見出し画像

あなたの世界を生きたい:「デ・キリコ展」レポ

 ずーっと前から楽しみにしていた、「デ・キリコ展」。
 何せ私は、2年ほど前からデキリコのファンなのです。大原美術館で初めて《ヘクトールとアンドロマケーの別れ》を見てから、その独特な世界観に取り込まれ、デキリコ頻出モティーフを自分が絵を描く際にも取り入れるほど。
 しかしその割には、デキリコについて詳しいとは言えませんでした。特に、形而上絵画から離れた時期のデキリコについては、ほとんど何も知らず…。
 もっとデキリコについて詳しくなりたい!と思っていた私にとって、とても良いタイミングで展覧会が開かれました。これはもう、行くしかない!

デキリコ展の驚き①展示空間が!
 入場してまずいちばんに驚いたのが、その展示空間!
 壁一面が、あのデキリコ特有のなんとも言い難くくすんだオレンジ、青、白…。
 まるでデキリコ作品の世界観に入り込んでしまったようでした。デキリコファンなら誰でも、「ああ、この世界に行ってみたい」と思ったこと、あるのではないでしょうか。それを叶えることができます。幸せいっぱいな気分になりました。

デキリコ展の驚き②形而上絵画にも色々ある
 西洋美術概説書などでデキリコが紹介される際には、よく「形而上絵画というジャンルを作り、その後伝統的な絵画に関心が移った」とある気がします。それを読んだ私はなんとなく、「デキリコといえば、形而上絵画の時代か、伝統的絵画の時代か」くらいの認識でいたのですが…。
 今回、その形而上絵画の時代の中でも、時期によってモティーフや作品空間の構成に違いがあることを初めて知りました!
 今回の展覧会では、「形而上絵画」セクションの中でも、更に「イタリア広場」「形而上的室内」「マヌカン」の3つの項目に分かれて、作品が展示されていました。こうして分けられているのを見ると、確かにその違いがよく分かります。一口にデキリコの形而上絵画といっても、こんなに幅があるんだ…!
 ちなみに私は、前述の通り《ヘクトールとアンドロマケーの別れ》でデキリコにハマった身のため、やはり「マヌカン」の項目に最も親近感を覚えました。

デキリコ展の驚き③ 伝統的絵画もいいぞ
 私がこれまでほとんど知らなかった「伝統的絵画の時代」についても、沢山の作品が展示してあったため、少し詳しくなれました。
 何というか、絵が上手い…!現代芸術に対する揶揄で、「幼稚園児でも描ける絵」というのがあると思うのですが、(色々反論の切り口はあれど)その「幼稚園児が描けない絵」が「写実的、生物学的に正しい絵」を指すとして、デキリコの絵からは「現代芸術家の絵は幼稚園児でも描けるなんて言わせないぞ!」という矜持のようなものをひしひしと感じました。
 しかし、どんなに伝統的な絵画に立ちかえっても、どこか「デキリコっぽい」というか…。あの形而上絵画時代の不穏な感じが、他の絵画にも一貫して現れていて、やっぱりこの人は唯一無二だ…と感じた次第です。

デキリコ展の驚き④ その考えに惚れた
 デキリコ展のかなり序盤の方に出てきた言葉に、ハッとさせられました。

風変わりで色とりどりの
玩具でいっぱいの、
奇妙な巨大ミュージアムを生きるように、
世界を生きる

「パリ手稿1911-14」より

 このデキリコの言葉は今回初めて知りましたが、見た瞬間に「ああ、やっぱり私デキリコが好きだ」と思いました。
 私は、自分の中に確固たる考えを持っている人を好きになります。世界の見方、人間についての解釈、その考えの全てに共感はできなくとも、「考えている」というだけで、好きになってしまうタイプです。
 そんな私にとって、このデキリコの言葉はグッときました。なんて「世界」のことをよく考えている人だろう。なんて「世界」を愛している人だろう。
 その確固たる考えから生まれる作品の数々を、これからも愛していこうと決めた瞬間でした。

まとめ
 今回の展覧会を通じて、完全にデキリコの沼に落ちた気がします。最早、人生の師匠にしたいレベル。(デキリコは色々面倒くさい人だったという話も聞いていて、その辺り尊敬できるところだけ上手くかいつまんで生きていきたいですが…笑)
 そして、私も自分の中の確固たる考えを持ちたいと思いました。とはいえ、考えは何もないところからは生まれません。もっとインプットしなければ。まずは今回買ったデキリコの図録を読み込んで、それからデキリコが影響を受けたという、ニーチェについてももっと勉強してみようかな。
 これからも、もっとnoteでデキリコの話をしたいです。デキリコ、私もあなたの世界を生きたい!

図録とクリアファイルを買いました!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?