動画配信者を狙うスカウトマン

営業で成果を上げる男

 私が懇意にする友人に、歩合制の人材ビジネスで荒稼ぎをする男性がいます。

三十代後半の好青年であり、企業に縛られたくない彼は、これまで数々の営業をフリーで熟してきました。

 ガスや光回線、新型スマートフォンなど、とにかく単価の高い商品を売り込み、成果を上げてきたプロです。

現在は、アイドルを発掘するという人材ビジネスに注力して居ると言います。要はスカウトマンであり、内容に興味を惹かれた私は、早速と取材に赴きました。

 さて、皆さんがアイドルを発掘するなら、どのように立ち回りますか?

 こういうのは、事務所が公募を行い、そこに自然と人が集まるイメージです。

 しかし、影響力の小さい事務所に応募が集まる訳もなく……こうした場合には、やはり陰でスカウトマンが動いているようです。

(影響力の大きくても、街頭スカウトを行う事務所も有ります)

 さて実体は如何なのか、友人の着眼点に触れつつ、紐解いて行きましょう。

対談内容


ももえ:まず、貴方の職業を伺っても宜しいですか?

友人A:はい。人材ビジネスをしています。

ももえ:具体的には? 芸能スカウトで活躍していると聞いています。

友人A:主に女性アイドルの発掘ですね。知名度が有り、ちゃんと認可も受けた事務所による正式な仕事です。研修も受けました。

ももえ:アイドルスカウトと聞くと不穏なイメージを抱きやすいですが、A氏が所属する事務所は健全のようで安心しました。

友人A:名前を聞けば、殆どが知ってる事務所ですよ。ももえさんが気になったのは、僕のスカウト手法でしょう?

ももえ:はい。その前に、まずは一般的なスカウトマンの手法を良いですか?

友人A:いまでも街頭スカウトマンは多く存在します。けど、やっぱり現代ではネットが主流です。大体の人はツ〇ッター等のSNSを使い、DMを数打ちしてる印象です。

ももえ:A氏は違うのですか?

友人A:僕は、主に二種類の媒体でスカウトしています。まず一つは、個人運営してるサイトです。アイドル応援サイトです。こちらです(スマホで見せてくれている)

ももえ:「週末アイドル」「アイドルになりたい方」「アイドル 初心者」なるほど。アイドルに興味を持った一般の方を対象としたサイトですね。

記事数が多く、要点も分かり易く纏めてあり、とても読み易いです。サイトの可愛らしいデザインも、女の子ウケし易く感じます。

友人A:路上スカウトって、女の子からしたら物凄く怖いと思うんですよ。その断れない怖さを利用してガンガンに攻めるって悪質なマニュアルも有るくらいです。でも、僕はそういう手法は一切使いません。

興味のある子が自然に来てくれるように道を作るのが僕の仕事なんです。問い合わせにも注力しており、必要ならばLI〇Eの通話でやり取りも可能としています。

ももえ:感心です。

友人A:と、ここで終われば、模範的なスカウトマンとして締められたでしょう。

ももえ:もう一つ有りますよね。スカウトの手法について。

友人A:はい。サイトでの募集は最近から始まったことです。アクセスが増えるのに時間が掛かりましたからね。開設して一年くらいでしょうか……それまでは全く問い合わせも無くて、サイトを閉鎖しようと何度考えたことでしょうか。

ももえ:首を長くして根気よく記事を更新しないとアクセスが伸びないんですね。では、サイトのアクセスが無かった一年間は、どうしていたのですか?

友人A:それまでは、僕も他のスカウトマンと同じくDMを送っていましたね。けど、僕の場合は、ただ無作為にDMを送るのではなく、とある人種にターゲットを絞り込んで狙い撃ちしてました。

ももえ:その相手が配信者ですね?

友人A:はい。ユーチ〇ーバー、ツイキ〇ス、最近ではNA〇Aなど、俗に言う配信者に対してDMを送っていました。有名な配信者ではなく、一向に伸びない配信者を相手にです。

ももえ:狙いが良いですね。倫理は置いといて……

友人A:はい。大体の配信者は、アマチュア有名人に対する憧れで参入してると思ってます。そうした人達は、とにかく承認欲求が強いイメージです。

ももえ:有名になりたい。誰かに認められたいと言う気持ちが強い子なんですね。そこに、某事務所から声が掛かれば、確かに簡単に引っ掛かりそうです。

友人A:引っ掛かるって言い方は、ちょっと……厳しい事務所ですから、違法性とか全く有りませんよ?

配信者を狙ってのスカウトに、最初はかなり咎められましたけど……

ももえ:そうであって欲しいものです。スカウトの方法について、もっと具体的に聞いても宜しいでしょうか?

友人A:俗に呼ばれる「歌い手」「踊り手」として活動する人を各所で探します。殆どがツイ〇ターやイ〇スタとリンクしてるのでコンタクトを取るのは非常に簡単です。「コラボしませんか?」ってメアドを開示してる子も多いです。

あとは事務所の名前を借りて「ローカル活動しませんか?」と尋ねます。その気が無くても、殆どが興味を持って聞き返してはくれますね。でも、やっぱりアイドルとの一線が大きく、そのまま直行は少ないです。

ももえ:では、やはりオーディションを受けてくれる子が見つかるまで、ずっと配信者へとDMの数打ちになってしまいますか?

友人A:そうとも限りません。事務所では、現在ローカルアイドルの展開に力を入れています。ご当地アイドルや、地下アイドル等も含まれています。

しかし、それに留まらず、ネットアイドルにも手を伸ばしているんです。要は、在宅ワーク型の芸能活動です。握手会やライブを行わず、在宅で活動するアイドルであり、これなら歌い手や踊り手の延長線っぽいんで、抵抗感も少なく、参入したいと言う子がグッと増えます。

だから、ご当地アイドルのスカウトに失敗したら、ネットアイドルへとすかさず話を移しています。ネットアイドルからローカルアイドル……有名アイドルにステップアップも可能ですからね、とりあえず繋がりは持たせられますし、それが重要だと思っています。この手法を、我々はステップアップ・スカウティングと呼んでいます。

ももえ:そういえば、風俗嬢のスカウトでも、まずは難易度の低いオナクラから始めさせる……という話を聞いたことがありますね。

友人A:もしネットアイドルにも興味が無かった場合でも、とりあえず連絡先は交換しておきます。考える時間も必要でしょうし、なにより僕に対して不信感を抱いてる場合もありますからね。そういう時は、時間を掛けて信頼関係を築いていきます。

ももえ:仕事をしつつ、女の子の友達が増えそうですね。

友人A:本当にそれです。プロパンガスの営業より遥かに遣り甲斐がありますね。

ももえ:報酬形態を聞いても良いですか?

友人A:報酬の形は複数に分かれています。

・紹介した子が実際にアイドルになった場合に定額報酬

・そのアイドルが活躍した場合にボーナス報酬

また、アイドルに成らなくても、事務所に名義の登録をしてくれれば、それだけでも報酬が発生します。

ももえ:名義登録とは?

友人A:オーディションで落ちた場合やアイドル活動をしようか悩んでいる者に対して、事務所から「良かったら、事務所に登録しておく?」と勧誘が来ます。勿論、悪質じゃないです。登録は永久に無料です。

事務所に登録をしていれば、定期的に撮影やエキストラ等の依頼内容がメールで送られてくるようになります。女性は、その依頼を受けることも、気軽に断ることも出来ます。気分次第で活動したくなることも有るだろうし、登録だけでもしたいと言う女性は意外と多いです。

そして事務所への名義登録を、こちらでは「リスイン」と言うのですが、紹介した女性がリスインするだけでも報酬が発生するのです。まあ、単価は安いですけど……

配信者は「目立ちたいけど根は小心者」というタイプが多いと個人的に思っています。んで、そういうタイプは、リスインし易いとも思っています。

配信者を狙うスカウトは、今後増えると予想

 配信者に対するA氏の発言について、不快感を抱いた方も居ると思います。ここにて私からお詫び申し上げます。

 スカウトマンの求人は、ネットで無数に存在します。気軽に応募が出来るので、アイドルブームと相まり、スカウトマンの人口が年々に上昇していると聞きます。

ネットビジネス感覚で応募する方が多いのでしょう。

 しかし、A氏に依れば、完全歩合制のスカウトマンの殆どはインスタ〇ラムや、ツイ〇ター等で拙いDMを送るばかりであり、悉く断られてしまっては、或いは相手からの反応が無く、すぐに挫折して辞めていくようです。

 アイドルを夢見る者は多いけど、実際に手を出す女の子は少ない……

 という現状でしょう。

 その中で見つけたA氏の手法が、配信者を中心に狙い、ステップアップとして複数の紹介先を受け持つことにありました。

 心理学で言う所のドア・イン・ザ・フェイス・テクニックに相当します。

 そして同時に、集客を目的としたサイトの運営という手法です。サイトの質を高める為に、約一年を要したと言うのですから、やはり芸能スカウトにも根気が必要と分かりました。

 また、A氏は自身でアイドルグループをプロデュースしたいと述べています。

 その際には、やはり配信者を狙いにスカウトしていくとも発言していました。

 近年では「歌い手」や「実況者」というアマチュア配信から、続々とメジャー進出しています。いまでは、アマチュアの配信者から、紅白出場するパターンも珍しく在りません。

 いまでこそ周りから不評を買うA氏ですが、配信者を次々にプロデュースする狙いは、中々に的確だと捉える方も居ると言います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?