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薬膳空想物語『七十二候の食卓』
春分
雷乃発声 ~かみなり、すなわちこえをはっす~ 十二皿目~
春の訪れとともに、春の雷は恵みの雨を呼ぶ兆しで、この時期に鳴る雷を「春雷」という。
雷というと夏のイメージだが、「春雷」は夏の雷と違って比較的ひかえ目で激しさは感じられない自然現象。
『春雷は不作』ということわざがあるが、これは「雹」(ひょう)が関係しているらしい。
主に寒冷前線が通過するときの春雷のことだと思われるが、
寒冷前線が通過するときは雷とともに雹が降ることがある。
雹は農作物を痛めてしまうなど大きな被害を与えてしまうため、農業にたずさわる人にとっては大敵でもある。
そんな春雷を調べていくと、こんな素敵な一句に辿りついた。
『春雷や暗き厨の桜鯛』 俳人:水原 秋櫻子(※1)
あくまでも私の勝手な句の解釈ではあるが想像してみる。
春雷が遠くで轟く黄昏時の暗き厨房。
きっと高級割烹であろう清潔で大きなまな板で、これから捌かれる桜鯛。
鯛はめでたい時に食すものだし、きっと祝いの席であろうか。
暗き厨房ということは雷で一時停電になり、これから捌かれるところの鯛がぽっかりと雷のかすかな光に照らされて横たわった感じも想像できる。
そんな桜鯛をどんな背景を纏った客人が食すのであろう。
春雷という季語もなんだかミステリアスに感じて、
ただならぬ雰囲気を感じずにはいられない。
『桜鯛の塩焼き』2~3人分
材料:桜鯛1尾 塩大さじ1 酒大さじ2 かぼす 1個
塩(尾ひれ化粧塩)小さじ2
作り方
・鯛はうろこを取り、えらと内臓を取り除く。お腹の中をキッチンペーパーでふく。
・ボウルに水を入れ、塩(分量外:大さじ1)を加えて鯛を洗う。水気をしっかりふき取る。
・水気を切りまな板にのせ、身にバツ印に切り込みを入れる。
・身とお腹の中に、塩、酒をふってすり込む。ぴったりとラップをし常温で15分おく。
オーブンは200℃で予熱する。
・ラップをとって軽く水気を拭き取り胸びれと尾びれに塩(化粧塩)をぬりつけ、
200℃に予熱したオーブンで20分、180℃に落としてさらに15分焼く。
ひれが焦げそうであれば途中でアルミホイルをかぶせる。
かぼすを切って添える。
鯛: 食味/甘 食性/微温 帰経/脾・胃・腎
かぼす: 食味/酸甘 食性/平 帰経/脾・胃・肺
●食味:酸味・苦味・甘味・辛味・鹹味([かんみ]塩からい味)を五つに
分けたもの(五味ともいう)
●食性:熱性・温性・平性・涼性・寒性と食物の性質を五つに分類したもの(五性ともいう)
●帰経:生薬や食材が身体のどの部分に影響があるかを示したもの。ここでいう五臓は「肝・心・脾・肺・腎」の事だが、単に臓器の働きにとどまらず精神的な要素も含まれ、ひとつひとつの意味は広義にわたる。
※1:水原秋桜子 みずはら-しゅうおうし
1892-1981 大正-昭和時代の俳人。
明治25年10月9日生まれ。高浜虚子(きょし)に師事。「ホトトギス」で山口誓子(せいし)らと4S時代をきずく。昭和6年主宰誌「馬酔木(あしび)」で虚子の写生観を批判,新興俳句運動の口火をきった。39年芸術院賞,41年芸術院会員。産婦人科医で,昭和医専の教授もつとめた。昭和56年7月17日死去。88歳。東京出身。東京帝大卒。本名は豊。句集に「葛飾(かつしか)」など。
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