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第一章 暗示


「大丈夫、頑張れ。」
今日も4時起きで洗濯、掃除、朝食作りに追われる。3人の子供たちが起きる頃にはすべて終わらせて笑顔で「おはよう」と迎えるために。
6時を過ぎる頃からパラパラと起き出す。それぞれリビングでゴロゴロしたり早速文句を言ってきたり。7時過ぎには子供達は保育園へ、私と夫は仕事へ向かう。
 朝は夫が送る事になっているが起きるのは1番最後である事がほんとに謎。心配じゃないのかなー子供たちの準備間に合わなかったらどうしよ?とか思わないのかな。この5年間そんな事はきっと一度もなかった。なぜなら私が出勤前に完璧にしていくから。ここに安心を感じているのだ。
 長男はパンの焼け方に文句、次男はいつまでもだらだら何もしない。2歳前の長女はわざとコップをひっくり返し「はな」と言う。「はな」は次男が鼻水を拭いて欲しい時に私に言う言葉。長女は何かを綺麗に拭く時に使う言葉だと思っているのだ。そんな矢先夫が眠そうに起きてくる。食卓に付き何もせずのんびり。するとお味噌汁にごはん、焼き魚が出てくるのだ。いいなーと思いつつ私っていい妻!などと浮かれる。ちょっと虚しい。
 だらだらした朝ご飯が終わると次はお着替え、歯磨きと続いていく。これもお母さん指名である。服選びから仕上げ磨きまで全部だ。嬉しいし夫に勝ったという優越感はあるもののもう今日1日の元気がここでほぼ使われる。
「大丈夫、頑張れ」胸を叩きながらまぁまぁ大きな声で唱える。1日に何回もこの暗示を掛けて自分を自分で誇示するのだ。


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