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それはprofessionalの「型」~ある肩脱ぎウインク舌出し舞踊・元祖座長の想いと風景~

ネロネロと蛇みたいな色気出す座長が居るのです。
ウインクどころじゃない。
舞踊で着物の片方を脱いで肩出して舌出して手招きしてキメ!キメ!
最初に観たときは衝撃と同時に気持ち悪くなりました。
下町のめちゃくちゃ狭い劇場だったからだと思いますが毒気にあてられました。
しかし今これは旅芝居の舞踊のひとつの「型」みたいになっている!
うん、もう10年以上前からやっている正直若くはない彼のこの所作(?!)を
若い子を含む他の役者さんたちが真似してきたことでこれはもうひとつの「型」です。
彼を越えるほど似合う人は居ませんがね。

旅芝居は芸術だとか後世に残すべきなんちゃらだとか
わたしは歌舞伎の誰々が好きなのよとか
そういうお客さんには非常にウケが悪い!そりゃそうですよね。
「なんてことざましょ!」的な(笑)
けれど客席ではこれ系舞踊があらわれると
「きゃー!」「ギャー!」熱狂!!若い子からおばさままで「キャー!」
なんかね、もうこちらまでうるさくも楽しくなってしまうほど盛り上がる!ぎゃー!
私もどちらかというと好きではない!
だってなんか「そこまでせんでええがな」「大変やなあ」と謎の親心(笑)みたいになるから!
でも嫌いでもない。好きじゃないけど。
だってこんなに楽しそうな客席、と、その熱と気をうけて生き生きとした舞台上の役者の顔!
ばかだなあ。楽しそうだなあ。楽しいなあ。
生きるってくっだらなくもめっちゃ楽しいなあ、生きてるって嬉しいな素敵やな。
こういう光景を見るたびに私は本当に笑い泣きしてしまいます。
嬉しくて、楽しくて、しょうもなくて(これ逆説的誉め言葉)、Happyで。

そんな「元祖」ネロネロ肩脱ぎウインク舌出し色気舞踊座長の〝本音〟を訊いたことがあるんだ。
関わっていた専門誌の冒頭グラビア&取材の際に。
グラビアでも色気むんむんのお写真を下さった彼が。
色気舞踊の秘密と理由を。
「俺って、芝居が好きなんだよね。てか俺舞踊下手だからさ。
舞踊の基礎とかもないままここまで来ちゃったし。
でも来てくれたお客さんに楽しんでもらいたい。
・・・って考えたらあんな舞踊が出来た(笑)」
ああ、プロやなあ。なんかグッときてしまった。

ここ数年、また時折この座長を観に行くことがあります。
今は本当にもう若くない。けど若い子よりイケイケにねろねろしてる!
でね、舞踊のハケる(去る)際、ほぼ必ずガッと肩脱ぎをするんだよね。
気付きました。座員が少ないから。すぐに次の出番に出てこないといけないから。
すぐ脱いで次の着替えと準備をするためと同時にサービスしていることを。
なんて素敵にprofessional。いや、これはやはり生きることそのもの。
きゃー!とギャー!の歓声の中、笑い泣きしながら、泣き笑いします。

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