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旅芝居、叫ぶ客席のこと、あるいは愛(?!)について~「キャー!」「かっこいー!」「かわいー!」~

昨日の「舌出し座長」の話で思い出したこと。
旅芝居の客席には叫ぶ客というのが実在します。
ほんまに叫ぶんです。舞踊中に。キメのしぐさなどなどの際に。
「きゃーー!!!!!」「かっこいー!!!!」「かわいーーー!!!」
全員ではありません、一部ですよ。
「ハンチョ」と呼ばれる歌舞伎でいう大向うをかけるお客さんはたくさんいます。
「二代目っ!」「座長っ!」「ご両人っ!」とか。
でもこれを通り越してマジで黄色い声どころかピンキーな♡飛ばす声で叫ぶお客さんがおるねん。
ある劇団ではそんな客(マジで恋するおばさんでした)にお父さん座長がクレームを入れた。
「あんたね、もうちょっと稽古してからハンチョかけなさいよ」
おばさんはめっちゃ凹んでいた、そしてしばらく劇場に来なくなった。
お父さん座長が「いいや、あんたの気持ちもわかるからね、来んとさみしいしね」
おばさんはまた元気に大好きな若手の名前を叫び出した。
私は正直うるさいなと思っていたがなんだかグッと来た。
さらに某劇団では上手下手にそれぞれ応援団グループが座っていて。
お互いを意識し合うかのようにキャーキャーやっていた。
見事でしたよ。上手下手共にめっちゃ華やかなギャル応援団だったのですが
意識し合い睨み合いしながら声出しているのが目に見えてわかるの。
舞台上の座長はその両方に対して、「うんうん」「わかってるよ」って目配せ、
さらに彼女らに怒り心頭で睨みまくっている他のお客さんにも「うんうん」って目線を。
私はこりゃまたグッと来てしまった。うるせー!と思いながら笑い泣きをした。
さらにさらに。某劇団では一部「今日はあなたたちの貸し切り公演ですか?」というくらい
「かわいー!」「かっこいー!」「きゃー!」「やばい!死ぬ!」と騒いでいるグループが居た。
劇団付のファンに聞くと、もはや劇団名物(迷物?!)な熱いお客さんたちらしい。
ほんまにうるさかった。というよりビックリした。ここはアイドルのコンサートか、と思うほどだったから。
あ、せやせや、某劇団にはホストクラブ名物の掛け声みたいのんやるお客さんもいますよ。
(どうでもいいけどホストクラブのあのコールってほんま何かの文化というか芸として収集しどこかに残すべきやと私は思う。見世物小屋の口上とかみたいに。あれは文化(?)や)

いやはや、ほんとに、にぎやかですね。
そして、愛に溢れていますね。
「うるせー!!!」と思うのだけれど同時に私はなんだか涙ぐんで「ああ、ええな、素敵やな」って笑ってしまいます。
ああ、なんかホントにいいなあ。好きではないけれど。
だってさ、客席の皆、声に出すか出さないかの違いはあれど
好きな役者などが出てきたら心の中で「きゃー」ってなってる&言うてる訳やん。
どんだけ能書きたれようと冷静ぶってても、程度の違いこそあれ、「わぁー…」って「きゃー」って。
こんなこと書いてる私だって数少ないですが「ええな」と思った役者さんが
「これ!これぞ本当の〇〇」って思うような舞踊をしているのに出会うと「わー!」ってなるもの。あんまないけど(生意気)
だからね、眉を顰めたり否定しちゃうお客さん、どうぞ、笑って許してください。
そして盛り上がってる皆さん、愛はよくわかる、オッケーオッケー、でも、ちょっとだけは周りのお客さんの気持ちも考えたりもしてみてください。
でも、でもやっぱり、私的には、「ええなあ」って思います。嫌いじゃない。好きじゃないけど。愛。愛。

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