『電光超人グリッドマン』(でんこうちょうじんグリッドマン)

電光超人グリッドマン』(でんこうちょうじんグリッドマン)は、1993年4月3日から1994年1月8日まで、TBS系列(一部系列局を除く)他で、土曜17:30 - 18:00(JST、関東地区)に全39話が放送された、円谷プロダクション制作の特撮テレビ番組[1]

概要

円谷プロダクション創立30周年記念作品[2]。同社としては『ウルトラマン80』以来12年ぶりとなった本格特撮テレビシリーズである[3]。キャッチコピーは「君の熱い思いが、ヒーローを呼んだ。[4]

特徴

本作品を特徴づける要素として、藤堂武史が作った怪獣をカーンデジファーが実体化させ、パソコン通信でコンピュータや家庭電化製品に転送、暴れさせてプログラムを破壊し、その結果現実世界が混乱に陥るという、当時一般に存在すら知られていないインターネットコンピュータウイルスの台頭を先取りした設定が挙げられる[5][注釈 1]。戦いは全てコンピュータの中で起きているため、怪獣やグリッドマンの存在を知る人間は直人、一平、ゆか、そして武史の4人だけであり、一般市民には第25・26話で認知されるまで全く知られない。

ヒーローに変身する主人公が14歳の中学生という設定は特撮番組としては稀だが、それを支援する者、敵対する者も全て14歳の少年少女であり、ストーリー全体が若年層の視点で描かれている。直人たちと武史は同級生であり、互いに面識はあるものの、敵対する立場であることには終盤に至るまで全く気付かない。

ウルトラシリーズ」を始め円谷特撮作品では、巨大化ヒーローが姿を大きく変えることはなかったが、本作品ではヒーローをサポートするメカニックが変形し、鎧のような形となって合体するという新しい要素が盛り込まれた[5]。後に放送される平成ウルトラシリーズでは『ウルトラマンティガ』のタイプチェンジ以降「状況に応じて形態を変える」という設定が恒例となっており、実験的な要素がブラッシュアップされて取り込まれている。

技術面では、一部がデジタル化されたが、映像記録方式やビデオエフェクトは大部分でアナログ方式を採用した。まず、フィルム中心だった当時の特撮作品としては珍しいVTR方式で撮影されており[3]フィルムの重ね焼きに起因する映像合成の厳しい制約が無くなった[注釈 2]ことが革新的であった。VTR方式となったことでCCDカメラが使用可能となり、模型をくぐり抜けるというオープニング映像が可能となった[8]。サイバー空間を表現するため、ビデオ合成やモーションコントロールカメラなど、当時の先端技術が駆使されている[出典 1]が、着ぐるみやミニチュア模型を撮影する手法は変わらず、当時最新技術だったコンピュータグラフィックスの利用は一部に留まった。第13話まではフィルムを意識した色調であったが、第14話以降は明るめの色調に変更された[3]

本作品に参加したスタッフは監督やカメラマンなどを除きほとんど若手で構成されており、後の平成ウルトラシリーズのメインスタッフとなった人物が多い[10][11]。撮影を担当した大岡新一や制作進行の渋谷浩康は、本作品での経験が平成ウルトラシリーズなどで活かされたと述べており[12][11]、1作目の『ウルトラマンティガ』から本作品で確立したビデオ合成技術が駆使されている。

企画経緯

玩具メーカータカラ(現・タカラトミー)は『電脳警察サイバーコップ』(1988年東宝制作・日本テレビ系列)の特撮実写路線の第二弾の複数の異なる方向性の企画案の一案として1989年に巨大ヒーロー作品『サイバーマン』を企画していた[出典 2]。この企画は社内検討段階で終了したが、「『サイバーコップ』ではクリスマス時期の大型商品がなかった」という反省からサポートロボットの登場が予定され、また「ヒーローに2機のサポートメカが鎧となって合体する」というコンセプトもこの時点で出てきており[注釈 3]、これらの「超人合体コンセプト」が本作品の雛形になったとされる[出典 3]。コンピュータ・ワールドの設定も、『サイバーコップ』の電子的なイメージをさらに発展させたものであるが[13]、雰囲気を画面で誤魔化せるのとセットの使い回しができることが大きな理由であるとしており、バンダイと提携した作品のミニチュアの流用ができない事情もあったという[18]

その後、テレビアニメ『超電動ロボ 鉄人28号FX』を担当していたタカラの別の開発チームによる巨大ヒーロー作品『ビッグマン』として本作品の企画が1992年夏からスタートし[3][13]、『サイバーマン』の企画に参加していたレッドカンパニーの赤松和光が担当者として合流して『グリッドマン』の骨格が完成した[19]。そして、勇者シリーズとの差別化からセンサーとマイコン回路による「超電動」ギミックを搭載した鉄人28号FXの玩具「超電動ロボ鉄人28号FX」の第2弾として「超電動ビッグマン」が手掛けられた[14]。『ビッグマン』のタイトルは、サポートメカを出す都合から巨大ヒーローものとすることにこだわったことに由来し[13]、決定デザインや第1・2話のシナリオ段階まで使用されていた[17][3]。当初はNHKで放送される予定もあったというが、NHKが女の子を主人公としたファンタジー寄りのものを提示したため、流れてしまったという[19][18]

当初は『サイバーコップ』からの繋がりで東宝に制作を発注することも検討されたが、巨大ヒーロー作品に実績があることから円谷プロダクションが選ばれた[17]。そして、『サイバーマン』のメカとウェポンのコンセプトと『ビッグマン』を融合させ、円谷プロダクションと読売広告社が企画制作することとなったが、商標登録の関係で『グリッドマン』に名称が変更された[16]

円谷プロは創立30周年記念作品として、ウルトラシリーズの新作テレビシリーズを検討していたが実現には至らず、本作品が創立30周年記念作品と位置づけられた。当時円谷プロとTBSは、ウルトラマンフェスティバルなどで一定の関係は保っていたものの『ウルトラマン80』を巡る対立による経営陣との冷戦状態が続いていたが、制作に全面協力していた富士通の後押しにより放送枠取得が可能となった[20]

初期設定の変更・評価

タカラ側からサンダーグリッドマンとキンググリッドマンを並び立たせたいとの要望を受け、第17話から武史が変身する黒いグリッドマンカーンナイトが登場してグリッドマンのライバルとなり、第26話にて武史が改心して直人たちの味方となることで第2のヒーローグリッドナイトが誕生するというプロットが検討されたが、制作話数の都合から見送られた[21][22]。また、コンピュータ・ワールドの住人コンポイドはビデオ合成の手間が増えるため1回(第6話)限りの登場となるなど、技術的な制約により掘り下げることができずに終わった設定もある[注釈 4]。当初は現実世界に戦場を拡大することも考えられていたが、作品のホームドラマ的な雰囲気を壊すと判断され、中止となった[23][注釈 5]

玩具売上は好調であったが、制作予算などの都合から全39話で終了している[24][21]。視聴率は初回2.9%に対し、最終回9.5%を記録しており、大幅に躍進していた。本作品の終了後にはタカラ側で武史とグリッドナイトを主役とした次回作の構想もあったが[出典 4]、スポンサー・放送局ともに難色を示したために、この展開は見送られることとなった。この案はその後雑誌連載『電光超人グリッドマン 魔王の逆襲』へと発展継承された[21]

武史とナイトを主役としたストーリーとは別の続編企画として、円谷プロ側で本作品の2年後を舞台にした『電撃超人グリッドマンF(ファイター)』も平行して存在[出典 5]。一平以外の登場人物を一新し、5つの怪獣軍団を率いる魔界の帝王アレクシス・ケリヴが新条アカネという女子高生を傀儡にして侵略を開始、ツツジ台工業高校に進学した一平の同級生である響裕太という少年がグリッドマンと一体化して戦うというストーリーを予定していたが、こちらもお蔵入りとなった[23][22]。一部の名称や設定がテレビアニメ版の『SSSS.GRIDMAN』にオマージュとして取り入れられている[25][22]

あらすじ

翔直人馬場一平井上ゆかは、桜が丘中学校に通う中学2年生。両親がインテリア店を営む一平の家の地下に、3人だけの秘密基地を作っている。彼らは中古パーツを集めて組み上げたコンピュータジャンクを中心に、研究と開発の日々に明け暮れていた。藤堂武史も直人たちのクラスメートだが、陰気な性格で友達がおらず、両親も出張で家を空けているせいで、孤独なコンピュータオタクとなり自室にこもってばかりいた。

ある日の朝、直人の弟の大地が盲腸でゆかの家の病院に運び込まれた。それと同日、ゆかにラブレターを渡そうとして断られたと思い込んだ武史は、コンピュータを利用して復讐を企てる。

武史が憂さ晴らしにハッキング・プログラム「怪物ギラルスの拷問屋敷」で井上病院の医療用コンピュータに侵入し、いたずらを仕掛けていたその時、魔王カーンデジファーが武史のコンピュータ内に現れた。カーンデジファーはハイパーワールドと呼ばれる異世界から逃亡してきた次元犯罪者で、武史の憎悪の感情に呼応して怪獣を作らせ、機械の中の世界コンピュータ・ワールドに送り込むことで現実世界を破壊・征服しようとする。

カーンデジファーの手で実体化したギラルスが引き起こす異常現象に巻き込まれる直人たち。その時、一平がジャンクの中で描いていたCGグリッドマンに、カーンデジファーを追って地球にやってきたハイパーエージェントが乗り移り電光超人となった。直人はグリッドマンと合体し、世界を守ることを決意する。

こうして、グリッドマンとカーンデジファー、直人たちと武史の戦いが始まった。

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