最後にわかります)
かつては水と火がなかよく暮らす1つの世界で、それを羨んだ風の怪物アルゴは悪い噂を流す。それを間に受けてしまった水と火は悲しみ、やがて強い憎しみへと変わり、水は海へ、火は陸へと交わることのない別々の国になってしまった。

【感想&解説】
なんだかこの時点で人間の本質がわかる気がしませんか?
例えば小学校から付き合いのある親友がいたとして、その子に裏切られたとします。昔からずっとなかよくしていて強い友情があるからこそ、それはそれはショックだろうし…なんくそ!!と思いますよね。
また恋愛に置き換えるとなおわかりやすい。パートナーってたった1人だから、その人に裏切られたり振られたり…しんどすぎますよね?
そうなんです。この部分から感じれることって、強い愛情があるからこそ悲しみや憎しみへと変貌するということです。愛情の反対って悲しみや憎しみでもなければ、無関心というものなんですよね。


②水の国と火の国のそれぞれのルール

まず水の国の少年シリウスと子分であるチークが、2人でクラゲ狩りをしにいきます。クラゲを追いかけるが見失い、シリウスはチークを残し入ってはいけないとされている”タブーの水域”へと向かう。

左:シリウスの子分チーク


そこを抜けると海の水面まで辿り着いてしまい、初めて陸で生活している火の国の少女マルタを目にしてしまう。
ですがその時同時に炎の光を目にしてしまい、シリウスは衰弱してしまう。

一方で火の国の少女マルタは、陸の岬でかがり火を灯し続けるよう王女から命じられている。

マルタにもピアレという慕ってくれる友達がいて、ある時ふたりは岬で水面に映る炎の美しさに目を奪われる。
だがそれは水の国ではタブーであるため、水へと引き込む悪魔の仕業だと信じ込む。

シリウスは陸で初めて見た少女が気になり、今度は夜にタブーの水域まで行き陸へと向かう。
そこでシリウスと少女マルタは、次第に意気投合し恋に落ちてしまう。


【感想&解説】
それぞれの国に掟があることが分かりますよね!
水の国のタブーの水域がなぜタブーなのかというと、それは対立する火の国へと繋がる経路だから。
また、火の国で岬にかがり火(炎)を灯し続けるのは、水の国の者が近寄らぬようにするためですね。言ってみたら抑止力的なものかな?
私たちの現実世界で考えてみると、水の国のかがり火は核みたいなものかな?と、そんな風に変換して考えてもいいかもです。

そして火と水どちらの国にも共通して言えることは「どうしてそのルールがあるか?なぜ禁止なのか?」それが皆に伝わっていないことです。
漠然とルールやモラルがあるから守り、その背景を知らない。
それは私たちが住む現実社会でも起こっていてることなのではないでしょうか。

③2人が花園で戯れるロマンチックなシーン

シリウスとマルタは秘密の恋愛関係にお互い心躍らす。
だが火の国の少女マルタは、次期火の女王になることを命じられる。

火の女王になると今のように岬には行けず身動きがとれなくなる。
マルタが女王になるまでの猶予は短く、シリウスに会える期間は限られている。
そんな中、マルタは自分がいつも遊んでいる花園へとシリウスを招待する。
そこには火の国にしかいないマルタのしもべの大きい犬がいて、シリウスはびっくりして刃物を向ける。
ですがその犬とはすぐになかよくなり、2人は花園で素敵な時間を過ごす。

【感想&解説】
花園で戯れるシーン、なんともロマンチックで好きです!
ここでも人間の本質をついてるなって思うシーンがあって、それはシリウスがマスタのしもべの犬に刃物を向けるところです。
シリウスは水の国で生きてるから犬なんて見たことなかったんでしょう。最初は警戒してしまいますよね。
でも実際その犬は悪いことなんもしないのです。

人間は、知らないものに対して非常に警戒するし、威嚇して敵意をあらわしたりします。逆に言えば知ってるもの、慣れてるものってあまり怖くないですよね?
新学期クラス替えで趣味が合わないクラスメイトがいるとして、私と趣味合わないから仲良くなれないだろうな、きっと私のこと嫌いだろうな…なんて思うことありませんか?
でも実際話してみると案外仲良くなれちゃったり。
そんな細かい描写にも哲学的メッセージを感じます!

④2人の関係がシリウスの子分チークにバレる

シリウスの子分チークはタブーの水域を越え、仲睦まじそうにするシリウスとマルタを目撃してしまう。

同時に海は大荒れとなる。
海を心配したシリウスは、水の国の住人たちの無事を確認しにマルタを置いて帰る。すると、2人の関係を目撃した子分のチークに責め立てられる。
シリウスは長老であるカメのおじいさんに「なぜ水の国は火の国の子を嫌うのか?」と尋ねる。

一方で岬で待つマルタはシリウスの帰りを待つが一向に戻って来ず悲しむ。

【感想&解説】
ここで抑えておきたいのは、シリウスの子分チークが2人の関係をほんの一瞬見ただけで怒っていることだと思います。チークは2人の関係をよく知らないし、断片的な情報だけで判断してしまっています。

これを私たちの現実社会で置き換えると、芸能人のゴシップだったり、病気やハンディキャップのある人への偏見などが挙げられると思います。
背景を知らないものを断片的な情報だけで判断するのってよくないことですよね?
いろんなことを知ることが、平和につながるのではないでしょうか。

またシリウスは「なぜ水の国は火の国の子を嫌うのか?」と、水の国のルールを疑います。
私たちの社会にもルールやモラル、法律さまざまありますよね。
納得できないルールとかありませんか?
私たちも今一度、「どうしてそのルールがあるのか?」そんなふうに疑問を持ち、調べていくことも大事なんだろうと思いました!

⑤水と火が共存する星

水の国の長老であるカメのおじいさんがシリウスとマルタに「なぜ火と水は交わったらいけないか?」の真実を話してくれる。
2人の愛に感心したカメのおじいさんは、火と水がなかよく暮らせる星が存在することを話し始める。

それは9年一度、黒い太陽が現れる日食の日にメビウスの花が咲き、その胞子が向かう北の空を追いかけると辿り着けるという。そしてその日食の日がもうすぐ訪れると言う。

そしてそこで、マルタを慕うピアレは隠れてその話を聞いている。

マルタを慕うピアレ

一方で、カメのおじいさんが話し終わった後2人を目撃するのは、意地悪な水の国のウツボのマブセである。マブセはすぐさまシリウスの噂を水の国へ流す。

【解説&感想】
そんな建設的な話があったんならカメのおじいさん、早く教えてよ!なんて思っちゃいますよね笑
長く生きてるおじいさんしか知らない知識。それに連想するのは私はやっぱり戦争体験なのかな?と思います。
サンリオを創設した辻さんが、なぜ毎年いちご新聞8月号で戦争体験を記すのか。
なんだかこの物語を通して見えてきませんか?

また面白いのは、マルタを慕うピアレと、水の国のウツボのマブセが対比して描かれているところだと思います。
ピアレは隠れてカメのおじいさんの話を聞いて2人の関係の真実もしっかり目撃している。
一方でウツボのマブセは、2人が寄り添っているところを目撃したのみで、カメのおじいさんの話も聞いていない。
ここから読み取れるのって、やはり知ることで分かり合えるんだなということだと思うのです。
先程と内容が被りますが、断片的な情報だけで判断すると誤解が起きてしまう。
物事に対しても、人に対しても広い視野を持つことが大事なんだなとすごく感じます!

⑥2人に罰が下る

水のシリウスと火のマルタは関係がバレてしまい、互いの国で投獄される事になる。
マルタはことを知ったピアレに助けられ、
シリウスは堅い柵でどう足掻いても出ることができない。
シリウスは、子分のチークに時期王への証である大事な玉を授ける。
それを見せ牢獄から出してもらうよう王へ説得してくれと頼む。
その道中、チークはウツボのマブセに時期王への証である玉を奪われてしまうが、すぐに取り戻す。

【解説&感想】
ピアレがこっそりマルタを助けてくれるところがすごくいい!
シリウスも投獄され、命の次に大事であろう時期王への称号(玉)を差し出している。
自分の願いばかり押し通すわがままさがなく、ちゃんと譲るところは譲るよって言うふうに描かれています。それがすごくいいし、譲り合いって平和的解決の方法なんだろうなと感じました。
そして、悪い例のウツボは奪い取ったものはすぐ無くしてしまっていて、
これもやっぱり本質を突いてるなと感じます。
すぐに得た成果は脆い。
私も長いスパンで、自分の手で、いろいろやっていかないとなあ!
そんな教訓を得られました!

⑦結

ついに日食の日がきてしまう。
マルタは一人、火と水が共存する星へと案内するメビウスの花を見つけるがシリウスは来ず…
メビウスの花の胞子は早くしないと飛んでいってしまう。
シリウスがやっとの思いで到着すると、マルタは王女の姿になっていた。
日食は終わりを迎え、シリウスは日の光を浴びて瀕死状態に…
(この先どうなったかはぜひ作品をみてね!)


まとめ

最後にこんなナレーションがあります。
「愛するということは信じることだ。愛とは信じて疑わぬこと。」
これ本当に物語の締めに相応しい言葉で、なんならぽろっと泣きそうになりました。笑

水と火は、ウソの噂を流されたことでの対立する国になっています。
噂は真実ではないのに、お互いを信じぬけなかったから対立を招いたんですよね。
これって私たちの住む社会でも時折起こります。

例えば、恋人がちょっと悪い態度をとった。友達が自分の悪口を言ってると誰かに吹き込まれた。

私たちはそんなささいなことで人を判断してしまうし、疑心暗鬼になったりします。でもそこで必要なのはやっぱり”信じること”。
皆さんにも大切な人いますよね?
そんな大切な人のことをどうか信じぬいてあげてください。

そしてお互いを知ることを怠らないことも大事なんだと思います。
無知は時折人を傷つけることがあります。
お互いを理解し合い、譲り合う。
また自分と違った意見も認める合うことが大事なんだなあと思いました。

世界はいろんな人がいて、みんないろんな意見を持っています。
時にぶつかりあうけれど、自分の意見を持ち、相手の意見も理解し尊重することが大事だと思います。

情報過多な現代社会、いろんな話題がひっきりなしですよね?
今書いてる私のnoteもその一部です。
でも大事なことは案外足元にあって、「メガネをかけているのにメガネを探している」そんなことが現代多くあるかと思います。

「私はこれが好き!」
「そうなんだ!いいね。私はこれが好きだよ!」

そんなふうに争うことなく言える社会になればいいな。

サンリオが目指す、戦争のない世界はまだ訪れてはいません。
世界平和を願いつつ、自分の暮らす社会の平和も同時に目指していきましょう!
私も周りの人をたくさん愛したいと思います。そして自分ができることは何なのか?今一度考えて活動していきたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございます!

ももかろりーた

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